2024年も12月に入り、翌年度以降の税制についての具体的な方針をまとめる税制改正大綱の2025年度版が公表されるタイミングが近づいてきました。例年ですと、12月中旬ごろに公表されますが、今年は先の衆議院議員選挙で与党が過半数割れとなったことなどによって、もう少しずれ込む可能性が指摘されています。
扶養控除の見直しや、住宅ローン減税の子育て世帯優遇延長など、我々の生活に直結する注目ポイントもいくつかありますが、やはりクルマに関係する仕事をしているものとしては、自動車関連諸税の動向は気になるところ。各省庁から提出された2025年度税制改正要望を確認しながら、日本のおかしな自動車関連諸税について振り返りましょう。
文:エムスリープロダクション/アイキャッチ画像:Adobe Stock_xreflex/写真:Adobe Stock、写真AC
購入・所有・使用のすべてに税金が課せられている
自動車関連諸税としては、クルマの取得時にかかる自動車税/軽自動車税(環境性能割)のほか、毎年4月1日時点の所有者に課せられる「自動車税/軽自動車税(種別割)」、新車取得時や車検時に課せられる「自動車重量税」、また、使用をする際に必要な燃料に課せられる「ガソリン税」もあります。購入時には、消費税も課せられますし、ガソリンも(諸税込みの)単価×入れた量に対して、消費税が課せられます。
買ったら課税、保有しているだけでも課税、走ったらまた課税、しかも税金を含んだ価格に課税(二重課税)という、おかしな日本の自動車関連諸税。JAFによると、クルマユーザーが負担しているこれらの税金は、国の租税総収入の約7.9%にもなるそうです。
続く暫定税率に加えて二重課税など、問題が多いガソリン税
なかでも問題視されているのは、ガソリン税です。「ガソリン税」は、揮発油税と地方揮発油税をあわせたもので、1.0Lあたり53.8円となかなかの税額。石油石炭税(2.8円/L)なども課せられており、本体価格とこれら税金を合わせた金額に、さらに10%の消費税が課せられています。ガソリン税と石油石炭税をあわせると、1.0Lあたり56.6円にも。
たとえば、1.0Lあたり160円だとすると、うち56.6円が税金なので、本体価格は88.85 円(160-ガソリン税+石油石炭税56.6円+消費税14.55円)。およそ56%が税金ということになります。
(本体価格にもよりますが)半分以上が税金、というのも驚きなのですが、問題なのは、ガソリン税の暫定税率。ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)53.8円/Lのうち、25.1円/Lは、いまから50年前に道路整備のさらなる拡充のため、道路特定財源として暫定で始まったもの。道路をつくるために暫定で、として納めていた税金です。ただ、ガソリン税が2009年に一般財源化されたあとも、期間の定めなく、「当分の間」として、そのまま続いています。
この「当分の間」税率には、レギュラーガソリンの全国平均が3ヶ月連続で高騰すると停止され、揮発油税等の本則税率(28.7円/L)が適用されるという規定(トリガー条項)があるのですが、それも、2011年の東日本大震災の復興財源確保のために凍結されてしまったまま。2023年度の環境省税制改正要望結果の概要をみると、「グリーン化の観点化から当分の間税率を維持する」とされています。
さらに、この諸税含む価格に対して、10%の消費税が課されるという二重課税状態でもあるなど、ガソリン税は問題が多いのです。
大切に乗ってきたのに、長く所有したら重課されるのはおかしくない!??
また、自動車税(種別割)や自動車重量税の13年超車への税額重課も、問題視されています。自動車税(種別割)では、エコカーに該当しないクルマの場合、登録から13年経過したクルマには約13%の重課、自動車重量税でも、同様にエコカーに該当しないクルマでは、13年後に約40%も重くなり、18年経過するとさらに10%程度もの重課となります。
地球環境保護の観点から、環境にやさしいクルマへの切り替えを促す目的で設定されたもので、「13年」という区切りについては、「平均車齢」で決められたとのこと。しかしながら、長く乗るためにメンテナンスを怠らず、大事に乗ってきたオーナーにとっては、心外もいいところではないでしょうか。
環境問題への対策が必要なのはわかりますが、車齢で区切って重課するというのはあまりに安直。そして13年でクルマを乗り換えていくことが本当に環境にやさしいのかも疑問です。
日本の自動車産業の市場規模はおよそ60兆円、新車販売台数はおよそ420万台にもなり、日本経済を回すには、クルマを買い替えていくことが重要だといわれますが、エコという側面だけで考えれば、適切にメンテナンスをしながら一台に長く乗り続けたほうがエコなはず。いくら近年のクルマが低燃費(=環境負荷が低い)だからといって、新たにクルマを一台つくり出す際のCO2排出や資源、エネルギー消費を回収することは難しく、近年高額化した新車価格の影響で、クルマを買いたくても買い換えられない、という人も少なくないはずです。
2026年度税制改正以降では、大きく変わる可能性が
国土交通省の2025年度(令和7年度)税制改正要望事項をみると、主要項目以外の項目として、「自動車関係諸税の課税のあり方の検討」が挙げられており、「自動車関係諸税については、令和6年度(2024年度)与党税制改正大綱の検討事項を踏まえ、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望を踏まえるとともに、「2050 年カーボンニュートラル」目標の実現に向けた積極的な貢献、(略)公平・中立・簡素な 課税のあり方について、中長期的な視点に立って検討を行う。」としています。
その令和6年度(2024年度)与党税制改正大綱では、「次のエコカー減税(自動車重量税)の期限到来時(2026年4月30日)までに検討を進める」とされており、自動車税(種別割)のグリーン化特例も2026年(令和8年)3月31日に期限が到来することから、2026年度(令和8年)税制改正以降では、自動車関連諸税の制度が、大きく変わる可能性があります。
ぜひとも、時代にあわせたアップデートを!!
これらガソリン税や13年超車への重課税もそうですが、クルマの電動化が進む中において、自動車税/軽自動車税の排気量に応じた課税も、これからの時代にふさわしい税体系とはいえず、見直しが必要。100年に一度の変革期にあるといわれる自動車産業を盛り上げていくためにも、国の積極的姿勢は、必須ではないでしょうか。
JAFは、「日本社会や自動車産業がかつてない変化を求められている中、現行の自動車税制の税体系や課税根拠は、社会の変化スピードに適応できておらず、抜本的な見直しが急務」「環境激変への適応や、魅力ある日本市場の形成・活性化を図っていくためにも、新たなモビリティ社会を踏まえた公平簡素な税制の実現に向け、直ちに、自動車税制抜本見直しの国民的な議論を深めていくべき」とする要望を発表、また、神奈川県や愛知県などの8つの都道府県知事等も「自動車産業が引き続き日本の基幹産業として日本経済・社会を支えていくことは、将来にわたり、地方が安定した雇用や税収を確保するうえで重要であり、そのため税制が果たす役割は大きい。」とする、令和7年度税制改正において自動車諸税の抜本的な見直しを求める緊急声明を2024年11月に発表しています。
私たちが平和で豊かな生活をしていくためには、税金を納めることは必要なことではあります。しかしながら、時代に合わせたアップデートをせず、税負担を増やしていくだけの方策では、ますます国内の自動車市場は縮小していってしまいます。ぜひとも、日本の基幹産業である自動車産業を守っていくための抜本的な見直しがなされることを期待したいです。
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