5年間の全寮制で、起業家精神を学ぶ「神山まるごと高専」に迫りました。
自由に緑の中を散策する若者たちは、「これ栗だ!栗です!これにしよう!」「(においをかいで)ヨモギだよ!うちじゃあ、これにしようかな」と話しています。
実は彼らは、ある授業を受けている最中です。
神山まるごと高専の松坂孝紀事務局長は「神山まるごと高専」について、「新しい時代に必要な力、テクノロジーとデザインと企業家精神、これを学ぶ学校として誕生した新しい学校」と説明しました。
のどかな風景が広がる徳島・神山町にあるのは、2023年4月に開校した高等専門学校「神山まるごと高専」です。
5年間の全寮制で、学生達は自由時間や食事の時間を過ごす「HOME」と、授業などが行われる「OFFICE」を行き来しながら学校生活を送ります。
「神山まるごと高専」は、知識を詰め込む教育とは大きく違う「起業家精神を学べる」という特徴があります。
1年の溝渕晃大さんは、将来の夢について「新しいエンターテインメントを作るという目標を立てています」と話しました。
松坂事務局長は「『自由だ』ということは、つまり、“自分がやることを自分自身で決めていくこと”」と話しました。
コンセプトは、「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校」です。
この2つで「モノを作る力」を育み、「社会と関わる力」を学ぶことで“起業家精神”を身につけます。
テクノロジーを学ぶ授業の1つに、プログラミングがあります。
この日、学生たちはロボットを製作し、机に作られたコースのゴールを目指すという授業内容でした。
学生たちは「壁ぶつかったら減点じゃないの?」「マイナス8点減点で、一番最初に着いたらプラス10点」と話し、授業を楽しんでいる様子でした。
デザインを学ぶクラスでは、思い思いに組んだ木材のデッサンをしたり、文章表現の授業では、学生たちは外に出て季節のものを探索し、オリジナルの季節の挨拶を添えて、親への手紙を書く課題に取り組みました。
1年の女子学生は、「手紙に四つ葉のクローバーを入れる。4月はピンク色だったから、『今、緑になってるよ』みたいな報告を」と話し、1年の男子学生に「時候のあいさつは何にした?」と質問すると、「半・長ミックス。この時期になると半袖と長袖がどっちにしようかなと」と答えました。
日本の授業は“インプット型”と言われますが、神山まるごと高専では、自分の考えや体験したことをまとめたり、学生同士で教え合うなどアウトプットの機会が豊富で、起業家にとって必要なスキルを磨きます。
――そもそも、なぜこの神山町に高専を作ったのでしょうか?
松坂事務局長は「神山町には“ヒトと異なる選択を応援する風土”がある。そういう風土の中で学生を育てたいと思ったし、私自身もそういう風土を持った学校でありたい」と話しました。
実は、神山町は「奇跡の田舎」と呼ばれています。
2005年に町全域のネット環境を整備して以降、多くのIT関連の企業がサテライトオフィスを置くなど、転出者より転入者が多くなる年もありました。
そのため、過疎地活性化のモデルとして注目を浴びています。
「奇跡の田舎」で学ぶことで、学生たちは自由にのびのびと過ごしながらも、ここでしかできない経験を積んでいきます。
2年・松井ひな子さん:
学生個人個人の、個のエネルギーやスキルがすごいので、1年間すごくぶつかったという印象があるが、ぶつかったからこそすごく成長したなと思っていて、「自分たちでなんでもできるんだ」「やりたいことがあったら、これはできるんだ」という意識を向けられたのは、この学校だったからかなと。
よりよい未来を作るヒトになるため、学生たちは一歩ずつ歩みを進めています。
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