20年ぶりに学費の引き上げを検討している東京大は21日、藤井輝夫学長と学生が意見交換する「総長対話」を開いた。藤井学長は「学生に必要な教育環境の改善は待ったなしであり、経済的困難や個別の事情に直面している学生への支援に配慮しながら、この状況を一刻も早く改善したい」と述べ、値上げに理解を求めた。学生からの質問には「検討中」という言葉を多用し、時期や決定プロセスについての明言は避けた。
藤井学長は、総長対話の冒頭で、2025年度から学部・修士課程の53万5800円と博士課程の52万800円を、それぞれ64万2960円に改定する案を改めて示した。また、世帯所得に応じて学費を免除する「経済的支援策の拡充」についても説明した。
学生からはさまざまな意見が出た。ある学生は「学費値上げの意思決定に学生が含まれていないのはおかしい」と質問。藤井学長は「今回の案は決定ではない。皆さんの意見を聞いて決めたい」と理解を求めた。一方で、学費の値上げにより想定される29億円の増収分は教育環境の改善に活用するとして「非常に貴重な財源になる」とした。
別の学生は「親に収入がある場合でも、進学に理解を得られずにお金を出してもらえないケースは容易に想像がつく。学費免除の申請が通るのかという不安もある」と発言した。藤井学長は、学費免除の年収上限を600万円に引き上げるとして「年収600万~900万円の層についても個別の事情を勘案して減免措置を考えたい」と答えた。
東大の学費値上げをめぐっては、地方の国立大学への波及を懸念する声がある。「全国の大学に与える影響について聞かせてほしい」と問う学生に対し、藤井学長は「大学ごとに教育の環境状況は違うし、財務的な状況も違うかもしれない。授業料を改定する場合はそれぞれの大学が説明責任を果たす必要がある。東大が上げたので上げるということにはならないのではないか」と述べた。【井川加菜美、西本紗保美】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。