記者会見で障がい児の通所支援について利用者負担の無料継続を訴える鮫島梨紗代表(中央)ら=鹿児島市山下町の市政記者クラブで2024年6月13日午後1時12分、梅山崇撮影

 鹿児島市は障がい児が福祉施設に通所するための支援事業について、見直しを検討している。市は全国に先駆けて2007年度から独自に利用者負担の全額助成を実施しているが、利用者拡大で市の財政負担が重くなったためだ。障がい児の保護者らは助成の継続を求めており、1万筆を目標とした署名活動を始めている。

 通所支援は未就学児の「児童発達支援」と、小学生以上の「放課後等デイサービス」がある。国の枠組みでは市民税課税世帯について、利用者が原則1割を負担し、残りを国、県、市が2対1対1の割合で負担する。利用者負担は収入の多寡で上限4600円と3万7200円に分かれている。

 鹿児島市は福祉施設に安心して通所してもらおうと、この利用者負担を独自に無料化している。全国でもあまり例がなく、23年1月に全国の他の中核市(61市)に独自助成について照会したところ、回答した54市のうち、児童発達支援で全額助成しているのは秋田市、愛知県一宮市、広島県福山市だけだった。放課後等デイサービスの全額助成をしているのは鹿児島市以外にないことも分かった。

 一方、財政負担が年々重くなっている現実もある。社会福祉法人以外の事業参入が進んだこともあり、利用が右肩上がりに増えているためだ。延べ利用者数は、2013年度の1万8600人から22年度には7万6000人と約4倍に達した。これに伴って市の負担額も増え、同じ期間で6200万円から1億7300万円に上昇。24年度予算では2億5000万円を充てている。

 さらに「一般児童対象の放課後児童クラブでは利用料を徴収している。政策として均衡が取れているのか」などといった声も市民から上がった。こうした状況を背景に、市は支援内容の見直しを模索し、市障害福祉課は昨年9月、市議会防災福祉こども委員会に「独自助成のあり方について検討を行う」と報告。以降も機会があるごとに問題提起している。

 しかし事業は障がい児の保護者らにとっては、既に欠かせないものになっている。そこで保護者らは「障害児通所支援利用者負担無料の継続を求める会」を設立。事業の重要性を広く市民に理解してもらう取り組みを始めることにした。

 「求める会」によると、県内で同様の支援に取り組む自治体は他にもあり、鹿児島市の見直しが波及する懸念もある。特別支援学校中学部2年の娘がいる鮫島梨紗代表(41)は「2歳で児童発達支援を利用し、娘とじっくり向き合うために仕事もやめた。利用料が無料なのはありがたかった。その見直しは衝撃」と語る。

 会は8月ごろまで署名活動を続け、集まった署名を下鶴隆央市長に提出する方針という。鮫島さんは「全国でも先駆的なすばらしい取り組みを今までと変わらず続けてほしい」と訴えた。活動内容などに関する問い合わせは「求める会」(090・7390・3057)。【梅山崇】

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