マンションの管理組合が入居する障害者グループホームの退去を求めていた裁判。

全国でも問題になりかねない事態に発展していましたが、7月1日、和解が成立しました。

■マンションの一室に入居するグループホーム

大阪市淀川区にある障害者グループホーム。

マンションの一室に入居する形で、重い知的障害がある2人が生活の援助を受けながら暮らしています。ここに住んで20年以上たつ人も。

【ヘルパー】「お2人とも歌番組が好きなので一緒に見て楽しんだりしてます。特に変わりなく、普通の家で普通に暮らしているって感じですね」

しかし、この生活が続けられなくなる事態が起きていました。

【大阪地裁・龍見 昇裁判長(2022年)】「主文、グループホームとして使用してはならない」

6年前、このマンションの管理組合は「住宅」以外での使用を認めないなどと、グループホームとしての使用をやめるよう訴え、大阪地裁は2022年、管理組合側の訴えを認める判決を言い渡したのです。

【運営する関西中央福祉会 義岡淳也さん】「聞いた瞬間は意味が分からないというか、ありえない判決だなと思いました」

■一審判決の理由は「消防法」

判決の理由として挙げられたのが、「消防法」の問題。

2006年以降、入居者の多い大規模な高齢者のグループホームで火災が相次いだことで、消防法の規制が厳しくなりました。

障害者グループホームでもスプリンクラーや、高額な火災通報装置を設置するなど、規制が厳しくなりましたが、それは実態を捉えていないものでした。

【障害者グループホームの運営に長年かかわる古田朋也さん】「(消防庁の視察で)『これマンションの普通の住戸やないですか』って言われて。グループホームが一軒入ったからって建物全体に影響を及ぼすような危ない物では全然ないんですよと」

障害者グループホームはかつて「隔離」した反省から地域で暮らすことを重視し、マンションなどに少人数で暮らしていることが多く、現在では自動火災報知器と避難経路の確認などで済むようになっています。

にもかかわらず、一審では、障害者グループホームが設備や点検のためにマンション全体で高額な費用が必要になることから「住民の共同の利益に反する」と判断されたのです。

グループホーム側は控訴審で「消防法の規制は緩和され、今後も高額な費用負担は発生しない」などと主張を重ねてきました。

そして1日、大阪高等裁判所はグループホーム側の主張を踏まえ、裁判所の見解として「地域共生社会の実現により、障害の有無にかかわらず多様性を認め合いながら地域で共に生活することを目指すとする障害者基本法の基本理念と、消防法令の遵守による防火、防災が、相反するものであってはならない」などと指摘。

今回の訴訟に限らず、障害者が地域で暮らすために利用されているマンションなどの障害者グループホームは、今後消防法などを理由として使用が禁じられてはいけないと判断した形です。

これに伴う和解条項では、今後防火のための費用が発生する場合は、グループホーム側が負担することなどが盛り込まれています。

【運営する関西中央福祉会 義岡淳也さん】「(入所者の生活が)1審の判決のままだと、いつ脅かされるのかとずっと頭に残っていた。(和解で)すっきりした気持ちです。これから純粋に皆さんの生活を守っていけるのようになると願いたい」

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