和布刈(めかり)公園(北九州市門司区旧門司)の潮風広場に設置されている旧国鉄の客車の利用を巡り、賛否が分かれている。地域活性化を目的に、客車を全面改装したカフェが5月にオープンし、週末を中心に家族連れらでにぎわう一方、鉄道ファンなどからは「歴史ある車両の価値が失われた」などと批判の声が上がる。
問題の客車は、深い茶色の外観をした「オハフ33」。車掌室を備えた車両は1948(昭和23)年製で、現存するものはわずかでファンも多いとされる。九州内を走った後、小倉北区の勝山公園に展示され、2009年に潮風広場に移された。
改装されたカフェの店内に入ると、片側にテーブルがあり、もう一方に焼きたてのパンが並ぶ。訪れた人は、パンやコーヒーを買って海を見ながら食事や友人との会話を楽しむことができ、若い女性や高齢の男性らでいっぱいだった。
北九州市門司港レトロ課によると、和布刈地区のにぎわい創出を目的に23年11月、地元事業者を中心に同課を含む「めかりテラス実行委員会」が設立された。客車をカフェとして活用する案が協議され、車両内の座席などの処分を決定。公園を管理する市公園緑地課に事業計画書を提出し、許可された。改装費などはカフェを運営する事業者が負担し、座席などを撤去してカフェ仕様にした。
カフェを運営する会社の取締役は「市も私たちも、そもそも客車の保存が目的ではない。和布刈地区の活性化が目的なんです」と説明し、「内装をそのまま使えるなら経費は抑えられたが、老朽化が進んでいた。このままではお客さんが来ないので、投資(改装)するしかないという判断だった」と話す。営業日には1日3000円の公園使用料を実行委に支払っているという。
「原型をとどめないほど…」
一方で、客車内が大きく改装されたことへの反発もある。
21年8月まで車両の管理を事実上担ってきたボランティア団体「門司港トロッコ応援団」の関係者や鉄道ファンは「長年守ってきた車両の内部が原形をとどめないほどに変わってしまった」と嘆き、「客車利用に関する市民への説明や話し合いもないまま、一方的に座席の処分などを決めた市の姿勢に怒りを覚える。市は貴重な市民の財産を大切に扱う姿勢に欠けている」と批判する。
市民や全国の鉄道ファンからは客車の長期保存を求める署名活動も起きており、3日までに600筆超が寄せられた。
事業を許可した公園緑地課によると、搬入した備品などの撤去が許可の条件で、改修前の原状回復は求めていないという。同課の担当者は「09年に現在地に移転した際も一部を改装していた。老朽化が進んでおり、施設を有効活用することが大切だ」と話す。【反田昌平】
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