ゴールデンウイークから初夏に訪日外国人観光客(インバウンド)の人気が急上昇しているスポットはどこか? 経路検索アプリを運営するナビタイムジャパン(東京)が、新型コロナウイルス流行前の2019年4~6月と23年4~6月のデータを比較して訪日外国人客数の増加率が大きい上位20市町村をリストアップ。さらにGPSデータ(位置情報)や取材を基に調べると、注目が高まりつつある「アツい名所」が浮かび上がってきた。
利用者の同意のもとに得た、訪日外国人客向けアプリ「Japan Travel by NAVITIME」のデータを集計した。目を引くのは8市町村がランクインした九州勢。中でも訪日客が4・43倍に増え、5位に入った福岡県篠栗町にはタイ人の訪問が急増している。
お目当ては寺院「南蔵院」にある、ブロンズ製としては世界最大級とされる高さ11メートル、全長41メートルの釈迦涅槃(しゃかねはん)像だ。その姿から「ねぼとけさん」とも呼ばれ、寺の広報担当者は「平日は参拝客の8割ほどが外国人で、圧倒的に多いのがタイ人。昨年から増え、毎日のように団体客が来ている」という。
タイのガイドブックで紹介されているほか、SNSなどで「金運スポット」として広まっている。涅槃像が完成した翌月の1995年6月、林覚乗住職がドリームジャンボ宝くじで1等前後賞合わせて1億3000万円に当選し、その後もナンバーくじで高額当選が続いたことから「涅槃仏の御利益では」と話題になったという。担当者は「お守りを100枚ほど買って結婚式の引き出物にするというタイ人参拝客もいた」と話す。
嵐で「映えスポット」
3位の福岡県福津市は、訪日客が10・66倍になった。ナビタイムジャパンによると最も集中したスポットは、沈む夕日が参道をオレンジ色に染める「光の道」で知られる宮地嶽(みやじだけ)神社。国内では人気アイドルグループ「嵐」が出演した日本航空のテレビCM(16年放映)のロケ地となって一躍有名となった。タイや韓国からの訪日客が多く、観光振興を担う一般社団法人「ひかりのみちDMO福津」の中村留美事業本部長は「嵐のファンは東南アジアや韓国にも多く、広まったのでは」と見る。光の道が見られるのは2月と10月の夕方だけだが、5~6月には境内で「菖蒲(しょうぶ)まつり」、市内の飲食店で地元の天然マダイを使った「鯛(たい)茶漬けフェア」が開かれる。
同じ参道の先に広がる福間海岸の遠浅の砂浜は、干潮時に鏡のように空を反射する「かがみの海」として知られる。市などが21年から「光の道」に続く写真映えスポットとしてPRを始め、宮地嶽神社から足を延ばす訪日客も増えた。中村さんは「4~5月は波が穏やかで砂浜が鏡面になりやすく、『インスタ映え』するダイナミックな写真が撮れる」とアピールする。
台湾直行便でツアー客増も
1位は訪日客が18・11倍になった大阪府門真市。パナソニックの工場跡地に23年4月に開業した大型商業施設「ららぽーと門真」には、アウトレットモールや免税カウンターが併設され、香港や台湾などからの観光客の買い物スポットになっているとみられる。
2位は17・5倍の福島県猪苗代町。特に増えたのは町内を流れる観音寺川沿いに約1キロ延びる桜並木の花見客だった。今年1月には福島空港と台湾を結ぶチャーター便が4年ぶりに復活。JR猪苗代駅前の案内所で対応する町観光協会の土屋勝洋さん(43)は「毎日のように外国人観光客が来る。今年に入ってさらに増えたと感じる」。スキー場がある町内にはホテルが多く、「会津地方の大内宿、鶴ケ城、五色沼といった人気スポットを回る団体ツアーの拠点になっている」という。
テーマパークができた市町村も上位にランクインした。4位の愛知県長久手市(6・95倍)は22年11月にジブリパーク、6位の大分県日田市(4・4倍)は21年3月に人気漫画「進撃の巨人」の原画などを展示したミュージアムがオープンし、訪日客を集めている。【岡田英】
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