待望の登場となったホンダのコンパクトミニバン、新型フリード。今回のフリードは「クロスター」推しがホンダ開発陣の真意であると筆者は指摘するが、実際のところはどうなのか、明らかにされた事実から解き明かしていこう。
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
■新型フリードはクロスターが予想外の存在感を放つ!
ついに実車初お目見えとなった大注目の新型フリード! 散々期待してきた小沢だが、見たとたんにピンと来た。これはもしや“クロスターシフト”かもしれないと。
全体に「3つの余裕」を謳った新戦略の賭けっぷりについては次で語るとして、まず驚いたのはクロスターの予想外の存在感のデカさだ。明らかに力が入っている。
シンプルデザインの標準ボディ「エア」に対するクロスオーバーSUVボディであり、先代にも用意されていたが、かつて以上に重要度が増している。事実エンジニアは「今回は最初からクロスターありきで開発した」という。
結果、まず一般的な3列仕様をエアーとクロスターともに用意するのはもちろん、今まで「フリード+」と呼ばれていた2列5人乗りをクロスターにしか用意してない。従って福祉車両もクロスターだけとなり、優遇されている。
さらに肝心なのはクロスターのみワイドボディを纏うこと。これは別に語るが一種の賭けだ。今までの客をエアーで抑えつつ、新たな個性派をクロスターで取る。
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■新型フリードはクロスターこそが開発陣のやりたかったモデル?
全長はついに4300mmを超え、全幅も1700mmを超える。四駆で45mm長く、25mm広く、105mmも低くなっている。おそらくこちらこそが新型フリードで本当にやりたいプランなのだろう。
開発陣は言った。「先代クロスターは後から追加されたモデル。やりたくてもできないことがあったんですよね」。
事実、先代モデルはせいぜい顔や前後バンパーを微妙に土臭くした程度。正直、特別感は薄かった。聞けば「本当はワイドフェンダーを導入したかったけど、スライドドアと干渉しちゃうのでできなかった」とか。
しかし、それでいて先代クロスターはフリード販売全体の約3割を占めた。比べるとフィットクロスターは14%程度。明らかにクロスターのアウトドアテイストはフリード向きなのだ。
■外観もインテリアもクロスターは入魂の仕上がり
何より実車クロスターの力の入りっぷりは特筆ものだ。ワイドフェンダーはもちろん、専用の黒い樹脂フェンダーモールやサイドモールがワイルド感を演出。ボクシーなグリルももちろん専用装備だし、開口部の大きな「カールおじさん」的なロアグリルもワイルド。個人的には三菱のデリカっぽさすら微妙に感じる。
また、四角をモチーフにしたブラック系の専用アルミホイールも力強く、専用の金属調ガーニッシュやヘアライン仕上げのアルミルーフレールも質感が高い。
インテリアもクロスターは力を抜いていない。全車撥水&撥油性ファブリックを採用しているのはもちろん、アウトドアを意識したカラーリングやマテリアルを採用。それでいてホンダらしいオシャレ雑貨っぽい質感もある。
同時にクロスターはアウトドアテイストのアクセサリーも充実。汚れに強い専用カーゴトレイはもちろん、余裕の頭上スペースを有効活用できる専用ルーフラックやトランクサイドボックス、ランタンを引っかける天井フックに、テールゲートを使った専用タープなど。
加えてクロスター5人乗り2列シート車のマルチな使い勝手だ。リアフロアが3列シート車とは別設計のスロープ式になっており、開口部端が335mmと圧倒的に低い。助手席を倒せばサーフボードなどの長尺物も積みやすいし、低い床をユーティリティボードで塞げば、フラットフロアになって床下に物も収納できる。
■エアーも使い勝手はいいのだが……
今回、エアーと名付けられた標準ボディも確かに悪くないし、ボディサイズを含めた使い勝手ではこちらのほうが上。だが、正直こちらはキープコンセプト。冒険しているとは言い難い。
開発陣はおそらくエアーで既存客を抑え、競合にはない新アウトドアテイストのクロスターでフリードの客を広げようとしているのではないか。
もちろん、これは一種のチャレンジであり、コンパクトミニバンの中心は普通のファミリー客ばかり。クロカンっぽさを求めていても、さほどワイルドさは求めてないのかもしれない。
何より日本には扱いやすいコンパクトSUVが多くあり、それこそホンダのヴェゼルやZR-Vもあるし、競合ミニバンはSUV路線にはほぼ参入していない。
だが、今回の新型フリードはコンパクトミニバン客の潜在意識化にあるアウトドアマインドであり、SUVテイストの掘り起こしを狙っている気がする。結果、あわよくばエアーで5割、クロスターで5割とフリード客の拡大が図れると。今回のクロスターはそれくらい力が入っている、そのように小沢には思えるのだ。
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