2024年6月、ホンダ「フリード」がフルモデルチェンジとなった。トヨタ「シエンタ」とともに、国内で大人気のコンパクトミニバンであるフリード。サイズも近く、座席構成やガソリン車とハイブリッド車といったパワートレイン構成もほぼ同じシエンタとフリードに関しては、どちらを選ぶべきか頭を悩ませている人は少なくないだろう。

 はたして、シエンタとフリードはどちらがよりいいクルマなのか!?? 実力とデザインをガチ比較してみよう。

文:吉川賢一/写真:TOYOTA、HONDA

新型登場のたびに、形勢逆転を繰り返してきた

 シエンタとフリードは、新型登場のたびに、抜きつ抜かれつの形勢逆転を繰り返してきた。モビリオの後継車として2008年5月に初代フリードが登場したあとは、2014年まではフリードが優位だったが、2015年7月に2代目シエンタが登場すると形勢は逆転。ただ、2016年9月の2代目フリードの登場で、2017年はフリードが勝利。2018年から2022年は一進一退の攻防が続き、2022年に3代目シエンタが登場すると、翌2023年はシエンタが圧勝。6月に3代目フリードが登場した2024年は、1~9月の集計ではシエンタが86,150台、フリードが61,518台と、シエンタ優勢となっている。

一進一退を繰り返すシエンタとフリード。2024年1~9月の集計では、シエンタが86,150台、フリードが61,518台。2025年の結果に注目だ(赤星マークはフルモデルチェンジ)

コスパと燃費、お洒落なデザインが魅力のシエンタ

 ここからはそれぞれのモデルの特徴を挙げていこう。現行シエンタは、上級グレード(ガソリンZ 2WD、7人乗り)であっても、税込268万円と、諸費用込々でも300万円以下の予算で収まるコスパのよさが魅力だ。中間グレード(ガソリンG 2WD、7人乗り)ならば、税込237万円で購入できる。

 低燃費も魅力的だ。WLTCモードで18.3km/L(ガソリン車)と、フリード(ガソリン車で16.5km/L)よりもわずかだが燃費がいい。

 人気グレードは3列シート7人乗り車だが、3列目シートは折りたたむと完全にフロア下に格納できるため、普段は荷物スペースとして活用する人が多いようだ。「いざとなれば7人まで乗ることができる」という、日本人が求めがちな守備範囲の広さもシエンタのよいところだろう。

 そして、流行をいち早くキャッチアップしたファニーなデザインも魅力だ。樹脂パーツでフレンチテイストが感じられるデザインを取り込むなど、女性やファミリー向けのお洒落コンパクトミニバンに仕上がっている。

 ただ、3列シート車の2列目シートが独立式のキャプテンシートではないため、3列目シートへのウォークスルーができないことをネックに感じている人もいるようだ。フリードのように6人乗りと7人乗りが選択できればいいのだが、用意してもシエンタユーザーが買ってくれるのは7人乗りのほうが圧倒的に多く、トヨタとしては無駄を省いた結果なのかもしれない。

2022年8月にデビューした3代目シエンタ。扱いやすい5ナンバーサイズはそのままに、広い室内空間と取り回しのよさに磨きをかけた一台
3列シート7人乗車。3列目シートは2列目の床下に格納できる

クルマとしての完成度が圧倒的に高く、デザインも魅力的になった新型フリード

 新型フリードは、2列5人乗りと、3列6人乗り、3列7人乗りが用意されている。売れ筋グレードは6人乗り(2WD)。ファミリーだけでなく、幅広いユーザーから受け入れられているのがフリードの特徴だ。

 6人乗り車のセカンドキャプテンシートは、7人乗り車のセカンドベンチタイプシートと比べると、はるかに座り心地がよく、長時間のドライブでも快適で、インテリアの質感も高く、まるでワンランク上のクルマの質感。

 新型は、エクステリアデザインも好評だ。無駄なキャラクターラインをなくして、シンプルに見せるデザインがカッコよく、AIRとCROSTARどちらもお洒落。2000年代のモビリオ、スパイクをオマージュしたようにもみえる、優れたタイムレスデザインだ。

 ただ、3列目シートを格納したときに荷室が狭くなるのはフリードの弱点。クッションが厚く、大人でも無理なく座れる3列目シートはフリードの魅力でもあるが、大きいぶん、格納したときに荷室が狭くなってしまうのだ。

 3列目シートを常に畳まずに使うならばよいが、荷室に荷物をたくさん積んで移動するという用途はシエンタのほうが得意。ホンダは、3列目シートを床下にすっぽりと格納することが得意なはず。ステップワゴンやヴェゼルのようなダイブダウンシートにはできなかったのかと、この点は少々残念なところだ。

2024年6月にデビューした3代目フリード。上質で洗練されたシンプルなデザインのAIR(エアー)と、力強く遊び心に溢れるデザインのCROSSTAR(クロスター)の2タイプがある
6人乗り車のセカンドキャプテンシートは、7人乗り車のセカンドベンチタイプシートと比べると、はるかに座り心地がよい。シエンタにはこのキャプテンシート仕様はない

後席に子供が乗ることが多いならシエンタ、大人が乗るならフリード

 シエンタとフリードは、2列目・3列目シートをどう使うのかがポイントになる。小さな子供が乗ることが多いならばシエンタ、大人が乗ることが多いならばフリード、という選択もあるだろう。

 という細かな違いはあるものの、シエンタもフリードも万能なコンパクトミニバンであり、どちらかをデザイン買いしても、十分に満足できるはず。

 前述したように、どちらかがフルモデルチェンジをした翌年は、フルモデルチェンジをしたほうが販売台数で他方を上回るのが通例。両モデルの本当の実力が、販売台数という結果で明らかとなるのは、2026年ということになるが、はたしてどうなるか。今後もシエンタとフリードの動向には要注目だ。

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