「光る君へ」「虎に翼」といったNHKのドラマが絶好調のようだ。しかし時流に乗れない「活字人間」の私はほとんど関心がなく、彦根通信部(職場兼住宅)にもそもそもテレビをおいていない。時々パソコンにチューナーをつないで、ニュースや高校野球を見るぐらいだ。その一方でラジオは愛聴(あいちょう)しており、中でも「NHKジャーナル」は夜10時からの友になっている。6月中旬、この番組で勝俣範之・日本医科大教授(腫瘍内科学)が「がんでも障害年金をもらえるが、ほとんど知られていない」などと語り、思わず耳をそばだててしまった。
65歳未満が対象
障害年金は、病気などで生活や仕事などが制限されるようになった65歳未満の人▽国民年金か厚生年金に加入している▽診断から1年6カ月以上たっている――などが条件だという。私は2022年秋に直腸がんが判明し、ちょうど1年半が過ぎたところだ。大卒後、欠かさず年金保険料も納めてきた。今62歳半ばなので、申請期限が迫っている。
私のがんはステージⅢb。当初「5年生存率63%」とした本を読んで打ちのめされた。開腹手術と抗がん剤治療にも耐え、一時は手足がしびれ歩行もままならなかった。今も2割程度再発の恐れがあり、死神から逃げようとジョギングし、重い便秘に悩みながら外勤取材も続けている。これまでの苦労を思えば、この制度を使えそうな気もする。
日本年金機構のホームページを見ると、①障害基礎年金(1~2級)②障害厚生年金(1~3級)がある。国民保険加入者は①を受給し、状態に応じて1級は102万円、2級なら81万6000円がもらえる。厚生年金加入者は報酬比例部分の②が上乗せされ、軽度障害に対する3級(最低保障額61万2000円)や一時金の障害手当金(同122万4000円)といった制度もある。
低い認知度
6月下旬、千葉県船橋市立医療センターで受診の際、主治医や医療ソーシャルワーカーに尋ねたが、この年金について全く知らなかった。そういえば、勝俣教授が制度の複雑さを指摘し、社会保険労務士に申請代行してもらうことを勧めていた。8月に入り、県社会保険労務士会(大津市)に電話して、この分野に詳しい会員がいないか聞いてみた。だが広報担当者は「特定の社労士のご案内はできません」と素っ気なかった。
次に本紙のがん関連記事を検索したところ、奈良県斑鳩町に「NPO法人障害年金支援ネットワーク」があることが分かった。2001年に社労士同士で結成し、現在全国から約250人が参加しているという。ウェブサイトにこんな設立宣言が載っていた。
「この国の障害年金は、他の二年金(老齢、遺族)と比較して、格段に受給が難しいものにされてしまっている」「我々はご本人との充分な連携を保ちつつ、受給権獲得のために誠心誠意その能力を発揮する」。これは心強い。かつての「消えた年金問題」で分かったように、自ら動かなければ、取りはぐれてしまう年金もあるようだ。このNPOを頼ってみることにした。【伊藤信司】(次回は10月以降に掲載します)
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