9月27日に行われた自民党総裁選挙で、決選投票の末、石破茂元幹事長が高市早苗経済安保担当大臣に逆転勝利して新総裁に選出された。党内議員からの人望がないと言われてきた石破氏はなぜ逆転できたのか。ABEMA的ニュースショーが徹底分析した。
【映像】すでに裏切り…第1回投票の結果(表で解説)
総勢9人が争った第1回投票は意外な結果だった。議員票と党員票の合計でぶっちぎりのトップは高市氏、議員票を最も集めたのは小泉進次郎元環境大臣の75票だったが、党員票が伸びなかった。石破氏は議員票で差をつけられたが、党員票で2位につけ決選投票に進出した。
驚くべきは、地方の党員票では圧倒的に強いと言われていた石破氏に高市氏が1票差で勝利したこと。政治ジャーナリストの青山和弘氏によると、一つの要因として高市陣営が告示日前に全国党員に送ったリーフレットが効果を発揮したことが挙げられる。
「リーフレットを受け取った党員が『地元の先生は高市推しだったのか』と勘違いして、票を入れてしまったという証言も出ている」(青山氏取材より)
決戦は議員票の比重が大きいため、各候補者が獲得した議員票が石破氏・高市氏両候補にどう流れていくのかが焦点となった。過去の総裁選で、議員票で逆転負けを喫した石破氏にとって決選投票はかなり不利に思えたが、逆転勝利の裏にはキーマンたちの思惑に満ちた投票行動があったという。
勝敗を分けるのは第1回投票で負けた7人がどちらに投票するか。青山氏は、小泉陣営の75票、加藤陣営(加藤勝信元官房長官)の16票の行方について「菅義偉前総理は決戦が石破氏と高市氏の争いとなった場合、石破氏に付くだろう。菅氏は加藤氏・石破氏・小泉氏それぞれに推薦人を貸しているため、小泉氏が残れば石破氏が乗ってくる、加藤氏はどちらかに乗らざるをえない」と予想していた
では小林陣営(小林鷹之前経済安保担当大臣)の41票はどこに流れたのか。「小林氏は前回の総裁選で高市氏の推薦人で、考え方としては保守派に近い。ただ小林陣営は若手の刷新感という意味で、石破氏に近い若手議員が多いので、決戦になるとバラバラになってくる。ただ、石破氏・高市氏になるとどっちに乗るかわからない」と見ていた。
それを決定づけたのは高市氏の最終演説だ。「私たちの国はこれから成長していかなければならない。いろんなものから命を守れる日本列島を一緒に作って、次の世代に受け渡していこうじゃないですか」(高市氏)
河野陣営(河野太郎デジタル大臣)の22票は麻生太郎副総裁からの指示で多くは高市氏に流れたと見られる。茂木敏充幹事長の34票について、青山氏は「どう動くか見極めている状況。どこに行ってもおかしくない」としていた。
そして、林芳正官房長官と上川陽子外務大臣の合計61票の行方が鍵となるが、キャスティングボードを握ったのは岸田文雄総理大臣だった。石破氏の最終演説に注目すると深いメッセージが込められていると推測できる。
「この総裁選挙は岸田総理総裁が自民党に対する多くの不信にけじめをつけるため、自ら身を引かれたことに大きな要因がある。岸田総理総裁が3年にわたって内政と外交で果たしてきた大きな功績に心から敬意を表する」(石破氏)
さらに、石破氏への投票を促した要因として他に考えられるのが、野党第一党・立憲民主党代表に野田佳彦元総理大臣が返り咲いたことだという。法政大学大学院・白鳥浩教授は「(野田氏は)非常に経験も豊か、政策にも明るい、弁舌も非常に上手い。対抗して戦える人は誰なのか。経験が浅い人ではダメ、尖ったような主張をしてしまっては国民がついてこないといった意見がある中で、経験と政策にも明るい石破氏が最終的に選択された」と説明。
また、総理になっても靖国を参拝すると明言した高市氏になれば改善の兆しが見えていた中国との関係に懸念が生じる可能性もあり、石破氏に票が流れたのではないかと分析する。
「石破氏に派閥として乗る選択を行ったのは岸田氏。派閥なき総裁選から派閥復活の総裁選で終わってしまった。この局面でうまく泳いでいったのが石破氏だった」(白鳥氏)
決選投票で石破氏が勝ち切った理由について青山氏は「石破・高市の戦いの帰趨を決したのは、岸田氏が石破氏に乗ったこと。高市氏は第1回投票で72票という驚くほどの議員票を取ったが一気に逆転されて、石破氏が143票も積み増した。岸田派が石破氏に乗ったこと、そして麻生氏が河野氏を含む麻生派に号令をかけたが、おそらく河野氏に近い人は高市氏には入れていない。今回、麻生派は一枚岩ではなく、一枚岩だったのは岸田派だった」と総括した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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