あと半月ほどで収穫期を迎えるバナナの房と、中尾正邦さん=岐阜県山県市で

 山あいに集落があり、田んぼが広がる岐阜県山県市藤倉地区。元牧草地に立つ四棟の温室で、バナナが作られている。  ハウスに入ると、むっとする湿気と暖気。高さ数メートルにもなる約240のバナナの株が整然と並んでいた。木に見えるが、草の仲間だ。「バナナは南国のフルーツ。特殊な技術で低い気温にも耐えられますが、冬も15度を下回らないようにしています」。バナナ農園を開くワイエス・コーポレーション社長の中尾正邦さん(49)が話す。不動産業や解体業を営む中で事業を多角化しようと、3年前からバナナの栽培に乗り出した。  不動産事業の視点から、十分に生かされていない土地を、もっと活用できないかと考えていた。人間が生きていく上で欠かせない「食」につながる農業に着目。高い付加価値が期待できる農作物を探した。  その過程で、バナナなどは細胞を一度低温にさらすことで、原産地より低い温度に耐えられるようにする技術が国内にあると知り、「無農薬での国産のバナナの栽培」を決断。同時に、適した土地を借りられる見通しもついたため、急ピッチで準備し、2年前から収穫できるようになった。  バナナの果実は株の上部、大きな葉の集合体の中心にある軸の先につき、下向きに垂れ下がる。一生に一度しか実を付けないため、収穫後の株は切る。脇から新しい株の芽が出るので、それを再び大きく育てる。無農薬へのこだわりから、害虫や病原体をハウスに入れないように細心の注意を払う。  輸入のバナナに比べ、長く実らせておけるので、濃厚な味わいになるのが特徴だ。「農薬も使っておらず皮も食べられます」と中尾さん。追熟の途中で割れるなどして、生のままでは売れない実は、バナナチップスなどに加工する工夫も。今月からは週末にバナナの収穫が体験できるイベントも始めた。「地域も元気にしたい」と意気込む。  文・写真 佐橋大

◆買う

 バナナを食べてみた。果肉は、ねっとりして、甘さを強く感じた。皮には、甘みはないが、確かに、食べられる。  山県市のJAぎふの産直施設「山県ばすけっと」、名古屋市のジェイアール名古屋高島屋などでも購入でき、サイズにより1本600~千円。通販サイト「ツクツク!!!」のハレノヒハレバナナのオンラインショップでも取り扱っており、加工品のバナナチップスやジュースなども販売=写真。バナナの収穫体験イベント(1人2500円)のチケットも買える。


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