オートバイの横にもう一人乗れるキャビン(側車)をくっつけたサイドカー。ときおり路上で見かけるが、窮屈ながらもどこか楽しそうだ。ところがあのサイドカー、免許から運転まで、いろいろクセ強なことをご存知だろうか!?

文:ベストカーWeb編集部/写真:Adobestock(トビラ写真=FotoAndalucia@Adobestock)

■原付一種のサイドカーは側車に人が乗せられない!

サイドカーをドライブしている人はたいてい楽しそうだが……(Katja@Adobestock)

 オートバイの横に側車を付けた一般的なサイドカー(側車を外しても走行できるもの)を、法的には「側車付二輪自動車」と呼ぶ。サイドカーは複雑で、形状によってはこの規定が当てはまらないタイプもあるのだが、ひとまずここでは「オートバイの横に側車の付いたタイプ」のみを扱う。

 まずサイドカーを運転するための免許だが、基本的には普通二輪免許でOK。ただし原動機付自転車となると、話がちとややこしくなる。

 まず50cc以下(または定格出力0.6kW以下)の原付一種。この場合は原付免許で運転できる。ただ同免許は1名乗車が決まりなので、サイドカー部分に人が乗せられない! つまり事実上サイドカーとしての用をなさないことになる(笑)。

 いっぽう50~125ccの原付二種はどうか。「原付二種免許で乗れるだろ」と思うのだが、実は原付二種に側車を付けると、車両の扱いが「側車付二輪自動車」となる。その結果原付二種免許では乗れず、小型限定あるいはAT小型限定以上の二輪免許が必要となるのだ(ナンバープレートも変わる)。

 となると面白いことも起きる。普通、原付二種は高速道路を走ることができないが、原付二種のサイドカーは高速道路や自動車専用道路を走行可能となる。とはいえ側車も引っ張る原付二種は非力すぎて、最低速度違反などに問われる恐れもあるから、基本的にはやらないほうがいいだろう。

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■まっすぐ走ることすら難しい!?

海外ではサイドカーを使った競技も盛ん(KopoPhoto@Adobestock)

 続いてサイドカーの運転だが、「バイクが運転できりゃOKでしょ」と思うと泣きを見る。側車があると車体を倒し込むことができないため、いろいろ勝手が違うのだ。

 そもそもまっすぐ走ることさえコツがいる。アクセルを開けると側車のタイヤを軸にして回転運動が生じるから、車体全体が右(側車がオートバイの右側に付いているものとして)へ曲がってしまうのだ(アクセルを戻すと今度は逆の動きが生じる!)。

 メカニズム的にもバイクとは異なる装備がある。まずはタイヤ。前述したとおりサイドカーは車体が倒せないので、断面が丸いオートバイ用のタイヤは適さない。そこでサイドカーには、クルマ用のようなトレッド面がフラットなタイヤが市販されている。

 前輪のサスペンションとなるフロントフォークも大変だ。オートバイのフロントフォークには、基本的に横方向の力がかからない。ところがサイドカーには横方向の力が生じるため、フロントフォークの伸び縮みを邪魔するばかりが、危険ですらある。

 そこでサイドカーでは、アールズフォークと呼ばれる補助的なサスペンションリンクを後付けすることが多い。古いBMWのバイクなどは、アールズフォークが標準だった時代もあるほどだ。

 というわけで、サイドカーの奥深い世界の一端がお分かりいただけただろうか。今度路上でサイドカーを見かけたら、水面下で必至に水を搔いている優雅な白鳥を想像してほしい!

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