野球部員たちに「もっと大きく、強くなってほしい」。そんな思いが込められているのが、目白研心野球部の名物、食堂の特大おにぎりだ。

 平日の6月7日午後1時半ごろ、ランチ営業を終えた同校食堂「カフェテリア」では、チーフ平井幸夫さん(60)が余った食材を眺め、この日のおにぎりを決めた。しょうゆをからめたご飯に大判の豚肉がのる「チャーシューおにぎり」。練習前、32個が敷き詰められ、ずしりと重いトレーが食堂から選手のもとへ運ばれた。

 同校グラウンドは活動可能エリアが50メートル×40メートルと狭く、打撃練習や外野ノックができない。他部と兼用のため、使用回数も限られる。グラウンドが使えない日は、飛びにくいバドミントンの羽根を打つ練習メニューを加えることもある。

 大山亨部長は「硬球よりも(室内などで)羽根を打った数のほうが多いでしょう」と笑う。それでも春の大会は、選抜出場の関東一を相手に16強をかけて戦い、2―4と競り合った。

 強豪のように実戦練習は積めないが、「無い方がプラスになることもある。うちに『ある』ものを強みにすればいい」(鈴木淳史監督)と、校舎脇などで基礎練習に時間を割く。学校の創立100周年の記念講演に訪れた、野球WBC優勝監督の栗山英樹さんは「すごく良い環境で練習やっているね」と言葉をかけてくれたという。

 「せっかく食堂が『ある』のだから」と頼ったのが、特大おにぎりのきっかけだ。「天かす入り」が好物の斉藤瑛太君(3年)は「練習前に食べることで満腹時間を維持できる。体重の落ちやすい夏にパワーをつけるのに欠かせない」と言う。

 マネジャーの粕井晶さん(3年)は、食堂の職員にいつもお礼の手紙を書いている。「応援してくれる人が増えていくチームになりたい。おにぎりをきっかけに食堂の人たちと仲良くなれたことが、うれしい」(中村英一郎)

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