クルマのモデルサイクル中には、「ビッグマイナーチェンジ」と呼ばれるフルモデルチェンジ並みのモデルチェンジが行われることがある。まさに「ここまでやるか!」というほどの激変ぶり。ここではトヨタ、レクサス車のビッグマイナーチェンジを探る。(本稿は「ベストカー」2013年8月10日号に掲載した記事の再録版となります)

文:編集部

■変わりっぷりは見事  トヨタ SAI

トヨタ SAI(2009年10月20日登場)
トヨタ SAI(2013年8月29日マイナーチェンジ)。遮音ガラスを採用し、パフォーマンスダンパーも設定

 現行インサイトや現行プリウスが登場し、エコカー減税なども追い風にハイブリッドカー普及元年ともいわれた2009年に登場したSAI。

 プリウスより上級な「小さな高級車」を目指したが、スタイルが地味だったことや、同時期にフルモデルチェンジしたマークXのほうがガソリン代をそれほど気にしないこのクラスのユーザーには支持されたのに加え、2011年にSAIより大きく広く、燃費もいい同クラスのカムリが登場したこともあり販売は低迷。廃止が噂された時期もあったが、5年目を前に復活をかけ8月29日にビッグマイナーチェンジされる。

 背水の陣だけに内容も幅広く前後ともアグレッシブなスタイルに変更されるのをはじめ、動力性能はそのままだが、車高を10mm下げたことによる空力の向上や制御関係の見直しによりJC08モード燃費を21.0km/Lから22.4km/Lに向上。快適性やハンドリングも大幅に向上するという。

 SAIをあきらめなかったトヨタへの敬意も表し、拍手を送りたい!

●激変度:170

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■バブル崩壊の痛手を挽回! トヨタ 2代目セルシオ

2代目セルシオ(1994年10月登場)。今見ると確かにおとなしすぎたかも
2代目セルシオ(1997年7月マイナーチェンジ)。マイチェン後のスタイルは3代目につながるイメージも

 初期の2代目セルシオは非常に厳しい環境のなか開発された。

 というのも、初代セルシオが当時のベンツSクラスやBMW7シリーズを凌駕すべく、トヨタとしてはコストを度外視といっても過言ではないほど長い時間をかけ作り込まれたクルマだったのに対し、2代目はバブル崩壊もあり開発費の削減に加え、実質的な値下げを行なうなど、初代に比べ全体的にクォリティの低下が見受けられた。

 スタイルも妙に角張った感じのする風格に欠けるものになったこともあり、人気も低迷してしまった。

 復活をかけ行なわれたビッグマイナーチェンジでは、ヘッドライトを大型化された丸みのあるものにするなどし、セルシオらしい押し出しのある強いものに変更。機能面でも最高出力を265馬力から280馬力に向上したほか、ATも4速から5速に進化。

 当時高価な装備だったHIDライトやVSCを全グレードに標準装備したうえ、レーダークルーズコントロールをオプション設定するなど、トヨタのフラッグシップとして恥じない内容。

 販売が盛り返しただけでなく、イメージが向上。2代目セルシオのビッグマイナーチェンジも効果は絶大だった。

●激変度:130

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■クラウンらしさを取り戻した! トヨタ 9代目クラウンロイヤル

9代目クラウンロイヤル(1991年10月登場)
9代目クラウンロイヤル(1993年8月マイナーチェンジ)。トランクを低い位置にしてマイナーチェンジでナンバー位置まで変えるのは異例

 9代目クラウンはセルシオの登場、それに伴いクラウンファミリーにクラウンロイヤルとセルシオの間を埋めるクラウンマジェスタ、アリストが加わったこともあり、それまでのトヨタの実質的なフラッグシップから微妙なポジションに立たされていた。

 スタイルも「クラウンロイヤルはセルシオやクラウンマジェスタより押し出しのあるものであってはいけない」というヒエラルキーがあったのか、それまでのクラウンの豪華なグリルに代表される煌びやかな部分は影を潜めた。

 結果スタイルが地味なものとなったことが大きな引き金となり、販売ではクラウン史上に残る苦戦を強いられた。販売で苦戦した原因には、グランツーリスモの登場以来当時は勢いのあったセドリック/グロリア軍団にユーザーが流れたことも考えられる。

 マイナーチェンジでの変更点はスタイルに集中しており具体的にはグリルに縦のラインを入れ押し出し感を強めリア回りを8代目後期型に似たデザインに変更、Cピラーに王冠マークを入れるなどの対応を行なった。

 マイナーチェンジ後はクラウンユーザーの買い替えが進むようになり、初志を捨てたマイナーチェンジの成果は大きかった。

●激変度:150

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■FRマークX最後の集大成? トヨタ マークX

現行マークX(2009年10月登場)。スッキリとした前期型も悪くないが
現行マークX(2012年8月マイナーチェンジ)。ヘッドライト回りが現代的となり、改良箇所は走りと乗心地にも目が向けられた

 キープコンセプトで登場した現行マークXは飛び抜けた部分こそないものの、全体的な完成度やコストパフォーマンスが高く評価され、それなりに堅調な売れゆきをキープ。しかし昨今セダンへの需要や注目が低くなっていることもあり、存在感をキープする意味も含めたビッグマイナーチェンジだったのか。

 スタイリング面では横長になったグリル、グリルとバンパー開口部を利用してXの形をイメージしたバンパー形状、ボリュームを増したリア回りの採用とかなりの激変ぶりだった。

 機能面においてはスポット溶接箇所を増したことによるボディ剛性の向上、プレミアムへの路面や走行状況に合わせて動きを変化させ、乗り心地とハンドリングを同時に向上するFADダンバーの採用、スポーツコンバージョン車である“G’s”の追加などが行なわれた。

 ビッグマイナーチェンジの効果には、乗り心地が「よくなった」、「悪くなった」という両方の評価があり、微妙なところ。販売状況もそれほど変わっていないようで、内容ほどの成果は挙げられていないようだ。

●激変度:140

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■メジャーチェンジで魅力倍増! レクサスLS

レクサスLS(2006年9月登場)
レクサスLS(2012年10月ビッグマイナーチェンジ)。スピンドルグリルを採用するとともに世界最小径のLEDフォグランプなど灯火類すべてにLEDを採用。Fスポーツも追加された

 モデルサイクルの長期化により全体的に薄れた新鮮さを維持するため、メジャーチェンジと呼ばれるビッグマイナーチェンジを実施。

 内容はスピンドルグリルの採用、ダッシュボードの形状変更を筆頭に、機能面も広範囲に渡って改良を受けた。

 完成度は大幅に高まり、初期型の買い替え時期に合致したこともあるのか、改良後モデルを街で見る機会も多くなった。

●激変度:150

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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