子どもの学校からのお知らせに、郵便物、いつか使おうと取っておいたクーポンやチラシ・・・。「とりあえず取っておこう」と、“紙類”がそこかしこに無造作に置かれていないだろうか。しかもいざ、肝心な時に見当たらない。

「“ちょい置き”した紙から家が散らかっていく」と話すのは、片づけアドバイザーとして活躍する石阪京子さん。さらに、紙を放置していたばかりに大損をしかけた事例もみてきたという。
家にある紙の「9割は捨てられる」という石阪さんに、具体的な整理方法を聞いた。

財産に直結する“紙”で大失敗?

紙の整理が出来ていなかったばかりに、医療費や住宅ローンの控除が受けられなかったり、運転免許を失効したり、子どもの受験の願書を出し忘れたり・・・。片づけレッスンを行う石阪さんは、紙にまつわる大きな失敗をたくさん見てきたという。

いつしか大量の紙で埋もれるボード(石阪さん提供)
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「ある生徒さんの家を一緒に片づけた際、生命保険会社から届く控除書類が放置されていました。しかし、それに対応する保険証書が見当たらない。彼女もこの保険に覚えがないというので、確認のために保険会社に電話をかけてもらったんです。それで彼女は、夫が亡くなった時に下りた2000万円の生命保険を、保険会社の方に言われて自分名義に変え、息子さんを受取人にしたことを思い出したのです」(以下、石阪さん)。

保険の存在を忘れ、あやうく保険金を受け取り損ねるところだったというのだ。この例のように、紙の片付けは財産やスケジュール管理に紐付いており、お金に直結しているのだという。

とりあえず・・・と、テーブルや壁など目につきやすいところに積み重なりがちな紙類(石阪さん提供)

しかし紙は国や自治体、学校、お店などから勝手に押し寄せる。不要なものから重要なものまであるし、中にはすぐに重要度が判別できないものもある。「捨てると怖いからとりあえず置いておこう」と、その存在を忘れないように、目につくテーブルに置いたり、冷蔵庫に貼ったり・・・。しかしどんどん同様の紙が積み重なって、やがてどこに何の紙があるか分からなくなっていく。

『とりあえず取っておこう』のワナから抜け出さない限り、紙が片づくことはありません。置いておけばなんとかなる、と思って中身を把握せず放置していると、大損したり失敗したりしかねません。紙は一枚一枚向き合わないと、その価値に気づけないのです」。

では具体的に、どうやって整理していけばいいか見ていこう。

9割捨てられる!「何を残すか」が大事

家に既に保存してある紙を整理するには時間と労力がかかるので、石阪さんはまず、日々入ってくる紙(仕事に関する書類は除く)を処理していくことを勧めている。その後、少しずつ家に眠っている紙類を同様に処理していこう。
大事なのはどう収納するかではなく、何を残すか考えること。その上で、入ってきた紙は、次の4つに分ける。

1)すぐに捨てる
2)確認して捨てる
3)データ化して捨てる
4)ファイリングする

【すぐに捨てる】
DM、チラシ、インターネット上で見られるものなど

“お得”と感じるチラシやDMは、なんとなく取っておく人も多いのでは・・・。

チラシに「期間限定の大特価!」など、“お得そう”な文字が並んでいるとつい「後で見よう」となりがちだが、石阪さんは注意を促す。
「本当に内容が気になる場合は、手帳やスマホに『○○のサイトをチェックする』と書いてチラシやDMは捨ててしまってOKです。情報は自分から取りに行くものだと考えましょう」。

ただし、そのチラシ自体がクーポンになっていて、後日本当に使うのであれば別。捨てずに「ファイリング」に分類しよう。

【確認して捨てる】
金融機関からのお知らせ、保険会社からの契約内容変更のお知らせ、ねんきん定期便、学校からのお知らせ、その他さまざまなお知らせ

放置しがちな郵便物。「重要」と書いていても自分に必要かどうかは読んでみないとわからない。即開封を!

金融機関や保険会社から「重要なお知らせ」と書いた封筒が届いても、中身は内容変更のお知らせや、新しい保険への勧誘といったことも多い。しかし「読んでもよくわからない」「とりあえず置いておこう」と封も開けずに置いている人が意外と多いと石阪さんは指摘する。

「確認する紙は、読んでからどうするか考えるいわばグレーゾーンの紙たちです。まずは封を開けて読みましょう。〆切があるものは手帳やスマホカレンダーなどに書き込みます。紙も情報も不要であれば捨て、紙は不要だけど情報だけ必要ならデータ化、紙として必要ならファイリングします」。

【データ化して捨てる】
名刺、学校などの年間・月間行事予定表、連絡網、取扱説明書、パスワード、レシピなど

外出先でも、必要な情報を必要な時に見られるよう、データ化してクラウドに保管するのがお勧め。

(詳細は次回記事を参照:散らかる理由は“紙のまま”だから!予定表などはすぐに「データ化」を…家が片づくクラウドサービスの使い方)

