JR札幌駅に連日、行列ができる自動販売機がある。並んでいるのはドリンクでなく、約20種類の手づくりサンドイッチ。つくりたてのサンドイッチが1日3~5回、補充される。自動販売機限定商品や季節限定の「夕張メロン」は補充されるとすぐに売り切れる。
サンドイッチをつくるのは、今月で開業46年を迎えた「サンドリア」(札幌市中央区南8西9)。年末年始を除き、24時間営業を続けるサンドイッチ専門店として知られる。
地元で親しまれる有名店。近年は経営の拡大を進めている。5年前に本店の建て替えでショーケースを1台から2台にし、商品数を20種類から40種類に倍増させた。また、2021年10月に北区に初の新支店「屯田店」をオープン。23年3月、札幌駅の西コンコースに自動販売機を設置した。
自動販売機は大人気で、設置後3カ月で耐久を超えて故障してしまった。現在は、新機種に変更した。7月17日に東コンコースに2台目を増設。同じ日に本店に製造専門のセントラルキッチンも稼働した。
「老舗」の看板にあぐらをかかず、挑戦を続けているのは2代目の津田哲平社長(41)だ。「先代の『北海道の皆が知っているサンドイッチに』という言葉をかみ砕く中で、お客さんがどうすれば喜ぶのか、また、従業員も働きやすくなるシステムについても常に考えています」と話す。
自動販売機の設置を決めた理由は、材料費高騰の中で人件費などを抑えて新しい販路を獲得する狙いがある。利益はきちんと「ボーナス」という形で従業員に還元したいという。長く勤務する従業員が今後も働けるような動機付けにもしたいという。
津田社長は店を引き継いだ約6年前から、販売数のデータを細かく分析。季節や時間帯による商品の売れ行きを把握し、きめ細かい製造計画をつくることで客の要望に応えられる体制を構築した。計画的な生産のシステムを確立する中、従業員の働き方も考慮した。新しいセントラルキッチンは「80歳、77歳の人がイモの皮むきやゆで卵の殻抜きなどに専念できる環境」になっていると言う。
本店は24時間営業。従業員は深夜帯を中心に若手に世代交代した。店長は、津田社長が「サンドイッチをつくらせるスピードは日本一」と評する山本理沙さん(42)だ。4月に店を任された。新商品の開発にも意欲的で、東コンコースの自販機限定商品「ジンギスカン」「きたあかりコロッケ」「ヒレカツ」など数々の新商品を生み続けている。
津田社長は「あの量をつくって売り切れるのかと心配されたり、安くておいしいとか評価されたりと意見はさまざま。でも、多くの人がサンドリアを話題にしてくれるだけでも、うれしいです。その声から学んでアップデートしたい」。【貝塚太一】
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