乗用車タイヤではあまり推奨されていないようですが、トラックでは条件さえ合えばスタッドレスタイヤの履き潰しはごく一般的に行なわれています。

 スタッドレスタイヤをまず冬タイヤとして使用し、ウインターシーズンが終わって雪道での使用不可のプラットフォームが露出したら、今度は夏タイヤとしてそのまま使い続けるというのがスタッドレスの履き潰しですが、そこでちょっと混乱しちゃうケースもあるようです。

 プロのタイヤマン・ハマダユキオさんがそんなエピソードを紹介しつつ、スタッドレスのプラットフォームの確認の仕方を伝授します。

文/タイヤサービスマン・ハマダユキオ、写真/ハマダユキオ、トラックマガジン「フルロード」編集部

タイヤ屋には「スタッドレスと夏タイヤの見分け方」の問い合わせも……!?

大抵のドライバーさんはスタッドレスと夏タイヤの見分けはできると思いますが、稀にタイヤ屋には「見分け方」の問い合わせが来ることも……

 暑く長い夏もようやく一段落。北国ではぼちぼちスタッドレスタイヤの準備が本格化してくるのでしょうが、首都圏や非降雪地域では基本的に閑散期になります。

 閑散期とはいえ、タイヤ管理やスタッドレスタイヤ入荷に備え、倉庫等のタイヤの並べ替えなどやることは盛り沢山。あっという間にスタッドレスタイヤ履き替え時期に突入してしまいます。

 もう数年前の話ですが、あるユーザーさんから事務所に電話が入りました。

 「あの~変なこと聞いてもいいですかね? ドライバーさんが自分のトラックのタイヤって夏タイヤかスタッドレスタイヤかを知りたいって言うんですけど……」

 一瞬「ん?」ってなりましたが、問い合わせの車番は今年の春の履き替えの時に冬タイヤとしての残溝が不十分だったので、そのまま履き潰しになったんですね。

 そこで「スタッドレスタイヤとしては冬は使えないけど、夏タイヤとしての履き潰しの基準みないなことが知りたいってことですか?」

 「あ、いや、タイヤの横を見ただけで夏タイヤかスタッドレスタイヤかを見分けられるかを聞いているんです」

 確かに夏タイヤとはいえ、オールシーズンタイヤだと見た目のゴツゴツ感のブロックパターンは夏タイヤなのかスタッドレスタイヤなのか見分けがつかないかもしれませんね。

 我々のようなタイヤ専門の業者や車両を整備を含め管理する方々、整備士さんドライバーさんでも大半はトレッドパターンで夏タイヤかスタッドレスタイヤかを判別できると思いますが、夏タイヤでオールシーズンタイヤの装着率の高さや各メーカーで違うトレッドパターンのデザイン、スタッドレスタイヤでも耐摩耗性に優れたトレッドパターン(厳密にはトレッドゴムも違います)や氷上性能を強くしたトレッドパターンもありますから、スタッドレスタイヤでも他メーカーを含めますとトレッドパターンデザインは無数に存在します。

 トレッド面での点検は残溝の点検は必須で、とても大事です。それに加え、いま装着されてるタイヤは夏タイヤなのかスタッドレスタイヤなのか、知っていても損ではないと思います。

 では、その判別方法ですが、これだけ長々と引っ張って「それはもうレアな情報だろうな?」って思っていると思いますが、

 「STUDLESS」

 この表記があればスタッドレスタイヤです。以上です(笑)。

要確認! スタッドレスのプラットフォーム

 あとは矢印のマークがあるか否か。これはプラットホームの場所を示す矢印なんですね。

 プラットフォームに関してはいろいろなメディアで取り上げられ、以前より少し知名度(?)は上がってきてはいますが、これはスタッドレスタイヤとしての使用限度の残溝の深さを知るためのインジケータでして、トレッド面には何箇所か設けられてます。

 冬タイヤとしての残溝の使用限度は新品より50%です。このプラットホームというインジケータは残溝を測定することなく目視で点検できるモノなんですね。

 タイヤサイド部分にある矢印はタイヤサイドからトレッド方向に向かって指しており、矢印を追ってトレッド面を探すとスリップサインの少し大きいインジケータがあります。

 それがプラットホームで隣り合うブロックと繋がっていれば、残溝50%以下ですので雪道では使用不可となります。

 STUDLESSとプラットフォームの位置を示す矢印。スタッドレスタイヤにはメーカーに関係なく表示があります。

丸印がプラットホーム。画像のタイヤはプラットホームが隣のブロックと繋がってるので残溝は50パーセント以下となり冬タイヤとしては使用不可となります

 ところが一部この情報が通用しない事例もあります。一部の海外製やリトレッドタイヤです。

 乗用車では海外、特にアジアンタイヤの使用が広まっていますが、トラックタイヤも徐々に増えております。それぞれのメーカーでコンセプトが異なるので、すべてを網羅するのはむずかしいですが、「STUDLESS」の表記はあってもプラットホームが無かったりします。

 リトレッドタイヤは、ベースとなるタイヤが夏タイヤでもスタッドレスタイヤのトレッドを貼り付けできることが多いので、タイヤサイドの表記が夏タイヤでもパターンはスタッドレスタイヤというケースも珍しくありません。

 リトレッドタイヤは貼り付けるトレッドの端、タイヤの角に当る部分にリトレッドタイヤもしくはリサイクルタイヤの表記、スタッドレスタイヤならばこれに「STUDLESS」の表記が必ずありますので、リトレッドタイヤの場合はタイヤのサイド表記そのままではないことが多々ありますのでご注意を……。

画像はリトレッドタイヤのスタッドレスタイヤ。タイヤサイドの表記はベースとなるタイヤで必ずしもスタッドレスタイヤがベースでは無いためタイヤのショルダー(肩の部分)の表記を確認しましょう

 そしてスタッドレスタイヤを判別したら残溝をよく見て頂きたいですね。使用限度のプラットホーム露出していれば、この冬は使用不可となり、新たにスタッドレスタイヤを購入するのが賢明です。

 このプラットホームはトレッドのセンター付近には無く、多くはトレッドの端付近にあります。ですのでプラットホームの点検ももちろん大事ですが、トレッドの真ん中辺りの点検もお願いいたします。

 リアで長く使用された場合ですと、センター摩耗が進行してトラクションが欲しい部分がすり減っていることがあり、イザという時に困りますので、スタッドレスタイヤの残溝点検はトレッド全体を見るようにお願いいたします。

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