日本で一番盗まれるクルマの最上位にランクされるのが、トヨタ『ランドクルーザー』である。何しろその人気、日本のみならず海外でも凄まじい。

そんなわけで広報車を借りる時に、「念のため」と言って、ホイールロックの道具を一緒に貸し出してくれる。何故そこまで人気なのだろうか。理由は抜群の耐久性と信頼性、需要に対する供給が追い付いていない…そのあたりだと思う。

この手のクルマ、昔は「クロカン四駆」と称したものだが、そんな呼び名は今ではすっかり過去のものとなった。とはいえ、ラダーフレームを持つランドクルーザーのようなクルマでは、昔ながらのクロカン四駆的乗り味がしっかりと残されている。

それにしてもクルマがデカい。今回お借りしたのはターボディーゼルを搭載する「ZX」というグレード。全長は限りなく5mに近い4925mm、そして全幅はこれも限りなく2mに近い1980mmもある。車高もボディオンフレーム構造だから1935mmとやはり高いから、ちょっとした小山だ。だから乗降にはステップ必須である。

トヨタ ランドクルーザー250 ZX

◆オンロードでも感じられる並外れたタフネスぶり

今回はもっぱらオンロードを走っただけで、このクルマが恐らく最も得意とするであろうオフロードへ分け入ることはなかったので、正直なところこのクルマの魅力の半分以上を味わっていない。ただ、オンロードを走らせてみても並外れたタフネスぶりを感じ取ることはできた。

とにかくボディはちょっとした段差や路面の凹みなどではミシリともせず、ボディオンフレーム車独特の、少しコンプライアンスが大きめで、サスペンションが上下した時のプルプル感が止まりにくい印象の揺れは感じられるものの、乗り心地が極端に悪いということはない。

トヨタ ランドクルーザー250 ZX

一方で、2.8リットルのターボディーゼルは流石にうるさい。典型的なカラカラ音を発する昔ながらのディーゼルエンジンそのものである。ただし、その力強さや高速巡航などの性能はえっ?こんなに速いの?という驚きを感じるほどで、軽く踏んでいたつもりでもスピードメーターを見ると「ヤバっ!」と思うようなシーンに何度も出くわした。つまり、それほどパワフルで速いのである。

流石にボディとフレームが別体となっているだけに、路面からの音の侵入はモノコック車と比べて断然こちらが有利。エンジンが音源としては一番大きく、ロードノイズは極めて小さなレベルにとどまる。だから高速巡航時などは、もしかするとモノコック車よりも静かなほどだ。

◆「go anywhere do anything」はジープだけの合言葉ではない

トヨタ ランドクルーザー250 ZX

室内は3列7人乗りである。3列目のシートはたたんであったので、電動で起き上がらせることができるのだが、シート座面が電動でせり出してくる様は結構複雑で、これによって床面をフラットに出来る構造となっている。

かつて、ランドローバーやジープに乗って散々悪路を攻めて、その強靭な車体と驚くほどの走破性能を体験し、この手のクルマは単なる自動車ではなく、ある種サバイバルツール的なイメージも持っていたのだが、恐らくこのランドクルーザー250も同列の走行性能をオフロードで示すのだと思う。ジープの合言葉となっている「go anywhere do anything」は、今やジープにだけ当て嵌まるものではなさそうなことを実感した。

トヨタ ランドクルーザー250 ZX

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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