食品スーパーのヤオコー(埼玉県川越市)が「南北政策」と呼ぶ施策を進めている。主力の県内では、メインの世帯像が変わる国道16号をおおよその境にして、品ぞろえや販促活動をきめ細かく切り替えようという取り組みだ。南北で買い物の仕方が大きく変わっているためだといい、地域の実情やニーズをくみとり、より地元密着型の店作りにつなげる。【増田博樹】
南北政策の一つの例がチラシだ。シニア層の多い北側は日替わりチラシへの反応が高いといい、3日間用のチラシを週2回作成。一方、若年ファミリー層の多い南側は共働きで忙しい世帯が多いこともあって反応は北側ほどではない。このためチラシは6日間通しのものを発行している。
ヤオコーはここ数年、主に「南」に多い若年ファミリー層向けの取り組みに注力してきた。和光市にある「和光丸山台店」を週末に訪れると、具だくさんのフランスパン「GU(ぐ)シリーズ」、育ち盛りの子どもがいる家庭向けにジャンボパックの精肉などが多く並ぶ。忙しい共働き世帯に人気がある冷凍食品コーナーはヤオコー最大規模だ。
若年ファミリー層への対応も引き続き進めつつ、南北政策として「北」のシニア層中心とした施策を強めるという。南北の具体的な違いは何か。5月の決算記者会見で、川野澄人社長は次のような例を挙げた。
▽栄養ドリンク=「北部の農家の間ではお互いに贈りあうような必需品で、店に置くとすごく売れます。一方で南側ではそこまでではありません。地域にあった商品に変えていきます」。
▽豚肉=「(県北部を含む)北関東は豚肉の消費が非常に多いエリア。全店一律だった(肉の種類の)割合を店ごとに若干変えてきましたが、強みをより前面に出していきます」。切り落としや薄切りなどは比較的調理しやすく安価なため、年金生活者が多い地域で特に支持されているという。
▽ベーカリー商品=ヤオコーが力を入れるオリジナルの総菜やベーカリー商品も対象だ。「GUシリーズ」について川野社長はこう話す。「南の大きな伸びに比べ北ではあまり支持が高まっていません。昔ながらの焼きそばパンやコロッケパンなどを改めて開発するなど、きめ細かく対応していきます」
ヤオコーの店に並ぶ商品の種類は多く、これらはほんの一例だ。また、当然ながら北側にも若年層はいる。先行した若年層向けの品ぞろえを進化させながら、シニア向けも充実させ店の魅力を高める。加えて、シニア層には価格が多少高くてもこだわりのある商品を購入する顧客も多く、こうしたニーズにも応えていく考えだ。
ヤオコーはこれまでも個別の店舗ごとに品ぞろえを強化する施策を進めてきた。地元の主婦が中心のパート従業員の提案を反映するなど、地域に親しまれる店作りはヤオコーの強みになってきた。
ヤオコーは2024年3月期に売上高・最終利益が35期連続で増収増益(単体ベース)になるなど業績は好調。従来の個別の店づくりに加え、南北政策を通じてさらに地域密着営業を強めることで顧客の満足度を高め、引き続き成長を目指す方針だ。
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