2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介する。日々のアシとしてのクラウン、期間工で働いてみようと思うという読者へ、小さなボディはやはりすこし怖い、という読者へ── クルマ、読者への真摯な姿勢が覗く5本。(本稿は『ベストカー』2013年7月26日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)。

■気分のいい梅雨の晴れ間

クラウンアスリート…徳さんのおすすめはV6、2.5L。マルチシリンダーならではの、高級感のある走りはハイブリッドにないもの。357万円からとハイブリッドよりも50万円以上安いのも魅力だ

 美しい季節である。今年は梅雨なのに雨が少ない。イギリスだったらさしずめ“美しい6月”とでもいうだろう。

 もちろんイギリスならずとも美しいのである。我が家のある世田谷も美しく輝いている。

 さて新しいクラウンはどうだろう。街中でも見かけるようになってきた。国産車のなかでは最も気になる1台で、あと1年くらいたったら実車のほうも手に入れようと思っている。ミニチュアカーならピンクとバーガンディの2色が我が書斎のデスクに置いてある。

 先日ジャグアのXFに乗った。いいクルマであることはいうまでもないが、こと日本の東京という点を考えるとクラウンのほうが何かといいだろうと思う。

 手に入れるとすれば久しぶりの日本車になるが、ロイヤルよりもアスリートがいいと思っている。アスリートのV6、2.5Lが第一の選択だ。4発のハイブリッドという手もあるが、やはりクラウンはマルチシリンダーだと思うからだ。

 ただ、ハイブリッドも試乗し、V6の2.5Lとよほど燃費が違うようならば、心が動かないともかぎらない。クラウンは都内のアシとなるだろうから実用燃費はとにかく重要なのだ。

 毎日のアシとして使っているゴルフVIは高速走行が得意なので都内の燃費は思ったほどではない。クラウンのハイブリットはゴルフVIよりもいいだろうが、V6、2.5Lはそれほどでもないだろう。

 現在の私の走行は1カ月2500kmくらい。レギュラー仕様で10km/L以上走ってくれればいい。それが条件だ。クラウンはV6、2.5Lもハイブリッドもどちらもレギュラー仕様だ。

 現在私のアシであるゴルフVIはカブリオレなので少しリアシートが狭いが、ボディはとてもしっかりしていてまったくサルーンと変わりない。初夏は女房と一緒にオープンエアを楽しんでいる。

 元々、カブリオレのようなコンヴァーチブルボディはなく、あのアメリカ車のうち最も高価なボディがコンヴァーチブルだった。オープンとクローズドの両方を楽しめるのだから、欲張りなクルマだ。

 話はジャグアに戻る。先月、ジャグアのニューモデルであるFタイプが日本で発表になった。950万円からと決して安くはないが、精一杯のプライスだったと思う。ジャグア久々の2シータークーぺだが、これから試乗の機会もあるだろう。

 Cタイプ、Dタイプ、Eタイプとジャグァの2シーターはヒストリックな名車ばかりだが、その伝統が受け継がれているか? 気になるところだ。エンジンは2タイプでV6、3LとV8、5L、どちらもスーパーチャージャーが組み合わされていて、とてつもなく速いだろうが、スピードオーバーで痛い目に遭うことを思うと、それは剣呑である。

 クルマに何か特別な刺徴を求めないというならクラウンはすばらしいクルマだ。かくいう私も1年のうち300日ほど東京で行動するほうなので、クラウンのようなクルマが合っているのだ。

 もしも積極的にクルマをドライビングしたいというならばイギリスのクルマ、例えばロータスとかを選ぶだろう。とにかくこいつはピュアで、ひたむきにシンプルだ。

 いやもう1台あった。ディノ246があった。ディノ246のステアリングフィール、ドライビングポジション、スタイリング…そのすべてが気に入っている。

 しかし、今の私にはディノは荷が重すぎる。クラウン1台で退屈だというならば、古いMG、なかでも欲をいうならば、ローバー3500のV8エンジンを搭載したMGB GTあたりならば、文句はない。しかし、1973年に誕生したクルマだからコンディションのいいクルマは極端に少ない。

 そんなことを考えていると、また私のお気に入りである蒲田の日英自動車に行ってみたくなった。何か出物はあるかしら。今度の梅雨の晴れ間に行ってみよう。

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■マセラティが気になる

上海モーターショーで公開されたマセラティの3代目ギブリ。初代・2代目が2ドアのラグジュアリークーペだったのに対しこちらは完全な4ドアセダン。V6、3Lガソリンターボのほかマセラティ初のV6、3Lディーゼルターボも選べる

