シュクメルリ鍋定食を囲むティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使(左手前)の投稿=レジャバ大使のXから
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 牛丼チェーン「松屋」が、「外交戦略」の舞台となっている。東欧ジョージアの「シュクメルリ」などの名物料理を売り出して好評を博し、SNS(ネット交流サービス)では欧州各国の大使らから「ぜひうちの国の料理も」と熱烈なラブコールが届いている。しかし、松屋で提供するうえで乗り越えなければならないハードルもあるという。

 きっかけは2024年2~3月に期間限定で復活販売した「シュクメルリ鍋定食」。鶏肉をニンニクの利いたホワイトソース、チーズで煮込んだジョージアの郷土料理で19年に初めて販売。松屋が「東京オリンピックに向け世界の料理を味わってほしい」と商品化した各国料理の一つだった。23年7~8月のインターネットでの投票「松屋復刻メニュー総選挙」で、2位のチキン南蛮に1万票以上の差を付け1位を獲得し、再び店頭に登場した。

ジョージア大使もSNSで拡散

松屋で人気を博したジョージアの「シュクメルリ鍋定食」と、試験販売された「ポーランド風ミエロニィハンバーグ」
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 シュクメルリ復活の機運を誰よりも盛り上げてきたのは駐日ジョージア大使のティムラズ・レジャバさん(35)。X(ツイッター)の公式アカウントで、「総選挙」の期間中は「シュクメルリに清き一票を」と投票を呼びかけ、再販後は友人らとシュクメルリ鍋定食を囲む姿などを次々と投稿した。フォロワー数は33・6万人(7日現在)と発信力は抜群で、松屋では約1カ月間で90万食以上を売り上げ、予定より早く販売を終了した。

 幼少期から日本での生活が長いレジャバさんは毎日新聞の取材に「ジョージアがあまり知られていない時期から住んでいて苦労することもありました。どんなトピックでも紹介されるとうれしく、シュクメルリ定食が初めて登場した時は感動しました」と当時の心境を振り返る。ジョージアの認知度が上がるだけでなく、日本の政治家とも料理の話題を入り口に親交が深まるなど、大手飲食店で取り扱われる影響の大きさを実感した。

リトアニアとオーストリアも名物料理を売り込み、松屋がメニューの開発に取り組んでいる
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第二のシュクメルリを狙え

 第二のシュクメルリを目指そうと、他国も「積極外交」を展開中だ。松屋は在日ポーランド大使館からの要望を受け、2月20日から一部店舗でソーセージや濃厚なキノコソースをあしらった「ポーランド風ミエロニィハンバーグ定食」を試験販売し、今後は全店舗での販売に向け準備中だ。

Xで「リトアニアの料理もぜひ紹介してください」というオーレリウス・ジーカス駐日リトアニア大使の投稿に「なんと、、、リトアニア大使様からお声かけを頂いてしまった」と応じる松屋=松屋のXから
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 Xではリトアニアのオーレリウス・ジーカス駐日大使が「リトアニアの料理もぜひ紹介してください」、オーストリア政府観光局が「松屋さんのメニュー開発を指くわえて見てるオーストリアですが、ウィーン風フィアカーグラーシュ(パプリカを利かせた牛肉の煮込み)なんてどうでしょう」と呼びかけた。松屋を運営する松屋フーズ(東京都)によると、投稿を機に3~4月、両国関係者と「会談」が実現。料理の説明やメニューの提案を受け開発に取り組む。広報担当者は「政府機関とのコラボレーションは当初想定しておらず予想外の反響に驚いています」と明かす。

 オーストリア政府観光局の担当者は「日本ではオーストリア料理と聞いてピンとくる人は少ない。生活のすぐそばにある松屋で親近感を持ち、いつかは現地を旅して料理の背景も一緒に味わってほしいです」と期待する。

 一方、松屋で売り出すためには白米と合う定食に仕上げる必要があり、味付けに苦戦しているという。各国の料理を出すレストランに通い、両国の関係者にアドバイスを求めながら試作を重ねる。「本場そっくりの味ではないが、松屋風の味付けをぜひ楽しんでほしい。日本流として世界の料理を広めていきたいです」と広報担当者は意気込みを語った。【宮川佐知子】

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