埼玉県立の男子校や女子校を共学化すべきか検討していた県教委は22日、「主体的に共学化を推進していく」とする報告書をまとめ、早期の共学化実現を勧告していた県男女共同参画苦情処理委員に提出した。一方、共学化の具体案や時期は示さず、当面は別学校が存続する事実上の「現状維持」が続く可能性もある。【鷲頭彰子】
報告書は、県内の男女別学12校の共学化を進める理由として「男女共同参画社会において、高校3年間を男女が互いに協力して学校生活を送ることには意義がある」と説明。少子化や教育ニーズの多様化、社会情勢の変化なども総合的に考慮した上で、共学化に向けた議論を進めていく方針を示した。
一方、これまでに県教委が実施したアンケートや意見聴取では、別学維持を求める意見など多様なニーズがあったとし、共学化の具体案や時期は明記しなかった。今後、アンケートや地域別の意見交換、有識者からの意見聴取を実施しながら、各校の共学化を検討するという。
同日、記者会見した日吉亨教育長は、約20年前に県教委が表明した「共学化推進の立場」は維持しつつ、「共学化は各学校に任せるのではなく、県教委として全県的な視野で考え判断しないといけない」と今回の方針を説明した。
また、「推進と言っている以上は『12校が共学化』をゴールとしてイメージして考える必要はある」と述べたものの、報道陣から共学化の時期や条件を繰り返し問われ、「明確には答えられない」などと明言を避ける場面も目立った。共学化する場合は、子どもたちの進路選択を考慮し、一定の周知期間を設ける考えも表明した。
今回の議論は、2022年4月、「県立の男子校が女子の入学を拒んでいるのは不適切。是正されるべきだ」との苦情が県民から寄せられたのがきっかけ。苦情処理委が昨年8月に早期共学化を勧告し、今月末までの報告書提出を求めていた。
勧告では、男子校の女性管理職比率が低いことなども指摘されており、報告書は「女子校や男女共学校との均衡を図る」と表明。県立高校が女子の入学を拒むのは不適切という公立校の公共性に関する指摘については「共学、男子校、女子校を選択できる状況にあり、男女の教育の機会均等を確保している」とした。
今回の報告を受け、苦情処理委は「県教育委員会として主体的に男女共学化を推進されるとのことであり、報告書の趣旨を着実に実現いただくようお願いしたい」、大野元裕知事は「県から独立した教育委員会が総合的な観点から判断されたものと考えており、評価は差し控えたい」とそれぞれコメントした。
「時期定めず残念」「結論先送り」
共学化に賛成、反対の立場から署名集めや要望活動を続けてきた団体の関係者からは、県教委が今後の具体案や計画を明確に示さなかったことへの不満の声などが聞かれた。
共学化を求める市民グループ「共学ネット・さいたま」世話人の千田潤子さんは、「『主体的に推進する』と言ったのは評価する。目標時期などを定め計画的に進めてほしいと要望していたが、それがなかったのは残念」と語った。
別学の維持を求め署名活動などを実施してきた県立浦和高校同窓会理事の室田浩司さんは、「結論先送りの印象。今後も県教委の動きを注視していきたい」と話した。
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