ソニーがEV開発に乗り出したと思ったら、今度はシャープがEV事業に進出すると発表した。とはいえこの動きはシャープの今を知ってる人なら予想できたことでもある。ええ? いったいなんで!? 

文:ベストカーWeb編集部/写真:シャープ、FOXCONN、ベストカーWeb編集部

■親会社の鴻海がEV生産の黒子だった!

2023年のジャパン・モビリティショーに出展されたMIHの「ミッションX」。鴻海はEV生産の黒子でもある

 かつては液晶パネルや太陽電池の大手企業として一世を風靡したシャープ。しかし韓国や台湾企業の台頭によってこうした製品に価格崩壊が起きると苦境に陥り、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った。

 実はその鴻海こそが、今回のEV生産の鍵を握っている。鴻海といえばiPhoneの受託生産を連想される人が多いかもしれないが、実は数年前からEV生産の「黒子」としても強力な存在なのだ。

 その黒子が「MIH(モビリティ・イン・ハーモニー)」と呼ばれるオープンソースEVプラットフォーム。いわばアンドロイドスマホにおけるOSビジネスを、EVで実現するためのシステムだ。

 MIHはEV開発に欠かせない車台やeアクスル、運転支援システムなどをとりそろえ、「EVが作りたい」という企業にライセンスするビジネスだ。供与を受けた企業は圧倒的に短期間で、しかも安くEVが作れる。生産も鴻海任せだから生産設備すら必要ない。

 実際にこのシステムで台湾の裕隆(ユーロン)汽車は大型のEVバスを作り、すでに高雄市などを走り回っている。

「そんなのどこの企業でもできるだろ」と思わないでほしい。MIHがすごいのは、世界3000社近い企業が加わるオープンソースプラットフォームだということ。鴻海だけの思惑に捕らわれず改編ができるので、絶え間ない進化・改良が可能なのだ。

 もちろん日本企業も参画している。デンソーやジェイテクトはもちろん、ニデックやティアフォーといった有力企業が参画している。そしてその中に、当然シャープもいるのだ。

■液晶シャッターで窓が暗くできる

シャープのLDK+の車内。仕事場やリビングとして活用できる

 2024年9月17-18日に東京国際フォーラムで開かれる「SHARP Tech-Day’24」において、シャープはEVコンセプトカー「LDK+」を発表するという。開発にあたっては鴻海科技集団(フォックスコン)のほか、EVの企画・開発を手がける京都のベンチャー「フォロフライ」も協力しているようだ。

 LDK+は一見ボクシーなミニバンだが、その室内を多人数乗車ではなく、パーソナルオフィスやリビングルームとして使う点がミソ。つまり走っている時ではなく、止まっているときにフォーカスしているのだ。

 クルマを駐めて後席を回転させると、ウインドウの液晶シャッターが閉じてプライベート空間が作れる。車両最後部には65インチの大型ディスプレイが備わるほか、シャープ独自のAI技術やセンサー技術によって照明や空調を物理操作なしで最適化することもできる。

 EVならではの機能も見逃せない。V2H機能によって自宅とクルマで電力の融通ができるほか、通信機能も備えているから、あたかも自宅の「隣の部屋」として使えるという。

 LDK+の実物を見るのが楽しみだが、シャープに限らずEVビジネスへは新規参入が続きそう。今後も思いもよらぬ企業が「EV作ります」と名乗りを上げそうだ。

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