この秋、N-BOXジョイ、スペーシアギアと立て続けに背の高いスーパーハイトワゴンベースのクロスオーバーSUVの軽自動車が登場した。そこで、軽クロスオーバーSUVのジャンルで以前から人気のデリカミニとN-BOXジョイ、スペーシアギアを重箱の隅を突く感じで徹底比較!

文:渡辺陽一郎、写真:ベストカーWeb編集部

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■デリカミニ対N-BOXジョイ

絶好調のデリカミニ

 デリカミニの外観は大きく異なる。デリカミニは半円形のヘッドランプを装着して存在感を強めたが、N-BOXジョイはシンプルでN-BOXの標準ボディに近い。

 デリカミニはフェンダーのホイールが収まる部分をSUVらしくブラックで縁取ったが、N-BOXジョイはほかの部分と同じ色彩だ。デリカミニはアウトドアが似合って、N-BOXジョイは都会的に感じられる。

軽SUVならではの高いアイポイントと広い視界、抜群の見晴らしで運転しやすいデリカミニのコクピット。ナビは9インチ

 デリカミニ、N-BOXジョイともに全長と全幅は同じで、全高も1800mm前後に達するが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は異なる。N-BOXジョイは2520mmで、スーパーハイトワゴンでは最も長く、デリカミニは2495mmと少し短い。

 内装ではインパネの周辺を見ると、デリカミニは大きなエアコンのスイッチに特徴があり、N-BOXジョイは比較的大きなトレイを採用した。

N-BOXジョイのコクピット。内装は明るいブラウンとブラックのコンビネーション

 前席の座り心地は、N-BOXジョイが少し硬めながら骨盤をしっかりと支える。デリカミニの腰の支え方は、N-BOXジョイを少し下まわるが、柔軟で座り心地は馴染みやすい。またN-BOXのシート生地は、前後席ともにチェック柄で個性的だ。

 後席は、N-BOXジョイがスーパーハイトワゴンの中で最も広い。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、デリカミニは握りコブシ3つ分だがN-BOXジョイは4つ分に達する。エンジンを補機類の配置も含めて縦長に設計して、ホイールベースも長く伸ばすことで後席の足元空間を広げた。

9月19日に発表されたN-BOXジョイ

 後席の座り心地は、両車ともに不満を感じる。前後方向の座面長(乗員の体と座面の接する部分)が短く、大腿部付近に違和感が生じる。座り心地はN-BOXジョイが柔軟で快適だ。

 乗降性は両車ともスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンとあって良好だが、後席の開口幅は、デリカミニが650mmとワイドだ。N-BOXジョイは640mmだから若干狭い。

身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ3つ分のデリカミニ

 荷室の使い勝手とシートアレンジは、両車ともに左右分割式の前後スライド機能を装着する。後席の背もたれを前側に倒すと座面も下がり、大容量の荷室に変更できる。

 この機能を備えたうえで、デリカミニは荷室をブラックの樹脂としており、汚れを落としやすい。アウトドアで使った自転車などを積んだ後の清掃もしやすい。

身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、デリカミニは握りコブシ3つ分だがN-BOXジョイは4つ分。スーパーハイトワゴンのクロスオーバーSUVのなかで一番広い

 デリカミニの荷室が荷物の積載を目的とするのに対して、N-BOXジョイは、リラックスした時間を過ごす小部屋として開発された。荷室にもシートと同様のチェック柄が使われ、成形同時接着とすることで、自転車を積んだりした時の耐久性も高い。

デリカミニのラゲッジスペース。後席を倒しフラットにした状態

 そしてN-BOXジョイの荷室は、標準ボディやカスタムと異なり、後席の背面にプレートを埋め込んで格納して床に座った時の柔軟性や快適性も向上させた。N-BOXの標準ボディやカスタムに比べると、荷室の後方を80mm持ち上げて、荷室の床も平らに近付けた。

 荷物を積む機能を優先するなら、荷室の床は低い方が使いやすいが、N-BOXジョイは小部屋として利用する。そこで床を平らに近付けた。デリカミニとN-BOXジョイでは、荷室の想定している用途と造り込みが大きく異なる。

荷室のシート表皮はシート生地と同じ素材(日本初の成形同時接着)。荷室の広さはN-BOXと同じく軽自動車の最大級で、27インチの自転車も積むことが可能

 なおN-BOXジョイの荷室床面は、標準ボディとカスタムに比べると80mm高いが、それでも560mmに収まる。もともとN-BOXは、燃料タンクを前席の下に搭載して、荷室の床を低く抑えているからだ。一方、デリカミニの荷室床面地上高は、2WDが590mmで4WDは620mmだ。N-BOXジョイは、依然として荷室の床が低く、荷物の積み降ろしもしやすい。

 走行性能は、N-BOXジョイについては、ベース車のN-BOXと共通だ。デリカミニに比べて設計が新しく、ステアリング操作に対する車両の反応も正確に仕上げた。走行性能はN-BOXジョイが優れている。

 乗り心地も基本的にはN-BOXジョイが快適だが、デリカミニの4WDは、2WDとはサスペンションの設定が異なる。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)を高めて悪路走破力も優れ、2WDに比べて乗り心地も柔軟だ。デリカミニの4WDについては、N-BOXジョイよりも快適に感じる。

