外国人労働者の「技能実習制度」を廃止し、それに代わる「育成就労」制度を創設する入管難民法などの改正案が13日の参院法務委員会で賛成多数で可決された。近く本会議で可決・成立する見通し。国会審議では、来日後8年間にわたって母国の家族が帯同できない仕組みが維持されることに批判の声もあがった。

  • 「選ばれる国台無し」入管法改正案、税滞納で外国人永住許可取り消し

 技能実習制度では、実習で培った技能を母国に持ち帰ってもらう「国際貢献」を目的に掲げてきた。だが、深刻な労働力不足を背景に、育成就労制度では目的を「人材の育成と確保」に改める。

 政府は、新制度では外国人が日本での「キャリアアップ」の道筋を描きやすくなると強調する。

 技能実習制度では、実習期間を終えた後にさらに長く働きたいと希望しても、かなわないことがあった。より在留期間が長い「特定技能」にステップアップしようにも、技能実習生として働いてきた職種が特定技能の対象になっていない分野があったからだ。

 今回の見直しでは、育成就労制度と特定技能1号の対象分野をそろえ、ずれを解消する。制度上は、長く日本にとどまって働きやすくなる。

法相「国民がどう評価するのか」

 一方、家族とともに暮らすハードルは従来と変わらず、育成就労の3年間と「特定技能1号」の5年間の計8年間は家族帯同は認められない。教育無償化を実現する会の斎藤アレックス氏は衆院法務委員会で、「『日本に定着してほしい』ということと、『家族は8年間来ちゃ行けません』というのは齟齬(そご)がある」と、見直しを迫った。

 小泉龍司法相は特定技能1号までは「熟練技能が身についておらず、家族の扶養は難しい」との見方を示し、家族を連れてくることになれば、国や自治体が様々な支援をする「社会的コスト」が生じると説明。「これを国民がどう評価するのか。納税者がついてこないと難しい」と慎重な立場を崩さなかった。

 日弁連は、有識者会議で技能実習制度の見直しに向けた議論が続いていた昨年10月に出した会長声明で、「長期間家族の分離を強いる制度設計は人権擁護の観点から容認できず、より早期の家族帯同が実現されるべきだ」と訴えた。(久保田一道)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。