お米をはじめとして生活必需品の物価が急騰、ガソリン代も上がり、庶民の財布がますます苦しくなっている昨今。そんななか、任意保険料が3年連続して値上げしているのを知っていましたか? 交通事故発生件数は年々下がっているというのになぜ値上げされるのだろうか?

文:渡辺陽一郎/写真:Adobe Stock(トビラ写真:oka@Adobe Stcok)、ベストカーWeb編集部

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■値上げの理由を聞いてみた!

交通事故発生件数が減っているのになぜ任意保険料が上がるのか?(oka@Adobe Stcok)

 クルマを運行する以上、任意保険に加入するのは当然だ。加入が義務付けられている自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)が補償するのは、対人賠償に限られ、介護が常時必要な後遺障害を負った時でも支払い限度額は4000万円に留まる。これでは足りない。

 また自賠責保険には、対物賠償、自車の乗員を補償する人身傷害補償、自分の車両の修理費用などに充てる車両保険などが含まれない。従って任意保険に加入するのが当然になった。

 今の任意保険は自由化され、任意保険料も一律にする必要はない。それでも保険料の目安として、損害保険料率算出機構が自動車保険の参考純率を定めている。各損害保険会社は、参考純率を参考に任意保険料を決めることが多いため、結果的に保険料の変更時期も足並みがそろう。

 そして2025年1月には、3~5%の範囲で、多くの損害保険会社が任意保険料を値上げする。2024年1月にも値上げを実施した損害保険会社が多かったから、2年連続の値上げになるわけだ。

2023年中の交通事故死者数(24時間以内の死者数)は2678人で、8年ぶりに増加した。また、交通事故発生件数は30万7911件、負傷者数は36万5027人(出典:警察庁)

 値上げの理由を損害保険会社の営業担当者に尋ねると、以下のように返答された。

 「さまざまな理由があるが、一番大きな影響を与えたのは修理費用の高騰だ。修理に必要なパーツの価格に加えて、塗料の価格、輸送費用、修理を行うメカニックの人件費まで、幅広い品目が値上げされている。その結果、保険を使って行われる修理費用が大幅に高くなった」。

 今は衝突被害軽減ブレーキが普及しており、交通事故の発生件数が減っているのではないのか。「交通事故の発生件数は、2019年までは減少したが、最近は横這いだ。

 直近の2023年以降は、コロナ禍が終息に向かった影響で交通量が増えて、交通事故件数も若干増加している。また衝突被害軽減ブレーキを装着したクルマが衝突事故を発生させると、ミリ波レーダーや超音波センサーが装着されているため、修理費用を高めてしまう。

 ライトを自動的に点消灯させるオートライトシステムの装着義務化、LEDヘッドランプの普及なども修理費用を高めた原因だ」。安全装備の充実は好ましいが、それによって任意保険料の支出が減るとは限らないようだ。

 ちなみに交通事故の死者数は、スバルのアイサイト装着車の登場など、安全装備の充実度が高まった2008年頃から安定的に減ってきた。2020年には3000人を下まわったが、その後は減少の仕方が弱まっている。

 2023年は、交通量の増加により、2022年に比べて交通事故による死者数が若干増えた。今後は一層の安全対策が求められている。

 話を保険料の値上げに戻すと、損害保険会社の営業担当者は「自然災害の頻発も、車両保険の保険金支出を高めて損害保険会社の収支を悪化させている」と言う。

 車両保険は、損害が広範囲にわたる地震、津波、噴火に基づく場合は補償されないが、台風、洪水、高波などの被害は補償される。従って自然災害が頻発すれば、車両保険も多く使われ、任意保険料を値上げする原因になる。

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■任意保険料の値上げは今後も続くのか?

2024年1月~10月交通事故発生件数および死者数、負傷者数(出典:警察庁)

 任意保険料の値上げは、今後も続きそうだ。先に挙げた損害保険料率算出機構が2024年6月に、自動車保険の参考純率について、5.7%の引き上げを発表したからだ。

 この参考純率の変更が任意保険料の値上げに反映されるのは、2026年以降になると見られている。つまり任意保険料は、2025年1月に続き、2026年にも5~6%は値上げされそうだ。そうなると先に述べた2024年の値上げも含めて、任意保険料は3年連続して高まることになる。

 この状態が長く続いて任意保険に加入しない車両が増えると、交通事故の被害者が不利益を被る。アダプティブLEDヘッドランプなども含めて、安全装備の充実は大切だが、修理費用の高騰を抑える商品開発も切実に求められている。

 また今の日本車の新車価格は、約15年前に比べて、同じ車種と同等グレード同士の比較で1.2~1.4倍に値上げされた。任意保険料の値上げまで加わると、クルマをますます所有しにくくなってしまう。燃料価格の高騰も長く続いており、クルマに関する出費を見直さないと、クルマの所有が困難になる。

 まずはクルマ関連の税金から見直したい。自動車重量税など、今では消滅している道路特定財源に基づく税金が、今でも一般財源として徴収されているからだ。

 昨今はレギュラーガソリン価格の全国平均が約175円に達しているが、この内の約73円は消費税を含めた各種の税金で占められる。

 税金を差し引いたレギュラーガソリンの本体価格は今でも約102円と安い。これらの税金を整理してユーザーの負担を減らし、修理費用や任意保険料の合理化も図ることが不可欠だ。

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