第82期名人戦第5局2日目、藤井聡太名人が昼食で注文した「勝負師のホタテカレー麻婆豆腐丼」と「ウーロン茶」=北海道紋別市のホテルオホーツクパレスで2024年5月27日、貝塚太一撮影

 将棋の名人戦で藤井聡太名人が初防衛を決める舞台となった北海道紋別市。勝負を決した第5局2日目の5月27日、昼食の「勝負メシ」に藤井名人が選んだのは「勝負師のホタテカレー麻婆(マーボー)豆腐丼」だ。カレーなのか、麻婆豆腐なのか。このネーミングだけでも興味が湧いてくる。インパクトあるメニューを提供する店を訪れた。

 藤井名人の初防衛から一夜明けた5月28日、ランチ時間帯の「カフェレストランKADO」は多くの客でにぎわっていた。27日に藤井名人が昼食にこのメニューを選んだというニュースが流れて以降、注文が殺到。この日も午後2時前にサロマ町から訪れた3人の客は、あいにくの品切れに悔しそうな表情を見せていた。

藤井聡太名人が名人戦第5局2日目に選んだ勝負メシを提供する「カフェレストランKADO」=北海道紋別市で2024年5月28日、貝塚太一撮影

 店は売り切れを防ごうと仕入れを増やして対応をしている。6月1日の土曜日には36食の注文が入った。これまで店で一番よく出るメニューでも1日20食。それを大きく上回る注文が相次ぎ、名人戦から1週間で店の売り上げの3分の1が「勝負師のホタテカレー麻婆豆腐丼」になっているという。

 ネーミングから何より気になったのはその味だ。棋戦では勝負メシや勝負おやつが毎回話題となるため、その度に対局者が選んだメニューを撮影し、すぐさまSNS(ネット交流サービス)などを通じて速報する。このメニューを撮影した時、ライスにかかるカレーと麻婆豆腐、二つの味が楽しめるメニューだと思っていた。

 実際に一口食べて驚いた。麻婆豆腐の味の中にカレーを感じる。見た目は豆腐と赤身のある油分からも麻婆豆腐そのもの。たが、口に入れるとちゃんとカレーが手を挙げてその存在を主張してくる。両者が融合した味わいがとてもおいしく、食べた後もカレーと麻婆豆腐の食後感が舌と鼻に残っていた。

 麻婆豆腐にカレーのスパイスを加えるメニューを約10年前に考案したという店主の村上俊さん(45)は「たまにおすすめメニューとして提供していました。今回、名人戦ということで地元のホタテを使ったフライと組み合わせて出したところ、名人に選んでもらえて、とても光栄です」とほほ笑んだ。

 人口約2万人のオホーツク海に面する町では今も、藤井名人が堪能した勝負メシの人気が続いている。【貝塚太一】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。