私たちの商売、引き継ぎませんか。
後継者不足が問題となっている中、第三者が仕事や事業を引き継ぐ「事業承継」が増えています。
冷え込みが強まり霜が降りた朝。
日高の平取町貫気別で、その店はいつものように午前6時30分に開店しました。
「おはようございます」
「よろしくお願いします」
細川商店の2代目・細川幸夫さん76歳と、妻の幸子さん69歳です。
約50坪の店舗で扱うのは、野菜や魚などの生鮮食品から日用品までさまざまです。
この日最初のお客さんは、飲み物を買いに来た近所の建設会社の会長。
「ばあちゃんの時代からお世話になってるお店屋さん」(建設会社の会長)
「いつも買ったら(飲み物を)置いていってくれるの」(幸子さん)
「親戚以上の付き合いだ」(幸夫さん)
後継者不足が問題に
平日は毎朝、保育園や小学校で出す給食の食材を配達しています。
細川商店は終戦直後、幸夫さんの父親・禮次郎さんが始めた店です。
幸夫さんと幸子さんが跡を継ぎ、店は開業から80年近くが経ちました。
娘2人は札幌で暮らしていて、店の後継者はいません。
「仕事あればここに残るんだけど、親元から通えば経費もかからないんだけど、仕事がないからどうしても都会に出て行ってしまう」(幸夫さん)
「夫も仕入れに行っているが年齢は76歳ですし、身体的なことを考えると不安要素はあるんですよ。今のうちに誰かに譲って」(幸子さん)
常連客も細川さん夫婦の思いをそれとなく感じていました。
「なくなると困るよね。あって当たり前と思ってるから」(農家の夫婦)
店が存続してくれるよう願っているのは、地元の商工会も一緒です。
「まだまだ高齢者もいっぱいいる。なくてはならない役割の店」(平取町商工会 釜沢等さん)
「商工会を通して(事業引継ぎの)会社に登録してます」(幸子さん)
後継者不在率 全国ワースト4位の北海道
札幌商工会議所が運営する「北海道事業承継・引継ぎ支援センター」です。
「承継」とは「事業や仕事を引き継ぐ」という意味の法律用語。
北海道には12年前にセンターがつくられました。
「北海道は後継者不在率が非常に高い地域。国をあげ取り組んでいかないと、経済がダメになるので取り組みが始まった」(北海道事業承継・引継ぎ支援センター 糀屋剛さん)
北海道の後継者不在率は、鳥取、秋田、島根に次いで全国で4番目の高さです。
事業承継・引継ぎ支援センターに寄せられる相談はこの10年で増え続け、約700件に。
センターの活動が広がるにつれて、2023年度は116件の契約が成立しました。
「経営基盤を引き継ぐので場所・設備・客も一緒に引き継ぐ。比較的リスクが低い形で創業できる」(糀屋さん)
昆布の加工会社を引き継ぎ社長になった人も
事業承継・引継ぎ支援センターを利用して、浦河町で社長になった人がいました。
日高昆布の加工会社を引き継いだ石見元気さん34歳です。
石見さんは元々浦河町の漁協に勤めていましたが、前の社長が高齢のためセンターに登録したことを知り、後継者になることを決意しました。
「(Q:これはどこに発送する?)関東方面ですね。前社長が取引していた顧客と
そのまま仕事できるのが一番の利点」(石見さん)
しかし、引き継いだだけでは、売上は横ばいのまま。
石見社長は新たな事業を考えます。
「うちのホームページです。通販です。個人客から(注文が)来ますね」(石見さん)
「引き継ぐだけではなく譲り受ける人の創意工夫が加わり、今までの事業に新しい考え方や取り組みをプラスして展開する人が増えている」(糀屋さん)
引き継いでくれる人にはサポートを惜しまず
後継者を探している、平取町貫気別の細川商店です。
「若い人なら配送サービスなど利用できるんだろうけど(平取町貫気別は)そうじゃない人の方が多い」(常連客)
「(Q:客は高齢者が多い?)そうですね。住んでいる人は大体そういうかんじ」(幸子さん)
貫気別は平取町の中心部から車で約30分。
昭和の時代には約1400人が暮らす集落でしたが、現在は300人ほどに減りました。
「もし引き継いでくれる人がいて、何か(新規事業を)考えなかったら(厳しい)」(幸子さん)
午後5時に閉店。
この日の客は20人で売り上げは5万円ほどでした。
「店を半分に仕切って、こっちで(商店を)やって、こっちで別の事をやってもいいし、コンビニみたいな形でやってもいい」(幸子さん)
細川さん夫婦は引き継いでくれる人にはサポートを惜しまず、協力していきたいと思っています。
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