広島県内のSDGsの取り組みをお伝えする「フューチャースマイルプロジェクト」のコーナー。今回は食べられる食材がやむを得ず捨てられてしまういわゆる「食品ロス」を減らす取り組みをご紹介します。
駅弁をつくる過程で余ってしまったおかずを活用する店舗に注目しました。

旅のお供にかかせない駅弁。
【毛利記者】
「JR広島駅にもずらりと並んでいて、多くの人たちが買い求めています」

広島市の広島駅弁当では、1日に1万食以上を作っています。
弁当に使う「おかず」は、およそ200種類。
注文を受けて作っているため、足りないというのは許されません。
食材の仕入れなどを工夫して予備が、わずかになるように計算。かなりのロスを減らしているということですが…

【広島駅弁当 製造部・佐々木 哲也 部長】
「最終的に判明するのは盛りつけたあとですね。ここで『余りました』というのが決定です。
で、あとは調理した後に測ったところで『あ、これは余るだろう』はわかります」

食べられる食品を廃棄するフードロス。
農林水産省などによると、国内で捨てられている食品は減少傾向にあるものの、いまだ、年間でおよそ523万トンあるとみられています。
気持ちを込めて作ったおかず。
広島駅弁当では廃棄を減らす取り組みを続けています。

【佐々木 部長】
「うちの場合には、社員食堂がありますので、余ったものは、そちらで使ってもらって、それでも余った物は残念ながら廃棄しています」

社内でも消費しきれないほどの食品ロス。
廃棄は1パーセント未満まで減らしましたが、まだ捨てられてしまうおかずがあります。
そこで持ち上がったのは詰め切れずに余ったおかずを、同じ会社が運営する立ち食いのうどん・そば店で“おつまみ”として提供するというアイデアです。
きっかけは、店舗の責任者との立ち話でした。

【佐々木 部長】
「(責任者から)『余っている物ありますよね』と。で、『ありますよ』ということで、こういう(おつまみにする)構想があるということで、二つ返事で受けたということですね」
Q:そのアイデアを聞かれたときはどう思われましたか?
「もったいなかったので、救われた思いですね」

余ったおかずが、運ばれるのは広島市南区にある立ち食いうどん・そば店。
はやく手軽にうどんやそばを食べられるとあって、昼は地域の人たちやビジネスマンでにぎわっています。
夕食のための来店客が増え始める午後5時を回ると、立ち食いから立ち飲みができる店に変わります。
これまで瓶ビールだけだったお酒は、生ビールやハイボールも用意し、居酒屋らしさが漂います。
駅弁を配送するのと同じ衛生管理のもとで届いたおかずを盛りつけた小鉢の値段は50円です。

【驛麺家ビッグフロントひろしま店・藤田 欣也さん】
「うどん目的に来られて、こちらで提供されるんですけど、ここで待ってる間にですね。
『あれ?これ50円なの』『ついでにじゃあ』という感じで、うどんと一緒にご購入いただくということもあります」

お客さんの評判は上々なようです。

【来店客は】「安いし、美味しそうだったので」
Q:味いかがですか。“おつまみ”の
「おいしいです。めっちゃうまいです」

取材をしていると熱心なファンにも出会いました。

【常連客は】
Q:お弁当に詰め切れなかったものを“おつまみ”として出している
「そうなんですか。でも50円って最高。こういうちょこっとしたものがあると食べたくなるじゃないですか。で、全部美味しいんですよ、ごぼうも」

この営業形態にしてから、うれしい効果もありました。

【驛麺家ビッグフロントひろしま店・藤田 欣也さん】
「外の看板をご覧になっていただいたりとかですね。当社で発信しているSNSで、見ていただいてとか、本当に通りがかりで、『立ち飲みをやってるんだ』ということで、立ち飲みファンの方が立ち寄ってくださるようになりましたので、本当に新しいお客様がちょっと来ていただけるなという印象があります」

新しい来店客の獲得にもつながったこの取り組み。藤田さんは確かな手応えを感じています。

【藤田さん】
「フードロスとして、こちらのお店に配送していただいている食材ぐらいはですね、全部お客様にお召し上がりいただけるように、お店を盛り上げていきたいなというふうに思っております」

“おつまみ”として提供することで、廃棄は4分の1ほど減少。
広島駅弁当の佐々木さんは、さらなる削減に意欲を示します。

【広島駅弁当 製造部・佐々木 哲也 部長】
「毎年廃棄は減っていますので、どこまで行けるかチャレンジをしたいという気持ちでいます。組織文化として、『もったいないと思う』のは失いたくないというのは本当ずっと思っていますので。そういう気持ちだけは持ち続けたいですよね」

食品ロスを減らしたい。おいしい弁当を届けてきた熱い思いは、いま食べ物全体へと大きな広がりを見せています。

<スタジオ>
利用する方としては、この50円という価格、非常に魅力的に映りますが、これは食べてもらうための価格ということで、廃棄にもお金がかかりますので、一概に赤字かどうかっていうところは言えないんですけれども、利益追求ではなく、それでいてフードロスを減らしていけるということで、新川さん、かなりウイン・ウインな感じにも見えますね。

【コメンテーター:JICA中国 新川 美佐絵さん】
(青年海外協力隊などを経験し現在はSDGsの啓発活動を行う)
「SDGsのゴールで『つくる責任、つかう責任』というゴールがあるんですけど、まさにその企業さんの企業努力っていうのが見えると思うんです。ちょっとなんか鼻につく言葉かもしれないんですけど、こういうところからどんどん食品ロスが減っていくことで、世界の食料問題も解決できる。地球上、実は食料はしっかりあって、分配の問題だっていうふうに言われてるんですよね。だから、これがどんどん続いて、食品ロスがどんどん減っていくことで、その分、世界にも、もうちょっと豊かさが広がるっていうところも、私たち気づきの一つにしてみたいなと思います」

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