突然の目の難病により一度は諦めかけた「自分のレストランを開く」という夢を今、かなえようとしている女性が岡山市にいます。その思いを取材しました。

小林加枝さん、48歳。

(小林加枝さん)
「この歳で夢が始まるとは思っていなかった。うれしいです。できるだけいつまでも目が見えていて、長い間やりたい」

10年前から抱いていた「自分のレストランを開く」という夢を、今まさにかなえようとしています。

以前は岡山市の酒造メーカー、宮下酒造が手掛ける「酒工房独歩館」で料理人を務めていた加枝さん。発達障害がある娘を育てながら、時間の許す限り料理に没頭する毎日を送っていました。

(ブドウむきにくそうにしているシーン)

「みづらいな…」

そんな中、2022年7月、加枝さんの目にある異変が…。

「黒いものが見にくいです」
「明るいところに持っていったらみえます」

(小林加枝さん)
「ちょっと薄暗いところが見えにくいなって。疲れ目かな、老眼が進んできたのかな、みたいな感じで、軽い気持ちで眼科に行きました。一応、眼底検査を受けたら、あれ、おかしいってなって。その時に網膜色素変性症という病気です、と言われた」

難病、網膜色素変性症。徐々に視野が狭くなり、視力を失うこともある遺伝性の病気で、有効な治療法はまだ確立されていません。

(小林加枝さん)
「ショックだった。もう料理できないのかもしれないと思って、諦めつつあった」

そんな加枝さんを救ってくれたのは、共に働いていた料理長の竹永敏秀さんの言葉でした。

(小林加枝さん)
「(お店の立ち上げを)一緒にやるから、やったらいいじゃんって言われて。うれしかったです。諦めていたので。一緒にやってくれるんだったらやろうと思った」

(竹永敏秀さん)
「一番頑張ってきていたのをみていたので、そばで。(加枝さんの夢に)かけるしかないという思いで決断した」

同じ夢を持っていた竹永さん。2024年1月に独立を決意し、二人三脚でレストランを立ち上げることを決めました。

加枝さんの一日は、毎日デイサービスに預ける娘の有紗さん(27)の世話から始まります。

(小林加枝さん)
「前の職場では結構長い時間働いていて、子供との時間が取れなくなってしまっていたので、今度は一緒に過ごす時間を作ってあげられたらなと思っています」

夢の場所に選んだのは、岡山市東区瀬戸町の、もともとイタリアンレストランだった場所。家族や友人たちの手を借りながら、一から改装しました。

(小林加枝さん)
「天井が、私が目が悪いから暗かった。(友人が)電気店だからいっぱい明かりをつけてくれて。明るくしてくれた」

この日は、ランチメニューの試作づくり。和食とイタリアンを融合した創作料理がメインです。

この日の試作の出来栄えは上々!

(竹永敏秀さん)
「まだ試作段階なので、90点くらい。もっと良いのを作りたいので」
(小林加枝さん)
「本番は?本番は!」

(小林加枝さん)
「みんなの優しさが集まった温かい店になったと思う。あと半月くらいで頑張って(オープン)したいなと思っている。アットホームなお店にしたい」

(竹永敏秀さん)
「徐々に視野が狭くなっているのは(加枝さん)本人にしか分からないと思うので、常にそのことを思っていれば、ちょっとしたことでも気付いて助けられると思う」

店の名前は、「和イタリ庵 花枝」。竹永さんの提案で加枝さんの名前が入っています。

(小林加枝さん)
「お花が好きで、花への思い入れが強いので(名前の漢字を)花に変えてつけました」

難病と向き合いながらも周りの人と力を合わせて掴んだ夢がもうすぐ、花開こうとしています。

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