少子化や核家族化が進む中、将来的な墓の管理について不安を感じている人は少なくない。新潟県長岡市は、承継の必要がない市営の“共同墓”を設け、市民の不安に応えようと取り組んでいる。

“墓の承継”どう考えている?

新潟市の街頭で、墓の承継についてどう考えているか聞いたところ、様々な答えが返ってきた。

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「樹木葬を選択した」と話すのは、夫を亡くしたばかりだという70代の女性。「子どもは娘だけなので、墓を持つとその後の管理が難しい」というのが樹木葬を選択した理由だ。

独身の70代男性は「自分のあとを継ぐ人はいないから、実家の墓はいとこが承継すると思う。だから、自分がその墓に入っていいのかどうか分からない」とつぶやいた。

ほかの70代女性は、「私の死んだあとは子どもたちが何とかすればいい。私自身は『いいようにしてください』という感じ」と、明るく構えていた。

現在、海外を拠点にしているという40代女性は、祖父母の代までが眠る墓を“墓じまい”したばかり。

「仮に自分が墓を承継できたとしても、自分の子どもがどこで暮らすか分からない。管理費の負担も大変」と、墓じまいに至った経緯を語った。

少子化・核家族化が進む中、将来、誰が墓を管理するのか…承継を不安に思う人は少なくないようだ。

共同墓設置「ニーズ高まっている」

こうした事情に応えようと、新潟県長岡市は遺骨を永年にわたって管理する市営の共同墓を2024年度初めて設置した。

すでに墓のある人が墓を撤去し、墓じまいすることなどを想定している。

長岡市が運営する共同墓

共同墓には200の骨つぼを収容できるが、初回として50個分を募集したところ、77件の申し込みがあったことから、市は7月に抽選会を開催した。

熊倉博市民課長は「少子高齢化や核家族化によって、墓の承継者や管理者が不在になるのではないかという将来的な不安がある。管理のいらない共同墓へのニーズは高まっていると考えている。共同墓は無縁墓の発生を防ぐことにもつながる」と、設置理由を説明した。

利用料・納められる遺骨の数は?

長岡市の共同墓は、長岡市鉢伏町にある市営墓地の一角に設けられた。

地元の公立大学法人・長岡造形大学がデザインを担当し、特定の宗教を想起させないよう配慮した。

利用料は、骨つぼ一つにつき14万5000円。遺骨を永年にわたって合同で管理するため、埋蔵後の管理は必要なく、追加の費用負担もない。

共同墓の背面には市が鍵を管理する扉があり、骨つぼを納めるスペースとなっていた。

共同墓の背面

今回の抽選で、1人が申し込める骨つぼは2つまでだったが、1つぼに入れる遺骨の数に上限はないため、多くの遺骨がある場合も墓じまいに対応できるという。

また、希望すれば亡くなった人の名前などを記す墓誌を刻むことも可能で、毎年10月には長岡市が献花を行う。

墓誌を刻むことも可能

熊倉市民課長は「民間でも共同墓の事業はあるが、行政が管理していることへの安心感はあるのではないか」と設置の意義を語った。

元気なうちに墓じまい「安心した」

「私のあとで墓を引き継ぐ者がいないので、元気なうちに墓じまいをしたいと考えた」こう話すのは、7月の抽選会に参加した70代の女性だ。

子どもは2人いるが、それぞれ県外で所帯を持っているため、墓の維持・管理は難しいだろうと考えていたという。

墓じまいを考えた70代女性

女性は当選し、「これで墓じまいをしてご先祖様を供養できると思うと安心した」とほほえんだ。

長岡市は2025年度以降も共同墓の募集を行う予定だ。

“最後の市民サービス”増える市営共同墓

新潟県内では、魚沼市と妙高市がすでに共同墓の事業を行っている。

家族の形が変わりゆく中、墓の承継は誰にとっても身近な問題となっている。

同時に行政が“最後の市民サービス”として、墓のあり方に対応していく必要性も今後、増していきそうだ。

(NST新潟総合テレビ)

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