特集は3つの企業が協力して開発したケーキです。それは、酒粕香るチーズケーキ。「新たな土産物に」と、長野県諏訪市のホテル、酒蔵、菓子店が協力、完成までに約1年かかった逸品です。


■最大の特徴は「香り」

こんがりと焼き色がついたチーズケーキ。

中はしっとり、柔らか。でも、最大の特徴はその「香り」にあります。

(記者リポート)
「濃厚で少し酸味のあるチーズがとってもおいしいケーキです。後から酒粕のいい香りが口の中に広がります」

諏訪市で生まれた「酒粕チーズケーキ」。


■「土産物に」地元の3企業が開発

開発したのは地元の3つの企業。ホテル、酒蔵、そして菓子店です。

事の始まりは諏訪湖畔の「ホテル紅や」。

和食が専門の太田真利料理長は2023年秋の日本酒イベントでコース料理のデザートに酒粕を使ったチーズケーキを作りました。

ホテル紅や「陽乃彩」・太田真利料理長:
「(酒粕は)チーズの味を殺さずに、チーズプラスさらに和風のコクが出る。脇役として光るものがあると思う」

ケーキは大好評。「土産品」にしようという声が高まります。

ホテル紅や・栗原等社長:
「私どもは宿泊業で、記憶に残る、またはオリジナルのあるお土産を探していたので」


■老舗酒蔵の「酒粕」

酒粕は、1662年創業の老舗、「真澄」で知られる「宮坂醸造」のものでした。

ケーキの商品化は大歓迎の提案でした。

宮坂醸造・宮坂直孝社長:
「利用法を何とか考えなければいけないと思っているところへ、今回のお話をいただいたので大変喜んでいる」


日本酒は酒米と酵母を加えて発酵させた「もろみ」を搾って造ります。搾ったあとのものが酒粕。酒の質を高めようと低温で発酵させると酒粕の量が増えます。

一方、粕汁や漬物を作る家庭が少なくなり酒粕の需要は減少傾向。活用が課題となっていたのです。


宮坂醸造・宮坂直孝社長:
「(酒米を)あんまり溶かしすぎないように、低温で丁寧に発酵させる酒造りをしている。お酒がちょっとしかとれない、おいしいですよ。しかし、酒粕はたくさん出てくる。すごく贅沢な酒粕がいろんな酒蔵から出てくるので、うまく生かしていかないともったいない」


■菓子店「酒粕を使ったのは初めて」

ケーキの製造を託されたのは、和・洋菓子を製造する丸安田中屋です。

丸安田中屋・土橋宏次社長:
「地元の材料を使ったものを作りたいと日頃、思っていたんです。いいご提案をいただいて大変うれしい商品ができたなと」


看板商品は「チーズケーキアントルメ」。40年以上にわたって支持され全国にファンがいます。

チーズケーキはお得意の土橋社長。「紅や」の太田料理長のレシピを元に酒粕チーズケーキの商品化に挑みました。

フードプロセッサーを使い、クリームチーズに砂糖や小麦粉を加えた後、酒粕を入れてよく混ぜます。


チーズの種類や混ぜ方など試作を重ね、「ベスト」を探ってきました。

丸安田中屋・土橋宏次社長:
「普通のチーズケーキより水分が多いような感じがしたし、酒粕を使ったのは初めてなので、その影響かな。いろいろ試しながら、今までの経験を生かしてやったんですけど、予想以上に難しかった」

150℃のオーブンで30分、その後、焼き色を付けるため190℃で17分。試行錯誤の末、たどり着いた焼き方です。

3カ月の試作期間を経てようやく納得の出来に。

丸安田中屋・土橋宏次社長:
「案外、お酒のおつまみにいいなと、辛党の方も合うんじゃないかなと。食事に合うチーズケーキだと思う」

発案から約1年。冷凍の土産品として「酒粕チーズケーキ」が完成しました。

■ホテル「素晴らしい商品に」

ホテル紅や・栗原等社長:
「いただきます。いつ食べてもおいしいですね。初めて食べた時のおいしさは見事に再現できてると思う」

ホテル紅や「陽乃彩」・太田真利料理長:
「宮坂さんの酒粕は、特に香り・風味が強い酒粕ですので、この風味の濃さが逆にアクセントになって、商品としては素晴らしいものだと思う」

地元企業の協力で出来上がった「酒粕チーズケーキ」。

9月から3社それぞれの店頭で販売していて、「新たな名物になれば」と期待されています。

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