生活保護受給者の車の使用を制限されたのは違法だとして、障害のある40代女性が北海道江別市を相手取り、市による指導の取り消しを求めて札幌地裁に提訴した。原告弁護団は「日常生活を満足に送れなくする制限で、障害者いじめではないか」と訴えている。提訴は4日付。
訴状などによると、筋ジストロフィーによる身体障害がある江別市の女性は、同じ障害のある20代の息子と2人で暮らしており、2019年3月ごろから生活保護を受給している。受給開始に際して市職員から口頭で車の保有を認められたが、使用の制限についての説明はなかったという。
女性は昨年6月、市保護課に呼び出され、車の使用は息子の通院以外には認められないと告げられた。今後は毎月、車の使用日時や行き先、走行距離を記録して提出するよう求められ、怠った場合は生活保護を受けられなくなる可能性があると指導されたという。
厚生労働省は、障害者の通院通学などのために、生活保護受給者が車を保有することを特例的に認める通知を出している。
原告側は、この通知が車の保有条件を示すものに過ぎず、いったん保有が認められた車の使用範囲を制限するものではないと主張。女性と息子は障害により長距離を歩くことが難しく、買い物や女性本人の通院といった日常生活に支障が出ているとしている。市の指導を生活保護法に基づく行政処分と捉え、その取り消しを求めている。
原告弁護団の山本完自弁護士は「女性らの日常生活に車は不可欠。生活保護は本来、人間らしい生活を保障するための制度だ」と話す。女性は生活保護費の範囲内でガソリン代などをやりくりしており、制約なく使っても市が支給する金額に影響はないという。
市保護課は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。
生活保護受給者の自動車使用をめぐっては、車の利用状況の記録提出を求める行政指導に従わなかったため支給を止められた三重県鈴鹿市の受給者親子2人が停止処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決が今年3月、津地裁であり、処分の違法を認め、市に損害賠償を命じる判決が出ている。(上保晃平)
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