これからの時期に厄介な、夜の寝苦しさ。2023年は最低気温が25度以上の“熱帯夜”が過去最多の57日となった。2024年も暑い夏が予想され、あのムシムシした夜がやってくる。 

暑くて眠れない、翌朝にぐったり…、という状態はどうすれば避けられるのか。熱帯夜とまではいかなくても、初夏から急に気温が上がって寝苦しい日もある。上級睡眠健康指導士の加賀照虎さんは、グッズの活用やちょっとした工夫で快適に過ごせると話す。

部屋を暑さから守る“フィルム”

夏の夜は外より、むしろ家の中で「ムワッ」とした暑さを感じることがある。これは元々の気温の高さもあるが、昼間の熱気がこもるために起きるという。そこで効果的なのが、日光を遮る「遮熱フィルム」を窓に貼ることだ。

「窓の状態は部屋の暑さ・寒さに大きく影響してきます。窓にフィルムを貼ると、起きる前から朝日で部屋がどんどん暑くなるのを防ぐこともできます 」(以下、加賀さん)

遮熱フィルムには透明なタイプもある(提供:リンテックコマース株式会社)
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遮熱フィルムには、光や熱のカット率が異なるものなどさまざまな種類があり、窓の外が見えやすい透明なタイプもあるという。日光は夜に眠りを誘うホルモン「メラトニン」の生成を助ける側面もあるので、遮熱効果と日差しのバランスを考えて選ぶと良いだろう。

帰宅したらまずは換気しよう(画像はイメージ)

そして、こもった熱気を家に残さないことも大切。仕事など長時間の外出から帰宅したらすぐに冷房のボタンを押すのではなく、まずは窓を開け、エアコンの送風モードやサーキュレーターで換気してから冷房を入れよう。

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寝床は「敷きパッド」でカラッ

さらに加賀さんは、寝具の選び方にもポイントがあると指摘する。人間はひと晩でコップ1杯ほど(約200ml)の寝汗をかく。その汗をそのままにすると、蒸れて寝苦しく感じる原因になるそうだ。

それを解決するのが、敷き布団やマットレスの上に付ける「敷きパッド」。湿気の吸い取りや発散に優れたものを選ぶと、寝床をカラッと乾燥した状態に整えやすいという。

側生地と中綿はこの部分(提供:加賀さん)

加賀さんのお勧めは、側生地(パッド表面)が「綿、麻、レーヨン」、中綿(中身)が「麻、羊毛」で作られたタイプで、湿気の吸収や発散に優れるという。シリカゲルなどを原料とした「吸湿材」を使っているタイプもあり、こちらは消臭もしてくれるそうだ。 

「接触冷感」は“数値化”されている

夏場は触れるとひんやりする「接触冷感」の寝具を使いたくなるが、ここには注意点もあると加賀さんは指摘する。あくまで“接触時にひんやり感じる効果”なので、商品によっては期待外れに感じることもあるという。

「寝ている時は動きが少なく、肌と生地の同じ部分が接触し続ける時間が長くなりがちです。肌と生地の温度差がほぼなくなり、生暖かく感じられるようになります」

ひんやり感は指標で数値化されている(画像はイメージ)

接触冷感のひんやり感には「q-max値」という指標があり、数値が大きいほど冷たさを感じられるという。加賀さんの感覚では…
・0.4以上:「おぉっ!」となるくらい明確に冷たさが感じられます
・0.3以上:「まあまあひんやりしてるな」と感じられる数値です
・0.2以上:「若干ひやっとするかな?」くらいです
とのこと。

寝具に使われる代表的な素材の特徴(提供:加賀さん)

寝具に使われる代表的な素材のq-max値は、
・綿 (コットン)と絹(シルク)「0.3」
・ポリエステル、ナイロン、レーヨン「0.3~0.35」
・麻(リネン)とジェル「0.35~0.4」
・ポリエチレン「0.45~」
といった具合だ。

ただ、ポリエチレン、ジェル、ポリエステル、ナイロンは湿気をほぼ吸収しないため寝汗が蒸れやすい。ひんやり感と寝心地を両立させたいなら、麻、絹、綿、レーヨンで作られたものや、通気性が良い「3Dメッシュ加工」が施されているものを選ぶと良いそうだ。

エアコンを上手に使う“3テクニック”

窓に遮熱フィルムを貼り、敷きパッドを敷いて…、それでも暑い夜はやはり、エアコンが頼りになる。加賀さんは「夜間の熱中症を防ぐためにも我慢せず使ってほしい」とした上で、快適に眠るにはポイントもあると話す。

まず1つ目は「エアコンを付けるタイミング」 。部屋が涼しくなるのは意外に時間がかかるため、寝室の冷房は就寝1時間前にはオンにしておくのがお勧め。掛け布団をめくってマットレスや敷き布団、シーツが冷えるようにすると眠りに入りやすくなるという。

エアコンは温度やタイマー設定も重要(画像はイメージ)

そして2つ目、「温度やタイマーの設定」も重要だ。暑さは寝苦しさの原因となるが、寒すぎると寝冷えしたりスムーズに起きられなくなるという。夏場は“冷房モード”の26℃で、入眠から2時間ほど稼働するように設定すると、ちょうど良い涼しさを保てるそうだ。

3つ目として、暑い夜は冷房の風を浴びたくなるが「睡眠中に直風が当たる」のはNGとのこと。体が冷えると起きた時に倦怠感やだるさを感じてしまうという。エアコンの設定で風を上向きにしたり、ベッドや敷き布団を壁から10~15cm離すと、冷気の直撃を避けやすいとのことだ。

「エアコンではなくサーキュレーターを使う場合は、足元から弱めの風が届くように設置しましょう。顔に風が直接当たると、呼吸のしづらさや乾燥につながります」

ケット類や掛け布団を近くに(画像はイメージ)

そしてできれば、手に取れる場所にケット類や掛け布団を用意しておこう。寝ているうちに気温が下がったとしても、寒さや空調の風をガードしやすいという。 

快眠グッズや手軽にできる暑さ対策は探してみるといろいろあるものだ。皆さんも思う存分活用し、夏の厳しい暑さを乗り切ってほしい。
 

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快眠・寝具について幅広い情報を発信する、上級睡眠健康指導士の加賀照虎さん

加賀照虎
睡眠健康指導士。3,000万PV超の「快眠タイムズ」にて睡眠学に基づいた快眠・寝具情報を伝える。朝の情報番組にてストレートネックを治す方法を紹介。現在、雑誌、テレビ、ウェブなどの幅広いメディアで快眠の啓発活動に取り組んでいる。

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