静岡県や県内の市町が出会いをお手伝いする出会いサポートセンターが、順調に成果をあげている。2022年に開設され、この2年で交際成立が301件、うち58件が結婚した。

行政が結婚支援に力を入れる背景には、深刻な少子化がある。

合計特殊出生率が過去最低

2024年6月、発表された「1.25」という数値。

これは1人の女性が、一生のうちに産む子供の数を示した合計特殊出生率で、静岡県は過去最低を更新しました。

出生数が減っている現状を若い人に伝えると、「個人的には子育て世代(を支える)制度が少ないから産むに産めない」「子供1人育てるのに、大変お金がかかる時代になったなと思うので、そう考えるとやっぱり子どもを迎えられない」などと返ってきた。

結婚で自由がなくなる!?

出生率低下の要因として考えられるのが若者の未婚化と晩婚化だ。

実際に20代や30代は、結婚や出産に対しどんな考えを持っているのだろうか?

静岡県内に住む30歳前後の未婚女性3人に集まってもらうと、共通して聞かれたのは「結婚や出産の優先度は高くない」という意見だ。

30歳女性A:
(結婚で)自由がなくなるという感じが、私はかなり強い。縛られるというか。一度きりの人生なので、自分の好きに生きたい

27歳女性:
私も一緒だけど好きな趣味が多いので(結婚すると)自分のやりたいことができなくなっちゃう。縛られてしまうというのをすごく感じていて

では、何を優先しているのか?

そこには、いわゆる“推し活”や趣味で忙しそうな様子がうかがえる。“推し活”は自分のイチオシの人やキャラクターを応援する活動のことだ。

30歳女性B:
推し活で十分楽しんで充実している人が増えていると思う

30歳女性A:
そのためにお金を使って追いかけて、その人を見てもう満足、幸せみたいな

30歳女性B:
それでまたお金を稼ごうって

価値観の多様化も影響か

そして、3人がいずれも強調したのが価値観の多様化だ。

30歳女性A:
いまLGBTQって世界中で言われているじゃないですか。「レズです」と言っても「そうなんだ」って(会話が)終わるような時代だと思う。だから別に「女の子が好き」とか、別に「男と結婚しなくていい」というのを恥ずかしげもなく言える時代だと思う

27歳女性:
周りから昔みたいに「結婚してないの?」とすごく言われたらプレッシャーを感じて焦って結婚することもあるかもしれないけど、言われない時代になっているので焦る気持ちもない。私より上の人も、結婚してない人を見ると、不幸せかと言われたら別にそうじゃない。その人はその人で幸せそうに生きているし。「結婚=幸せ」という考えは、世の中にそんなに今はないのかな。「結婚が幸せ」という人もいるけど、それだけが全てじゃない

県と市町が出会いをサポート

一方で根本的な問題として「出会いの場がない」という点があるのも事実だ。

県が独身の人を対象に2019年に行った調査結果によれば「独身にとどまっている理由」として男性の約4割(43.1%)、女性の5割(50.3%)が「適当な相手にめぐり会わない」と回答した。こうした状況に、静岡県も対策に乗り出している。

静岡市葵区にある「ふじのくに出会いサポートセンター しずおかマリッジ」。

少子化に危機感を持った県と35市町が2022年に立ち上げた、公的な結婚支援拠点だ。

年間の会費は1万円と民間業者に比べて安く、専用サイトで登録者の中から気になる相手を探せるほか、定期的に婚活イベントを開いている。

さらに、好感度の高いファッションのアドバイスもしている。

ふじのくに出会いサポートセンター・伊藤文乃さんは「(待ち合わせには)かっちりとした洋服を着てもらいたいので、Tシャツ一枚ではなくて、ジャケットを羽織ることをおすすめしている。(会員の男性が)これまでなかなかマッチングできなかったが、その洋服を着たら初めてマッチングすることができた」と、アドバイスの効果を教えてくれた。

行政が運営しているという安心感もあり利用者は増えていて、オープンから2年あまりで交際成立は301件、成婚は58件と順調に実績を積み上げている。

静岡県子ども未来課・松本文 課長:
出会いから妊娠、出産、子育てまでずっと続いていくので、そこを切れ目ない支援でいろいろな部分で県としても応援になる事業を続けていければ

センターで出会ったカップルは…

ベランダでカメにエサを与える女性と見守る男性。

つとむさん(仮名・35)とあいさん(仮名・36)もサポートセンターを通して出会い、1年の交際期間を経て、2024年1月に結婚した。

爬虫類などの生き物が好きなあいさんは「趣味に口出ししない人」を条件に相手を探したところ つとむさんと出会った。結婚指輪は蛇のデザインだ。

あいさん:
私の場合 生き物がいっぱいいるから、「それはちょっと」と断られることが多かったので

つとむさん:
爬虫類が好きっていうくらいだったら、全然 彼女だったらいいかな。これからも知らないところに連れていってもらえたりとかするのだろう、知らない世界を教えてくれるんだろうなというところがあったので(結婚した)

愛知県出身のつとむさんと沖縄県出身のあいさん。ともに県内で仕事をしていて、静岡市内にマイホームも購入した。生活も落ち着きつつあり、子供が欲しいと考えている。

つとむさん:
(お互い)兄弟が多い家庭で育っているので、子供は欲しいかなというのはある

あいさん:
私たちは県外から来ているので、両親のサポートが難しいところがあるので、預かってくれるサービスを充実させてくれるとか。(子育てで周りに迷惑をかけても)みんなで「いいよ、いいよ」という感じになってくれれば、子どもを産みやすかったり育てやすかったりすると思う

センターの開設から2年。結婚したカップルの中には子供を出産する人も出てきた。

「特効薬はない」と県も認める少子化対策。若者の意識が変化するなか、出会いから子育てまで地道に対策を続けることが必要だ。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。