 価格はN-BOXジョイの2WDは184万4700円で、デリカミニGの2WDは183万7000円だ。機能や装備と価格のバランスでは、N-BOXジョイが少し割安になる。チェック柄の内装、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールなどで差を付けた。

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■デリカミニ対スペーシアギア

9月20日に発表されたスペーシアギア

 スペーシアギアは、デリカミニと同様、外観をSUV風に仕上げた。ルーフレールも装着され、デリカミニとの共通点が多い。

 スペーシアギアのインパネは、デザインが立体的だ。特に注目されるのは助手席の前側で、コンビニ弁当を置ける大型トレイを装着した。その下にボックスティッシュが収まる引き出しとカップホルダーが備わり、最下段にはグローブボックスも装着される。助手席の下にも車外に持ち出せる大型の収納ボックスがあり、収納設備はデリカミニやN-BOXジョイよりも豊富だ。

コンテナをイメージしたダッシュボードが特徴のスペーシアギア。ダークグリーンのパネルやオレンジのワンポイントが入る

 前席の座り心地は、デリカミニとほぼ同じ水準になる。後席はスペーシアギアでは、座面の前端にマルチユースフラップを装着した。引き出すとミニバンのオットマンのようにふくらはぎを支えて、反転させると座面の上に置いた荷物が床へ落ちにくい。座面の長さはデリカミニやN-BOXジョイよりも長く、膝の裏側までサポートする。

スペーシアギアの後席。身長170cmの大人4名が乗車した時の膝先空間は、握りコブシ3つ分でデリカミニと同等

 ただしスペーシアギアの後席は、マルチユースフラップを装着したことで、少しデコボコしている。座面はデリカミニやN-BOXジョイよりも長いが、座り心地が快適とはいい難い。購入時には後席の座り心地を確認したい。身長170cmの大人4名が乗車した時の膝先空間は、握りコブシ3つ分だから、デリカミニと同等だ。

スペーシアの後席は座面に置いた荷物の落下を予防、走行中の安定した姿勢をサポート、休憩時に足を伸ばしてリラックスできるオットマンと3つのモードを使えるマルチユースフラップを備える

 乗降性はデリカミニが優れる。後席に装着されたスライドドアの開口幅は、デリカミニは前述の650mmだが、スペーシアギアは600mmに留まるからだ。

 荷室のアレンジは、後席を前側に倒すと座面も連動して下がり、自転車も積める広い空間になる。広さも含めて、デリカミニとスペーシアギアの荷室は似ている。

スペーシアギアのラゲッジルーム。後席を前側に倒すと座面も連動して下がり、自転車も積める広い空間

 動力性能をノーマルエンジン車で比べた場合、デリカミニは実用回転域の駆動力が高い。スペーシアギアは高回転指向で、もう少し2500~4000回転付近の駆動力を高めて欲しい。デリカミニにも当てはまることだが、販売店の試乗車で登り坂を走り、パワー不足を感じた時にはターボを積極的に検討したい。

 乗り心地はデリカミニが全般的に快適だ。スペーシアギアは少し硬さを感じる。街中の舗装が荒れた場所を時速40km以下で走り、突き上げ感が生じないか確認したい。

 WLTCモード燃費をノーマルエンジン車の2WD同士で比べると、デリカミニは20.9km/Lで、スペーシアギアは23.9km/Lだ。スペーシアギアはデリカミニに比べて車両重量が70kgほど軽く、全車にマイルドハイブリッドシステムを搭載するため、燃費性能も優れている。

 ノーマルエンジンを搭載する2WD同士で価格を比べると、デリカミニGの2WDは183万7000円で、スペーシアギアハイブリッドXZは195万2500円だ。

 価格はスペーシアギアが高いが、マイルドハイブリッド、車間距離を自動調節できるクルーズコントロール、アルミホイール、右側スライドドアの電動機能、電動パーキングブレーキ、後席のマルチユースフラップなどを標準装着する。

 デリカミニも価格が201万8500円のGプレミアムになると装備が充実するが、機能や装備と価格のバランスではスペーシアギアが買い得だ。

■それぞれのクルマにピッタリなユーザーは?

デリカミニ、N-BOXジョイ、スペーシアギア、それぞれどんなユーザーにピッタリなのか?

 なお3車に適した推奨ユーザーはそれぞれ異なる。デリカミニは悪路走破力を含めたSUVの機能を重視するユーザーに適する。その意味でベストグレードは、価格が227万1500円に達するものの、ターボを装着したTプレミアム4WDだ。最低地上高に余裕があるから悪路のデコボコを乗り越えやすく、乗り心地も柔軟に仕上げた。

 N-BOXジョイはSUV感覚が希薄で、チェック柄の内装に特徴がある。荷室も荷物を積むことより、小部屋として使う時の居心地を重視する。例えばファーストフードに出かけた時、店内で食べずにテイクアウトする。

 公園の駐車場に入れたら後席を格納して、チェック柄の小部屋でリラックスして食べる。日常的な移動の途中で、ピクニックを楽しめることがN-BOXジョイのメリットだ。キャンプに出かけるのではなく、日常生活の中で楽しみたいユーザーに適している。

 対するスペーシアギアは、クルマを便利に使いたいユーザーにピッタリ。収納設備が豊富で、マルチユースフラップを使うと後席の上の荷物も倒れにくい。燃費性能も優れ、軽自動車の機能やメリットを突きつめている。

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