トンネルの壁ぎりぎりを走行するトロリーバス=富山県立山町の立山トンネル内で2024年6月18日、青山郁子撮影

 外見はバスのようで実は鉄道の仲間「トロリーバス」。国内で唯一、富山県の「立山黒部アルペンルート」で走行していたが、近年部品調達が困難になったことなどから今年11月30日に廃止される。アルペンルートは、貴重な運輸遺産を記憶に残そうと、多くの観光客でにぎわっている。【青山郁子】

 トロリーバスは、架線からの電気で走る仕組みで、鉄道の一種「無軌条電車」に分類される。アルペンルートでは、立山トンネルの室堂(標高2450メートル)―大観峰(同2316メートル)間の約3・7キロを約10分で結ぶ。もともとはディーゼルエンジン搭載のバスだったが、環境面から1996年にトロリーバスを導入。2019年に関西電力が電気バスに切り替えて以降は、このルートが国内唯一かつ、最も高い標高を走る鉄道路線となっていた。現在は8台が稼働し、これまで累計1940万人以上が利用した。今季限りで全車が引退し、来春からは電気バスを導入予定。

トロリーバスの仕組みを説明する早川忍さん=富山県立山町の室堂駅で2024年6月18日、青山郁子撮影

 実際に乗車すると、バスとは違い、エンジン音でなくモーター音が聞こえる。路線の途中には、立山トンネルでも最も工事が難航した「破砕帯」や、立山の主峰、雄山(同3003メートル)の直下、壁面すれすれのバスのすれ違いなど短距離ながらも見どころが満載だ。

 トロリーバスに憧れて入社し、通算12年間バスの運転や整備に携わったという整備士の早川忍さん(51)は「寂しいが、次世代への切り替え時期でもあり仕方がない。最後までこのバスを整備できたのは私の誇りであり、有終の美を見守れることにとても感謝している。最後まで安全運行を心がけ、車両にはありがとうございましたと言いたい」と話す。

 運営する立山黒部貫光(富山市)では、カードやミニチュア模型など記念グッズの作成のほか、仕組みが分かるバックヤードツアーや走行音の録音会などイベントも企画。最終日にはラストランセレモニーもある。申し込み、問い合わせは同社プロモーションセンター(076・431・3350)。

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