「第102回毎日テニス選手権」に出場する杉村太蔵さん(手前)の激励に訪れた伊達公子さん=東京都江東区で2024年6月19日午後2時16分、藤井達也撮影

 40代になっても上達することを伝えたい――。元衆議院議員でテレビコメンテーターの杉村太蔵さん(44)が7月、テニス大会に出場する。25年のブランクを経て挑んだ昨年は初戦敗退。2度目の出場を控え、女子テニス元世界4位の伊達公子さん(53)が練習に駆けつけた。

 「もう1回、自分の人生にテニスが戻ってきて幸せです」

 伊達さんがコートに現れると、杉村さんが真っ先に感謝を伝えた。杉村さんは幼少期からテニスに触れ、札幌藻岩高3年の1997年に国民体育大会(現国民スポーツ大会)の少年の部で優勝した。

伊達公子さんが見守る中で練習に臨む「第102回毎日テニス選手権」に出場する杉村太蔵さん=東京都江東区で2024年6月19日午後2時22分、藤井達也撮影

 大学進学後はテニスから遠ざかっていたが、日本テニス協会公認の「第102回毎日テニス選手権(愛称・毎トー)」の45歳以上の部に出場する。なぜ再び試合に出ることになったのか?

 それは2年前、対談で伊達さんとテニスの魅力について語り合ったのがきっかけだった。今後の目標を聞かれ、「もう1回、本格的にテニスをやりたい。毎トーのベテランに出たい」と話した。

 この時は「リップサービスのつもりだった」。だが、大会側から勧められ、昨年、ベテランの40歳以上の部に出場。1回戦で惜敗し、「想像以上に悔しかった。また来年、必ず挑戦します」と直後の記者会見で誓った。

 2カ月後の昨年9月に練習を再開。年齢が上がり、2度目の舞台は45歳以上の部。新たな目標として「優勝」を掲げた。

「第102回毎日テニス選手権」に出場する杉村太蔵さん(左)の激励に訪れた伊達公子さん=東京都江東区で2024年6月19日午後2時35分、藤井達也撮影

変化をつけた方がいい

 それから杉村さんは週1回ほど、仕事の合間を縫って練習を重ねてきた。記者になる前はプロテニスプレーヤーだった私(筆者)が、コーチとして関わることになった。

 杉村さんの武器はなんと言っても強烈なサーブとネットプレーのうまさ。それをもっと生かせるように、まずはベースラインでストロークの安定感を高める基本練習に取り組んだ。ストロークに自信を持てれば、戦術の幅が広がる。

 大会を2週間後に控えた6月。杉村さんは伊達さんが見守る中、昨年の毎トー50歳以上のチャンピオン長谷川尚之さんと練習試合をした。ストロークへの自信は増しているものの、この日は相手のラリーに付き合いすぎてチャンスで前に出る攻撃的なプレーが少なめだった。杉村さんは「もっと前に出ないと」と反省。伊達さんから「ショットに変化をつけた方がいい」などとアドバイスされ、「目標は優勝。まずは初戦突破です」と答えた。

伊達公子さんが見守る中で練習に臨む「第102回毎日テニス選手権」に出場する杉村太蔵さん=東京都江東区で2024年6月19日午後2時31分、藤井達也撮影

生涯スポーツの普及に

 11年半のブランクを経てツアーに戻った経験のある伊達さんは「私が37歳で挑戦した時と同じ気持ちなんじゃないか。何かにチャレンジして目標に突き進むのは楽しい」と自身に重ねた。

 10代、20代の頃と比べて体が追いつかなかったり、ショットの精度が下がったりすることもあるが、「捨てるところは捨てるのが大きなポイント」と完璧を求めすぎないよう助言し、「その代わり相手の状態を見る精神的な余裕を持たせるのが大事。(テニスは)一人でやるものじゃない。そこが面白さでもある」と話し、観察力や判断力で穴を埋められると激励した。

「第102回毎日テニス選手権」に出場する杉村太蔵さん(左)と激励に訪れた伊達公子さん=東京都江東区で2024年6月19日午後2時36分、藤井達也撮影

 再挑戦を始めたばかりの時、伊達さんから「長くスポーツを続けるには大けがをしないこと」と教わった。杉村さんは新幹線を降りる時につまずかないようにとか、健康維持に普段から気を使うようになったという。

 かつての自分と比べ、ふがいなさや恥ずかしさを感じるかもしれない。それでも杉村さんが再挑戦を決意した大きな理由は生涯スポーツの普及につなげたいという思いからだ。「継続してがんばれば、おじさんでもうまくなる。強くなる。変化する。それが少しでも伝われば。何とかサミット(頂上)アタックしたい」

 杉村さんは7月1日午前9時にモリパークテニスガーデン(東京都昭島市)で初戦を迎える。

【長野宏美】

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