取材協力:バイク王つくば絶版車館

 V-TWIN MAGNAの存在感は250ccという排気量を忘れさせ、メーカーカスタムとして高い完成度を誇った。信頼性の高いVT250系エンジンをロング&ローの車体に搭載し、その存在感は大排気量モデルにも負けない存在感を持っていた。

  文/後藤秀之 Webikeプラス  

スティードが巻き起こした第二次アメリカンバイクブーム

 後のハーレーブームにつながるアメリカンバイクブームに火をつけたのは、ホンダのスティードだろう。スティードの登場はレーサーレプリカ全盛の1988年であり、発売当時はあまり注目されることもなかったが、一定のニーズはあり生産は続けられていた。

 風向きが変わったのは1992年に「ハーレーダビッドソン&マルボロマン」という映画が公開されたことで、「イージーライダー」以来の第二次アメリカンバイクブームが巻き起こった。この映画の中で主役のハーレーを演じるミッキー・ロークが駆る無塗装のタンクに派手なグラフィックを組み合わせたカスタムハーレーは、それまでアメリカンタイプのバイクに興味を持っていなかったライダーたちの興味を惹いた。

 ファッション業界のアメカジブームとも連動し、ライダース+エンジニアブーツ+カスタムスティードが街に溢れた。この「スティードブーム」とも言える第二次アメリカンバイクブームによって、他メーカーからもVツインエンジンを搭載した400ccや250ccクラスのニューモデルが登場することになった。

 

 

     

メーカーメイドとは思えない、カスタムバイクとしての存在感

 そんなアメリカンバイクブーム最中の1993年、第30回東京モーターショーにホンダは1台のブランニューモデルを出品した。「V-TWIN MAGNA」と名付けられたそのバイクは、まるで最初からフルカスタムされたかのようなデザインを持つアメリカンスタイルモデルだった。

 この「MAGNA」という名称は1987年にV型4気筒エンジンを搭載して登場した「V45 MAGNA」でも使用されており、ホンダのアメリカンスタイルのバイクに使われるのは2度目のことであった。

 V-TWIN MAGNAのホイールベースは1620mmと大型バイクなみで、大きく寝かされたフロントフォークが生み出すロング&ローなその車体デザインは250ccクラスとは思えない迫力のあるもの。シルバーをメインカラーとし、単色でペイントされることでクールなイメージに仕立てられた。

 エンジンはVT250に由来する水冷DOHC4バルブ90度V型2気筒249ccエンジンで、シリンダーには空冷風のフィンが設けられたり、ケースカバーやエアクリーナーカバーなどエンジン各部にバフ仕上げやクロームメッキ処理が施されていた。スペックは最高出力27PS/10000rpm、最大トルク2.3kgm/7500rpmで、トルク特性は3500rpm付近の低回転域でトルクフルな設定としつつ、高回転域では低振動でリニアに伸びる2面性を持たせたチューニングとされている。

 ホイールは定番のスポークではなく、カスタムテイストの強いディスクデザインのキャストホイールを採用し、当時最新のハイテックカスタムの手法を取り入れている。ダブルショットガンマフラーと名付けられたたマフラーも、それまでのアメリカンバイクのステレオタイプなイメージを打ち壊すものだった。

 400ccのスティードに対して250ccのV-TWIN MAGNAは車検が無いため維持しやすく、カスタムもしやすいということもあって大ヒットする。何よりも、スティードやハーレーと並んでも見劣りしないその個性的なデザインが、多くのライダーの心を掴んだのである。

 

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クラスを超えた存在感は、今なお愛され続ける

 1996年、それまで試験場でしか取得できなかった大型バイクの免許が教習所でも取得できるようになる。これによって巻き起こるのが大型バイクブームであり、ハーレーはその中でも大きく売り上げを伸ばした。アメリカンブームはやがてハーレーブームへと発展し、スティードやV-TWIN MAGNAは「国産アメリカン」というハーレーとは別ジャンル的な扱いを受けることになった。

 スティードは2001年に排出ガス規制によってそのモデルライフを終え、後継のシャドウシリーズへとバトンを渡している。数多く販売されたスティードだが、車検を取るのが難しいほどカスタムされた車両も多く次第にその姿は街から姿を消した。しかし、V-TWIN MAGNAはV-TWIN MAGNA Sをラインナップに加え、若干のマイナーチェンジを受けたのみで2007年まで生産が続けられた。V-TWIN MAGNAの250ccという排気量を超越したその存在感やデザインの上手さは、国産アメリカンという枠を超えたスタイリッシュなメーカーメイドカスタムとして今も愛される存在である。

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V-TWIN MAGNA主要諸元(2005)

・全長×全幅×全高:2315×880×1065mm

・ホイールベース:1620mm

・シート高:690mm

・車両重量:184kg

・エジンン:水冷4ストロークDOHC4バルブV型2気筒249cc

・最高出力:20kW(27PS)/10000rpm

・最大トルク:23N・m(2.3kgm)/7500rpm

・燃料タンク容量:11L

・変速機:5段リターン

・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム

・タイヤ:F=120/80-17、R=150/80-15

・価格:57万7500円(税込当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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住所:茨城県つくばみらい市小絹120
電話:0297-21-8190
営業時間:10:00〜19:00
定休日:木曜日

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/401635/

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