高速道路を走っていると遭遇するさまざまな「おとしもの」。たとえ小石でも、飛んで来たら大ダメージの高速道路なのに、“トンデモない”落とし物が頻発しているらしい。ドライバーとしては恐怖でしかない、その実態と心構えを知ろう!!

※本稿は2024年4月のものです
文:ベストカー編集部/写真:中日本ハイウェイ・パトロール東京(株)、NEXCO東日本、ベストカー編集部、AdobeStock
初出:『ベストカー』2024年5月26日号

■高速道路での落下物への衝突は命にかかわる

高速道路上に落下物が発見されると、電光掲示板に注意喚起の表示が出る

 ゴールデンウイークや夏季冬季の休暇などには、行楽地に向かうために長距離移動する人が増える。その時に使うのが高速道路だ。

 パンクや故障など、さまざまなトラブルが発生する高速道路だが、そのなかでも命にかかわるのが、高速走行中の落下物との衝突だ。

 2024年2月には、名神高速道路でトヨタ アクアに乗った会社員男性が、前のトラックからビンのようなものが落ちてきてフロントガラスを貫通、重傷を負う事故が発生した。場合によっては、さらに大きな落下物が衝突する……なんてこともある。

 各高速道路会社がまとめた、令和4年度の落下物処理件数を下に載せたので見てもらいたい。合計はなんと30.9万件も発生、一日平均では847件発生する計算だ。これは高速だけだが、国道も含めればさらに件数は増える。毎日どこかで落下物があり、誰もが落下物に遭遇する可能性・危険性があるのだ。

各高速道路会社が処理した令和4年度の落下物件数(ロードキル……動物が不幸にも車両と接触して命を落とすこと)

■NEXCO管内で発生! これまであった“トンデモない”落とし物

交通管理隊が回収した落下物の一部。まだ軽量な部類に入る物が並んでいる

 今回はNEXCO中日本とNEXCO東日本に協力してもらい、過去に回収した落下物について調査した。その結果、どうしてそのような物を落としたのか? という物から、どこから落ちたのか? と思う物まであることがわかった。まずは2社から提供された写真から判明した落下物を少し列挙してみたい。

・脚立(大小さまざま)
・一輪車(ネコ車)
・トラックのタイヤ(ホイールを装着した状態)
・金属製の大型パネル
・金属製の棚
・カラーコーン
・折りたたみ椅子
・鉄パイプ

 この時点で、すでに100km/hで走行しているクルマが接触したら、ただでは済まないレベルなのでは……と感じてもらえるだろう。しかし、こんなものはまだ序の口だった。NEXCO担当者もたまげた、トンデモない落下物が次のような物だ。

・仮設トイレ(し尿処理がなされていないもの)
・プレハブ
・ソーラーパネル
・中古車(キャリアカーから落下したもの)
・ミツバチの巣箱(ミツバチ数千匹入り)
・動物園の檻
・マネキン
・ワニのはく製

 なんでこんなものが落ちるのかと思うし、これを回収するのに何時間かかったのか……と、交通管理隊の苦労がしのばれる。

■落下物に衝突もしくは発見したらどうすればいい!?

こちらはSA・PAに設置された非常電話。緊急時はこちらを利用したい(U4@AdobeStock)

 落下物は、「落ちちゃった、ゴメンね」では済まされない。落とし主の責任であり、転落させた場合、法律で罰せられる。道路交通法 第75条の10に定められており、「3ヶ月以下の懲役、もしくは5万円以下の罰金、又は10万円以下の罰金」となる。また第三者に損害を与えた場合、賠償責任も生じる。

 ドライバーの責任として、ロープでの固定、シートで積み荷を覆う、重さを均等に積載するといった落下物防止の措置を講じなければならない。

 では、もし落下物と接触、もしくは走行中に発見した場合はどうするべきか?(自分で落としたケースも含む)

1.高速道路上、もしくはSA・PAに設置された非常電話で通報。
2.料金所やSA・PAの係員に伝える。
3.道路緊急ダイヤル(#9910)に電話をする。携帯電話からでも無料でかけることができるので、同乗者がいれば、走行中でも情報提供をしてもらいたい。

