「事故った!」といっても、駐車中の相手のクルマに自車が擦ってしまったなどの軽微な事故では、実況見分などで時間がとられることが頭をよぎって「警察をわざわざ呼ばないといけないのか?」と思うこともあるが……。

文/山口卓也、写真/写真AC、自動車安全運転センター

■軽微な事故でも警察への届出義務がある!

単独で起こした事故は「自損事故」として処理される。被害者がいなくても警察に通報することは必須だ

 軽微な交通事故に遭った時、こちらからもしくは相手方から「警察は呼ばないようにしよう」と頼んだり頼まれたりするケースがある。

 さすがに人身事故で警察への届出をしない人はまずいないだろうが、車両同士で軽く擦っただけ……のような物損事故ではそう言ってしまうのもなんとなく想像できる。

●交通事故は大きく分けて3種類

 交通事故には先に話した物損事故の他に自損事故、人身事故と大きく分けて3種類がある。

・自損事故
 クルマの運転者が単独で起こした事故で、ガードレールや電柱などにぶつかったような事故。

・物損事故
 事故による死傷者が存在せず、物のみが損傷した事故。

・人身事故
 人が負傷もしくは死亡したりした事故。

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■警察への届出を行わなかった場合のデメリット

●報告義務違反に問われると罰則あり!

 この3種類の交通事故のいずれも、道路交通法 第72条によって必ず警察への届出が義務づけられている。

 これは、たとえ負傷者がいなくても行わなければならず、この報告義務を怠ると道路交通法 第119条に違反し、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金を科されることになる。

 そして、こちらが完全な被害者であっても報告義務を怠ると報告義務違反となるので注意!

 よって、相手からどんなに懇願されたとしても、軽微な事故であっても、そもそも運転者として報告義務があるために警察への届出は必須である。

●報告を怠ると保険金請求時に必要な証明書の入手が不可能

 車両保険などを使って損傷箇所の修理を行う場合、接触事故があったとする接触事故の証明書が必要となる。事故の状況についての証拠がない場合は適正な損害賠償額を算出できないからだ。

 警察を呼ばないと作成できない書類は“交通事故証明書”と“実況見分調書”。

 交通事故証明書は自動車安全運転センターが発行する書類で、交通事故が起こったことを証明する書類。実況見分調書は事故の状況などを証明する書類である。

●事故の後になって相手方とトラブルとなる場合がある

 事故直後の現場では相手方が自分の非を認め、「修理代は払う」などと言っていても、事故から数日経っても修理代が払われなかったり、逆に「あなたのほうが過失は大きい」などと言ってくることがある。

 警察を呼んだことで作成される実況見分調書には、事故当時の状況や証言などが記録されており、事故の後から相手方とトラブルになった場合にも効力を発揮する。

●自損事故が当て逃げとなる場合がある

 人身事故を起こしてしまうと、事故を起こしただけで違反点数がついてしまうが、自損事故の場合は違反点数がつかない。

 しかし、自損事故を起こしたのに警察への報告をしておらず、後になって事故が起きたことを警察が知った場合は“当て逃げ”として扱われることがある。

 自損事故であれば違反点数0点で済んだものが、当て逃げとなると安全運転義務違反(2点)+危険防止措置義務違反(5点)となり違反点数は7点に。

 行政責任として違反点数6点以上は免許停止の対象となり、30日間の免許停止となる。また、刑事責任にも問われることになり、その罰則は1年以下の懲役または10万円以下の罰金となることも知っておきたい。

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■それでも警察へ報告することを迷うシーン

いつぶつけたかわからない……。そんな時にも、気づいた時に警察に相談して指示を仰ぐのが正解

・親族同士の事故の場合

 親族同士の事故では、「いちいち警察に通報するのも気が引ける……」と思うかもしれない。また、親族同士では保険を使えないと思っている人は多い。

 しかし、自賠責保険は被害者が家族であっても保険金支払いの請求は可能。

 また、任意保険であっても“人身障害保険”に入っていれば保険金が出る場合もある。保険金の請求時にはやはり交通事故証明書が必須なため、警察への届出はするべきである。

・接触事故を後から知った場合

 例えば、ショッピングセンターの駐車場などで、段差を越えたと思って帰宅したら自車のバンパーに新たな傷が入っていた。よく見ると他車の塗料がこびりついている……。こんな場合はどうするか?

 段差を越えたのではなく他車にぶつけてしまっていた場合で、相手のクルマにドライブレコーダーが付いている場合などは、相手から当て逃げとして通報される可能性大。

 当て逃げには刑事罰があり、いきなり警察が自宅に来て逮捕される……ということも十分ありうる。

 よって、事故に気づいたらまずは早めに警察に連絡し、指示を仰ぐことが重要である。

 最後に「こんな場合は?」などもあえて書いたが、事故を起こした場合は自損・物損・人身、親族であろうが親友であろうが、後から気づいた……であろうが「報告は義務」であることは必ず頭に入れておきたい。

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