我が子はなぜ死を選んだのか――。子どもが自殺に至った経緯や心理を検証する調査の存在を、苦悩する遺族たちの多くが知らない。文部科学省によると、その調査の2022年度の実施率は5%にも満たないことがわかった。担当者は「説明しきれていないのは明らか」と問題を認めている。
小中高生の自殺に対し、文科省は2段階の調査を指針で定めている。最初は学校が主体で行う「基本調査」。次が教育委員会主体で行う「詳細調査」で、弁護士や心理職などの専門家ら第三者がメンバーになる。
2段階目に移行するのは、主に基本調査でいじめや体罰など学校生活との関係が疑われる場合。ただ、その疑いがなくても遺族の要望があれば実施される。
指針では目的を「事実関係の確認だけでなく、自殺に至る過程を丁寧に探り、心理を解明することで再発防止策を打ち立てる」と明記し、「全ての事案で詳細調査への移行が望ましい」としている。
しかし文科省の調べでは、22年度に自殺した小中高生411人のうち、詳細調査が行われたのは19人(4・6%)だけ。遺族の4割は調査の要望すら聞かれていなかった。
児童生徒課の担当者は「(学校や学校の設置者が)説明しきれていないのは結果から明らか。悲しみと混乱の中にいるご遺族に伝えるべきことが伝わるよう、指針を見直していきたい」と話す。
こうした現状について、各地の子どもの自殺で調査委員を務めてきた教育評論家の武田さち子さんは「教委や学校は多忙なため、通知や法律についての勉強会を開けず(指針を)知らなかったことはあり得るが、子どもの自殺は緊急・重大事案。検索などすれば分かるはずで日ごろの姿勢が問われる」と指摘する。
その上で、「情報を誰でも簡単に入手できるよう、学校や自治体のホームページに載せたりすることも必要だ。学校や教委は『知りませんでした』と言えなくなる」と提言する。【町田結子】
相談窓口
・24時間子供SOSダイヤル
いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。
0120・0・78310=年中無休、24時間。
・子どもの人権110番
「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。
0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分
・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/)
さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。
・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/)
悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。