■落下物回収は命がけ? NEXCOが模索する路面清掃車

中日本ハイウェイ・メンテナンス東名が2021年に試行導入した新型路面清掃車

 高速道路上の落下物は、主に交通管理隊の隊員が回収している。常に二人一組で行動し、回収作業は一人の隊員が旗を振り存在を知らせつつ、クルマの流れが途切れたところでもう一人の隊員が回収に向かう。100km/hで走行するクルマの間を縫っての回収作業は命がけだ。

 そこでNEXCO中日本が模索しているのが、車両に乗った状態で落下物やゴミを回収できる路面清掃車だ。写真で紹介しているこちらは2021年に試験導入された新型路面清掃車。

 ドイツ製のマルチパーパス車Hako「M31H」に、オーストリア製の吸引装置などを取り付けている。路肩を40km/hほどで走行しながら、ゴミを発見すると徐行。ゾウの鼻のようなノズルを上下左右に動かして、それを吸い取ることができる。

 吸引力の関係で、前のページで紹介したトンデモない落下物などは吸い込むことはできないが、ペットボトル、空き缶、布、ビニール、ゴム類といった軽量な物であれば、作業者が危険な車外に出ることなく回収ができるという優れモノだ。

 将来的には、もう少し大きな物でも回収できる技術が開発されるだろうから期待したところだ。

 NEXCO各社では、交通管理隊、保守点検や工事に従事する作業者が巻き込まれる事故を少しでも減らす、またはダメージを軽減するさまざまな技術開発を進めており、都度メディアにも公表している。

■道路上で落下物に当たっても100:0じゃない!?

落下物はさまざま。高速道路以外にも、一般道でも遭遇する可能性はある

 高速道路上での落下物による交通事故の場合、過失割合は過去の判例を参考にすれば、前走車(積み荷を落下したクルマ)、後続車(被害を受けたクルマ)の割合は60:40となる。

 自分は悪くないじゃないか!? と思う人もいるかと思うが、前方不注意、車間距離、速度などが問題になるため、後続車も過失を取られることになるのだ。

 ただ、この割合については、事故発生のタイミングが夜間であったり、降雨などで視界が悪い場合、追い越し車線上での事故である場合は、落下物の発見や回避が容易ではなくなるため、積み荷を落下させた前走車の過失が上乗せされる可能性がある。

 ちなみに、速度が遅い一般道では、落下物に気付いて急停止したり、進路を変えて避けることが高速道路よりも容易なことから、後続車のドライバーにも同程度の責任があると判断され、一般道の場合は落下物による交通事故は、50:50あたりが基準になるそうだ。

■高速道路だけじゃない! 一般道でも気を付けたい危険なもの

●過積載車

ご覧のような横転しそうな見た目のトラックがいまだに走っている。危険だ

 「君子危うきに近寄らず」ということわざがあるが、クルマを運転している時の“危うき”の最たるものが、「過積載車」だ。

 過積載車のなかでも特に危険なのが、最近SNSなどでも話題の、解体した家屋の廃材を荷台から大きくはみ出した状態で積み、一般道を走行しているトラックだ。

 営業ナンバーを付けているトラックは、最近過積載の取り締まりが厳しく、万が一取り締まられた場合、荷主、事業者、運転者が処罰対象となるため改善しているが、白ナンバー(自家用車)のトラックは、明らかに違法だろうという状態でも利益優先で走っているケースが横行している。

●電動キックボード

車道を走るルールのため、必然的に自動車と電動キックボードの事故が起きやすい(Tsubasa Mfg@AdobeStock)

 クルマ側は近寄りたくないのだが、勝手に近寄ってきて事故の原因になるのが電動キックボードだ。

 16歳以上であれば運転免許不要(16歳未満は運転禁止)で乗れることもあり、特に都心部ではシェアサービスを利用する若者が多い。

 しかし、免許を持っておらず、交通ルールなんて知ったこっちゃない人だったり、自転車や電動キックボードに乗ると、途端に道路交通法を忘れてしまったかのように振る舞う免許保有者が多いため、道路上で近寄りたくない……というドライバーが多い。

 連休になると、休みだからと羽目を外し、終電を逃した利用者が深夜乗ることも多くなる。特に注意したい時期だ。

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 笑って済まされないのが落下物だ。トラックだけでなく、ルーフキャリアに脚立やスノーボード、サーフボードなどを積む人なども、後悔する前に、今一度積み方に問題がないかを確認してもらいたい。

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