(ビトルボ、シャマル、カリフと3台乗り継いだというマセラティ好きの読者の方からの、「ギブリ」が復活しますね、手頃なグレードを手に入れ、久しぶりにクールで熱い走りを楽しみたい、というお便りに応えて)

*     *     *

 マゼラーティ、いいクルマですね。ここは元々レーシングメーカーで、レース好きのお金持ちを相手にしていたメーカーです。フェラーリもアルファロメオもそうですね。ただし、マゼラーティはより大きなメーカーと比べると、技術的には少々もの足りないでしょう。

 マゼラーティは風の名前が多いのですが、ギブリとはリビアから吹く熱風という意味です。オリジナルのデザインはジウジアーロのものでウェッジシェイプの効いたボディデザインとリトラクタブルライトが特徴でした。

 私もマゼラーティに乗っていたことがあります。4年ほど乗ったミストラルは南フランスの季節風という意味で、ロングノーズ&ショートデッキのスポーツカーでなかなか楽しかったですよ。ただし、ボディが弱く、これ1台では使い切れないと思いました。

マセラティ ミストラル…カロッツェリア、ピエトロ・フルアがデザインした2シーターのスポーツカー。1963年のトリノショーでデビューし1970年まで作られた。徳さんはストレート6の4Lを所有していた

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■期間工で働くこと

(30歳になったという、これまで正社員で働いたことがないという読者の方からの、自動車メーカーの3カ月の期間工として働いてみようと思っているが、きつくて勤まらないという声もある、アドバイスをいただけたら、という声に答えて)

*     *     *

 ぜひおやりなさい。毎日自動車工場で働くことはいいと思いますよ。確かに若い頃は何をやってもいいのですが、年を取ると定職がないというのは辛いものです。だから、とにかく新しい仕事につき、新しい目的をもって働くことはいいことだと思います。

 3ヵ月の間に何をやりたいか? を自問自答することです。もちろん3ヵ月で答えは見つからないかもしれません。それでもずっと考えてください。もちろん、やりたいことを仕事にできるわけではないでしょう。2~3年辛抱すれば、信用が生まれ、人との付き合いから世界が広がっていくものです。

 今回はその第一歩と思い、踏み出してみてください。またお便り下さい。

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■ホンダF1に期待すること

(F1に復帰するホンダについて、新しいホンダのF1チームにどんな期待をされていますか、という読者の方からの質問に答えて。「佐藤琢磨を復帰させてみるのはどうでしょうか」なんていう提案も)

*     *     *

 ホンダは勝つ気でしょうから、最初は日本人ドライバーを使わないでしょう。何台エントリーするかですが、スペアカーを入れると3台というところでしょう。そこに佐藤君が入れますかね。

 ただホンダがF1をやれば間違いなく人気が上がるでしょう。何戦か重ね、佐藤君がテストでもして調子がよければ使うかもしれませんね。

 いずれにしても、来年からレギュレーションが変わって、どのくらい実際のレースが変わるのか? そこがポイントでしょう

 ホンダはターボが得意でしたし、ハイブリッドによって電気エネルギーのマネージメントも学んでいるので、いい準備ができれば最初の年から勝利を挙げる可能性もあると思います。

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■軽自動車は危険なのか

軽自動車の衝突安全性…自動車事故対策機構が行なっている自動車アセスメントの評価でも、サイズ的に不利でありながら、軽自動車は普通車に比べて著しく劣ることはない。各社の高いノウハウが窺える

(歳を取り、ディーラーや奥様からも軽自動車への乗り換えをお勧めされている読者の方からの、しかしボディの小さなクルマは正直怖い、大丈夫なのでしょうか、というお便りに)

*     *     *

 日本の軽自動車の技術はすごいものです。軽自動車の技術を使えば、普通車も大いなる発展が考えられるでしょう。

 その技術力ですが、クルマの衝突安全にも大いに関係があると思っています。確かに軽自動車に限らず、小型車は壊れ方が大きいのですが、上手に壊れ、室内の空間を守ることで、ドライバーをはじめ乗員を守ってくれていることにもなるのです。

 安全というものはそういう考え方で成り立っていくものです。壊れるからいけないというものではありません。

 もちろん、大型トラックが猛スピードで当たってくればどうにもなりませんが、軽自動車だから危ないということはありません。逆に軽自動車を選びゆっくり走ることで、安全につながるかもしれません。

■徳大寺有恒の「俺と疾れ!」リバイバル特集

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