畜産が盛んなのに、全国で最も肉類を食べない前橋市民――。地元の群馬経済研究所がこんな報告書をまとめた。群馬県は肉類の一大産地。その県庁所在地である前橋市の肉類年間購入額は、全国の都道府県庁所在地と政令市の計52都市の中で最下位。なぜなのか。
総務省の家計調査(2人以上の世帯、2021~23年の年間購入額平均値)をもとに、全国52都市を対象に順位付けした。
肉類の購入額が最も多かったのは「京都市」の11万5301円、次いで「大阪市」が11万5021円、「堺市」が11万3233円で続き、52都市平均は9万6796円だった。
最下位の「前橋市」は7万5102円とトップの京都市の3分の2程度にとどまっている。肉の種類別に見ても、前橋市は鶏肉で51位、牛肉が50位、豚肉も46位といずれも下から7位以内に入る。
群馬県は古くから畜産業が盛んで、県内で飼育される採卵鶏、豚、肉用・乳用牛の頭数は全国でも上位に入る。日本産牛肉として初めてヨーロッパに輸出された「上州和牛」など名高いブランド牛も生産する。それなのに、地元前橋市での消費はふるわない。
ちなみに内陸に位置しながら魚介類を好んでいるのかと同じ総務省家計調査を確認したが、前橋市は36位。肉類より上位だが、それほど多いとはいえない。
県の米麦畜産課に尋ねると「なぜなのか分からない」との回答だった。地元でも謎が深まっているようだ。
群馬県出身で、報告書をまとめた群馬経済研究所の研究員、大井飛知岐(としき)さんは「食文化によるものではないか」と分析する。「かかあ天下」と例えられる県の女性は仕事を持っている人が多く「手軽に調理ができるうどん料理などが忙しい人に重宝されてきた」と話す。県は小麦の生産、消費とも全国でも多く、「粉もの」人気が定着。お隣の高崎市は「パスタの街」として観光客に人気がある。
肉類に話を戻すと、大井さんは「群馬は良質な肉類を生産して、近郊の東京をはじめ、海外へも輸出をするなど努力をしてきた」と評価。「地産地消につなげれば、消費市場としても伸び代がある」と今後の可能性を示唆している。【嶋田夕子】
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