90年代後半から2000年代、アウディは圧倒的なクォリティと先進的なデザインで人気を集めました。A4やA6、TTなど多くのヒットモデルが登場しましたが、中には歴史に埋もれてしまった不遇のクルマも…。今回は品質が高すぎた、不運のコンパクトモデルに着目してみます。

文:藤野太一/写真:ベストカー編集部

■日本には導入されなかった高品質車

オーバークォリティという表現が相応しく、アルミボディなどを採用して話題になったA2。日本には未導入、世界的にもセールスは苦戦してしまった。

 アウディの現行ラインアップをみると、セダン&ハッチバック系は、A1にはじまり、A3、A4、A5、A6、A7、A8となっています。ここで気づくはずです。なぜかA2だけがないことに。

 実はA2は、存在しました。ただし、日本へは正規輸入されなかったため、ごくわずかに並行輸入されたクルマが流通しているだけです。果たしてA2とはどんなクルマだったのか。

 1999年、全長約3.8mのコンパクトなボディに、先進技術による優れた環境性能を詰め込みデビューした、時代を先取りしたモデルでした。

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■日本未導入の理由の1つはMTのみだったこと

時代を先取りするデザインを武器にしていたアウディだけに、そのデザインは現代も十分通用するのではないだろうか。

 最大の特長は初代A8にはじまったオールアルミのASF(アウディ・スペース・フレーム)を採用したこと。

 車両重量は1トン以下の895kgを実現。1.2リッターTDIエンジン搭載車は33.3km/Lの燃費を達成し、3Lのガソリンで100km走行可能な”3リッターカー”と呼ばれ大きな話題となりました。

 では、なぜ日本に正規輸入されなかったのか。ASFを採用したことで製造コストがかさみ車両価格が高くなってしまうこと。また、ASFゆえ修理の難しさも一因に。

 さらにガソリン仕様にATの設定がなく、MTのみだったことも理由だったと言われます。

 欧州でもセールスは芳しくなかったようで、ライバルであるメルセデス・ベンツAクラスが100万台超を記録したのに対して、約17万台と伸び悩み、2005年をもって1代限りでA2は絶版となってしまいました。

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■コンセプトモデルは出ているが…

 ではその後、A2はどうなったのか。2011年のフランクフルトショーで、かつてのコンセプトを受け継ぎ、3.8mの全長に大人4人のための十分なスペースを確保するEVコンセプトカー「A2コンセプト」が発表されました。しかし、いまのところ市販化にはいたっていません。

2024年現在、アウディAGは、車名の再編成を進めています。今後は電気自動車(BEV)に偶数の、内燃エンジン車(ICE)には奇数の数字を割り当てる法則になるといいます。

 すなわち、1,3、5、7はICEに、2、4,6、8はBEVになるというわけです。

 初代のA2は、アウディのスローガンである「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」を体現したようなモデルでした。次はBEVでの復活があるのかもしれません。

2011年に発表されたEVカーの「A2コンセプト」。ただ、このデザインで登場しても初代A2ほどのインパクトは残せないような気も…。

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