条例制定を目指し、マスコミに公開された有識者と自民党県議団の意見交換会=県議会議事堂で2024年7月3日午後3時48分、鷲頭彰子撮影

 子どもだけの留守番や登下校などを「放置」に当たるとして禁止事項としたことが世論の反発を浴びた埼玉県虐待禁止条例改正案を、自民党県議団が撤回してから約9カ月。同県議団は新たに、子どもの成長や子育てを社会が支える取り組みを進めることを目的とした「こども・若者基本条例案」を、今年の9月定例会に提出する考えを明らかにした。

 県議団は「(昨年の改正案が)間違ったメッセージになったことは反省している。今回の条例案は別で、出し直しではない。子育ての責任を負うのは社会全体というところを前面に出した」としている。8日から1カ月間、自民党県議団のホームページでパブリックコメント(意見公募)を実施する。

 条例案は、子どもの権利を尊重し、健やかに成長できる社会、保護者らが子育てに喜びを感じることができる社会の実現が目的。県に対し、市町村などと連携し、子育てに優しい社会づくりについて県民らが理解を深めるための施策を講じることなどを求めた。

 保護者、養育者の役割については、子どもの権利条約などの趣旨を踏まえ、子どもたちが健やかに成長し、自立した生活を営めるよう努めることとした。事業者には、従業員のワークライフバランスの推進を図るよう努力義務を課した。また、県の施策に子ども、若者の意見を反映させるため、意見表明を支援する人材の育成や確保の必要性も盛り込んだ。

 虐待禁止条例改正案で話題となった留守番などについては記載されなかった。一方、虐待や貧困、いじめなど、あらゆる危害から子どもを守るために必要な施策を実施するよう県に求めた。

 今回の条例案を巡り、自民党県議団は昨年6月にプロジェクトチームを設置。産後うつなどの研究をしている有識者や若者の性教育支援を行う団体、PTAなど70団体から意見を聴くなどしたという。

 3日に報道機関に公開された有識者との意見交換会では「虐待禁止条例は『親なのだから』という姿勢に世間が反感を持った。子育ての責任は親だけでなく社会全体で、というこの条例は昨年の禁止条例を覆す条例になった」などの意見が出た。

 プロジェクトリーダーの藤井健志議員は「虐待禁止条例改正案は、分かりにくさ、説明不足があった。今回はそれらを反省し、多くの人の意見を聞いたり、透明性を確保したりする手続きを丁寧にした。議員提出条例は、現場に近い声が反映できる」と意義を語った。【鷲頭彰子】

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