宮崎・椎葉村の山奥に、都会からの移住者を迎えるシェアハウスがある。“自給自足な暮らしに挑戦したい”という想いを胸に、助け合いの精神で人や村の温かさに触れる。
約10人が暮らしを体験 新たな住人も
宮崎市から車を走らせること3時間。椎葉村の中心部から、さらに30分ほど山奥へ進んだ場所に川の口集落がある。21世帯・50人が暮らすこの集落内にあるのがシェアハウス「でぇらの家」だ。
この記事の画像(9枚)シェアハウスの管理人・村上健太さんは、愛媛県出身の43歳。東京で長く働いた後、7年前に地域おこし協力隊として椎葉村にやって来た。
シェアハウス「でぇらの家」は、15年以上空き家だった古民家を村上さんと集落の人などが約半年間かけて改修し、2022年4月に完成した。
「でぇら」という聞きなじみのない響きは、この家の名前・家号である「平」が訛ったものである。村上さんは、「でぇらの家を『都会と田舎の交差点』にしたい」と話す。
村上健太さん:
都会から来た人と元々田舎に住んでいる人が交わる場所っていうニュアンスで、観光というかちょっと来て1泊、2泊していくとか。日帰りで体験していくっていうのよりも、もう少し長い時間で暮らしてみることができる場所があるといいのではないかということで作った。
これまでに東京や神奈川、東北から訪れた移住者など、約10人がこの家での暮らしを体験したという。
ただシェアハウスするよりも、何かコンセプトが固まっていた方が人も集まりやすいのもあるという。2024年4月にも新たな住人がやって来た。シェアメイトの楓花さんはこの春大学を卒業し、神奈川・横浜市から椎葉村に移住してきた。
楓花さんは「椎葉村に来た一番の目的は、このでぇらで自給的な暮らしを挑戦したいと思ったから。村上さんは師匠のような存在」と語る。
こだわり満載の“自給自足”生活
この日は田植えを行った。こだわりは農薬や肥料を使わないこと、そして「手植え」だ。
手植えが初めてだという楓花さんは、「やってみたいと思ってここには来たが、周りはみんな機械でやっているみたいなので、現実ではやっぱり大変なことなのかなと思いながら…楽しい」と話す。
村上健太さん:
昔からある技術を絶やしたくない。実際やってみないと分からないこともあると思うので。
でぇらの家では、特別な日のご飯は釜土で炊く。楓花さんはこの家に来て2回目の挑戦だが、釜土で炊く際は水の量や火加減の調節が難しいようだ。「やっぱこうなっちゃう。けど悪くはない」と、具だくさんの豚汁とともにいただいた。
午後からも田植えは続は続いた。楓花さんに話を聞いてみると「達成感がすごく半端ない」と語った。
日が落ちるとお風呂の準備が始まる。「でぇらの家」では、薪でお風呂を沸かす。天候によって変わるものの、お風呂が沸くまでに1時間半から2時間ほどかかることもあるという。
村上健太さん:
好き好んで不便になろうとしている訳ではないので、そのために工夫をしていくというか、自分で工夫できる余地があるというのが好きというか。
ここでの暮らしに楓花さんは、「いざ住むってなったらすごく心細くなったりしたが、集落の皆さんがすごくあたたかくて、それで気持ちも安心したし、山が見える暮らしやっぱりいいなと思う。椎葉が好き」と話す。
村上さんの理想の姿は…
村上さんは「まだ100%自分の理想を実現している訳ではないけど、ゆくゆくは自給自足的な暮らしをしたい人にとっての聖地みたいになると面白いかなと思っている」と語る。
この村に代々伝わる助け合いの精神。都会から来た人が助け合って暮らす都会と田舎の交差点が椎葉の山奥にあった。
(テレビ宮崎)
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