◆国家資格なのに…
公認心理師は、2017年施行の公認心理師法で、国内で初めての心理専門職の国家資格となった。保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の5分野で、心理的ケアなどを行う。教育だけでなく複数の分野を経験できる長所もある。原則、大学と大学院で心理学や支援などの専門科目を履修したり実習を受けたりし、国家試験に合格する必要がある。昨年3月末で約7万人が登録している。◆目立つ非常勤求人
調査は20年8月時点で登録している3万5400人を対象に行い、有効な回答があった1万3688人を分析した。20年9月時点では非常勤が38・3%で、常勤は55・3%=円グラフ。非常勤の理由は「希望する分野や機関などで常勤の求人が少ない」が54%で最多だった。特に教育分野の7割近くが非常勤で、「SCのほとんどが非常勤」と指摘している。 また、19年度に勤務した8990人を対象に調べた年収は、300万円以上400万円未満が最も多く21・3%。28・7%が300万円未満だった=棒グラフ。◆多分野で連携 強み
神奈川県の高校でSCとして働く礒杏紗(いそあずさ)さん(27)は今年4月、ポストに空きが出たため、常勤になった。「生徒の心の不調は貧困や家族の仕事、精神疾患が原因の可能性もある。五つの分野を学んだ専門性があるから、福祉支援や医療、産業カウンセラーとの連携が円滑にできる」と公認心理師の強みを強調する。 インターネット上では、時給2千円前後のパートでの求人広告も目立つ。「多くの人がまず非常勤で働き、職場のつてや先輩、知人を頼って常勤の仕事を探している。『給料が安くてもそこで何年もやれば拾ってくれるところがある』と大学でも言われる」と礒さん。「資格を取っても給料などの待遇が悪いので、大学院の同期の数人は別の業界へ行った。将来が見えないから若い人には人気がない」と話す。 関東地方の専門学校の学生相談室など3カ所の職場を掛け持ちする男性(30)は月収計30万円前後。「ローンも組めず、生きていくのがしんどい。専門職としての社会的地位を獲得することが重要」と語る。 公認心理師を養成する杏林大の中村美奈子准教授(51)は「医療や福祉、産業など各分野で公認心理師が提供できる支援の価値が理解されておらず、専門性をアピールする必要がある」と指摘。さらに、国家資格として「現場で即戦力となるように養成の仕方を再考すべきだ」と話している。
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