在宅の介護家族と向き合うケアマネジャーの約6割が、子育てと介護が重なる「ダブルケア」の家庭を担当した経験があることが、毎日新聞と介護・ヘルスケア事業会社「インターネットインフィニティー」(東京都)の共同調査で明らかになった。ダブルケアラーはその重い負担から自分の時間を持てず、心身の不調や働けない悩みを抱える人が多いとして、97%が支援が不十分だと訴えた。
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ダブルケアは担い手の人口を含めて正確な実態を調べた国の統計がない。専門家は「介護の現場を熟知するケアマネの5人に3人が直面していたという割合はかなり高い。相当数のダブルケアラーが存在し、支援が行き届いていない状況を示している」と指摘した。
調査は3~4月、インフィニティー社が運営するケアマネ向け情報サイト「ケアマネジメント・オンライン」(会員約10万人)を通じて実施。支援団体「ダブルケアパートナー」(名古屋市)が監修した質問票を基にアンケートし、722人が回答した。回答者の半数超は10年以上の勤務経験を持っている。
ダブルケアは公式の定義がないが、大学生以下の子育てと家族の介護を同時に担っている状況とした。
回答を分析した結果、全体の58%に上る417人が、ダブルケア家庭を担当したことがあると答えた。このうち主に関わったダブルケアラーに絞って調べると、女性が96%に上り、30~40代の働く世代が8割を占めた。介護の相手は両親、義父母、祖父母の順で多く、子育ては2人のケースが最多だった。
生活への影響を複数回答で尋ねたところ、ダブルケア家庭を担当した417人の76%が「ケアの担い手が自分の時間を取れていない」と指摘。「気分が落ち込み、疲労困憊(こんぱい)だった」「望むように仕事ができていない」が続き、「子への影響に悩んでいた」や「経済的に困窮していた」が多かった。「影響はない」は2%にとどまった。
介護と子育ての両立で厳しい現実にさらされているダブルケアラーの支援に必要な取り組み(複数回答)として、「緊急時に利用できるサービスの整備・拡充」や「相談窓口の設置や相談支援体制の整備」「社会における認知や理解の広まり」などを求める声が相次いだ。
ダブルケアは超高齢社会で介護が必要な人口が増える中、晩婚・晩産化という流れが重なることで急速に広がっている。毎日新聞は1月、国の「就業構造基本調査」を基に独自分析し、2017年時点の推計値としてダブルケアラーが全国に少なくとも29万3700人いることを報じている。【井手千夏、斉藤朋恵】
ケアマネジャーとは
介護保険のスペシャリストとも呼ばれ、在宅や施設で介護が必要な人に応じたサービスの利用計画(ケアプラン)を作成する。利用者と少なくとも月1回の面接が義務付けられ、介護の状況を把握しながら計画の見直しや事業者との調整も担う。2000年の介護保険制度の導入とともに資格が創設され、都道府県が実施する試験に合格する必要がある。22年版の厚生労働白書によると、全国で約19万人が働いている。
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