世界トップの自動車メーカーであるフォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。トヨタと並び世界トップを争う名門欧州メーカーが一体何故こんなことになってしまったのか? そのワケに迫っていく。

※本稿は2024年9月のものです
文:角田伸幸/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年10月26日号

■ヨーロッパEV市場の伸び悩みも一因か

フォルクスワーゲンはドイツに三十数か所の生産拠点を持ち、約30万人を雇用している

 フォルクスワーゲン(VW)がドイツ国内の工場閉鎖を検討するというニュースが、欧州自動車産業に衝撃を与えている。VWの抱える問題が同社固有のものでなく、メーカー各社に共通するものだからだ。

 その共通する問題だが、大きくふたつある。まずひとつは、長く依存してきた中国市場の縮小だ。

 ドイツに代表される欧州の自動車メーカーは、中国の経済発展に合わせて自社製品を売り込み、20世紀の終わり頃から莫大な利益を上げてきた。ところがEVシフトが進むにつれてBYDや吉利といった中国企業が力を付け、欧州企業の利益を奪うようになったのだ。これが問題のひとつ目。

 もうひとつの問題は、欧州のEV市場が思うような成長を見せなかったことだ。

 欧州は日本よりもはるかに気候変動に関する危機感が強く、クルマの電動化についても順当な移行が進むと思われた。各社もそのシナリオで戦略を描いてきたわけだが、実態は違った。インフレによって庶民の暮らしが厳しさを増し、財布を痛めてもBEVに乗り換えようという気運が醸成できなかったのだ。

 さらにだ。中国メーカーがそんな欧州市場を狙って、圧倒的に安いBEVを売り込もうとしている。慌ててEUは追加関税に乗り出したものの、今後域内のトルコやハンガリーで作られるBYD車などにどう対抗するのか、不安は尽きない。

 こうしてみると、VWの工場閉鎖検討が対岸の火事では済まないことがわかってくる。2024年春、メルセデスが2030年の完全EV化を撤回したが、最近ボルボもこれに同調しており、欧州メーカーは重大な戦略転換の時期にある。その行方を占ううえでも、VWの動きには注目したい。

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