しかし献立表や家族のスケジュールのように、子どもやお年寄りなどスマホを使い慣れていない人にも共有したい情報がある場合は、紙で共有しよう。

【残しておく=ファイリングする】
年末調整・確定申告に必要な紙、願書、健康診断など必要な申込書、予防接種の紙、月謝袋、保証書、ポイントカード、クーポンなど。家計簿をつけたり確定申告したりする場合は、レシートも

それ自体が必要になる紙は、しっかりファイリングして残しておこう

残すのは「金目の紙」「使う目的がある紙」の2つ。これは人によって変わってくるので、自分にとって、使う目的があるものか、金目=お金に換わる紙なのかを見極めよう。

ホームファイリングで生活が変わる

ファイリングする紙が決まったら、次の6つのA4用ファイルボックスを用意し、入れていく。紙は寝かせてしまうと後で探し出すのに苦労するため、立てて保管するのが鉄則だ。

紙はA4ファイルボックスに立てて保存。ラベリングで取り出しやすく(石阪さん提供)

1)暮らし
ポイントカードやクーポン、その他暮らしに関わるもの

2)健康
予防接種や健康診断の申込書、診察券など

3)教育
学校や塾、習い事で使う紙

4)マネー
年末調整や確定申告に必要な紙など、それがあることでお金が手に入る紙や、財産の把握に関わる紙

5)取説・保証書
有効期限が残っている保証書と、インターネットやアプリに載っていない取り扱い説明書など

6)未処理
ポストのような役割。例えば、これまではテーブルの上に置いていた“今は確認する時間がないが重要そうな紙”をこの「未処理ボックス」に入れる。
あくまで“ポスト”なので、大事なのは後で必ず確認し、捨てるのか、データ化するのか、紙として残すのかを判断すること。入れっぱなしはNG

未処理ボックス=ポストと考えて。すぐに確認する癖をつけよう

これらのファイルボックスは、家族みんなが出し入れしやすいリビングなどに置くのが基本。「マネーボックス」に関してだけは人それぞれで、子どもに見られたくなかったり、紛失が心配な場合などは個室や寝室でもOK。

またこの6つ以外にも、受験など期間限定で使う紙や、家族で共有しない自分だけの紙など、必要に応じて「オリジナルファイリング」するとより使いやすい。子どもを介しての学校とのやりとりは、子どもとの「連絡ボックス」を作り、子どもに連絡帳などをそこに入れてもらうのもお勧めだ。

“5秒で取り出す”がゴール

ここまで来たらもう少しだ。ボックスからすぐに必要な紙を取り出せるようにするため、次のようなグッズを使って仕分けていこう。

個別フォルダーで、必要な書類はすぐに取り出せるようにしよう。ラベルをつける部分が飛び出ているものが便利

【ラベルが飛び出ているタイプの個別フォルダー】
後日出て行く紙はここが便利。

例)「取説・保証書」ボックスの中に「長期保証」「1年保証(当年度購入品)」「1年保証(前年度購入品」の個別フォルダーを作る。不要になればすぐに捨てられる。

カード類など、A4より小さい細々したものは、ポケットリフィルを活用すると見つけやすい

【ポケットリフィル】
カードなど細々したモノはここ。

例)特に子どもや要介護の人など、自分以外の誰かに病院に連れて行ってもらう人がいる場合は「健康」ボックスの中に「保険証・診察券」という個別フォルダーを作り、ポケットリフィルに収納。どこに保険証や診察券があるのかをすぐに伝えることができる。

挟むだけの個別フォルダーに対し、持ち出しフォルダーは紙が落ちないようになっているので、そのまま持ち出せる(画像はイメージ)

【持ち出しフォルダー】
存在を際立たせたい紙や、かさばる紙、そのまま持ち運びたい紙など。個別フォルダーはマチがなく挟むだけだが、持ち出しフォルダーはマチあり、紙が落ちないようになっている。

例)「教育」ボックスに「習い事」という持ち出しフォルダーを用意。月謝袋と紙幣を入れておけば、慌てて両替が必要になる事態も防げる。

ただし、細分化しすぎには注意が必要だ。複雑化しすぎると、サッとしまえず、サッと取り出せない。

紙に振り回されず、自分でコントロールできるだけで、気持ちが変わる

置き場所が決まっていない紙の“住所”を決め、情報の取捨選択をすると、家族のスケジュールや財産の管理能力が上がる、と石阪さんは話す。
「一枚一枚と向き合い、紙1枚までどこにあるか把握できるようになると『時間もお金も自分でコントロールできている』という安心感と達成感が得られますよ」。

人生が変わる 紙片づけ!(ダイヤモンド社)

石阪京子
片づけアドバイザー、宅地建物取引士、JADP心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。夫と不動産会社を起業後、引っ越し後のアフターフォローとして家の片づけの提案を始める。独自のメソッドで片づけに成功した家は1000軒以上に上る。
現在は収納監修、片づけレッスンのほか、全国各地でトークイベントやオンラインセミナーを開催し、多くの女性に暮らしの整え方のアドバイスを送っている。

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