特集は小さなワイナリーの大きな一歩です。長野県塩尻市出身の男性がほぼ1人で造ったワインがこのほど、日本ワインコンクールで「金賞」を受賞しました。シェフから転身しワイナリーを立ち上げて7年での快挙です。
■ほぼ1人でワイン造り
ワイン用ブドウの収獲。品種は「カベルネ・フラン」です。
匂いをかいだり、味見をしたりしながら収獲しているのは塩尻市出身の稲垣雅洋さん(47)。
稲垣雅洋さん(47):
「食べたり、味をその時点で見たりとかして、内部破裂とかしていると、酢のような香りがするやつがたまにあるので、香りをかいだりしてチェックしている」
稲垣さんはふるさと・北小野地区の約70アールの畑で8品種を栽培し、ワインを造っています。それもほぼ1人で。
ワイナリーの名は「いにしぇの里 葡萄酒」。
■日本ワインコンクールで「金賞」
この夏、稲垣さんにうれしいニュースが届きました。
それは、日本ワインコンクールでの「金賞」受賞。123銘柄がエントリーした部門で、上位6銘柄に選ばれました。
ワイナリー「いにしぇの里 葡萄酒」・稲垣雅洋さん:
「その話をメールで知ったのですが、その時、畑でちょうど作業している時で、畑に大の字になって、『よっしゃー!』と。その時、ハチに刺されたというアクシデントがあったんですけど、そのぐらい喜びました。うれしかったですね」
ワイナリーを立ち上げて7年。4回目のチャレンジでつかんだ栄誉です。
■シェフから転身
稲垣さんは元シェフ。専門学校を出てから、都内のイタリアンやフレンチの店で働いてきました。
稲垣雅洋さん:
「その頃から料理とワインというのに関して、親しみがすごくあり、地元でお店やりたいなと思って帰ってきたのですけど」
自分が作った料理を、地元のワインと一緒に楽しんでもらおうと2006年、JR塩尻駅前にワインバーを開きました。
塩尻は県産ワイン発祥の地。明治23(1890)年に桔梗ヶ原でブドウの栽培が始まるとその7年後にワインも造られました。
近年は県内各地で盛んになりワイナリーの数は72と、山梨に次いで全国2番目です。
ワインバーを営む中、稲垣さんは自然とワイナリー事業者との関わりが増えていき、次第にワイン造りに引かれていきます。
稲垣雅洋さん:
「個人でワイナリーを立ち上げられた方の所で、少しお手伝いさせていただいているときに、その方のワインも非常に素晴らしくて。実家の畑が少し空いていたので、そこに300本くらいブドウを植えてみようとスタート」
■ワイナリーを設立
自分もワインを造りたい。
そう思い立った稲垣さんはブドウの栽培を始め、市が開講した「塩尻ワイン大学」の第1期生に。
栽培や醸造を学んだ後、2017年、製造免許を取得してワイナリーを設立しました。
名前につく「いにしぇ」はフランス語で始まりという意味です。
その後、バーの経営も続けていましたが、コロナ禍で売り上げが落ち、3年前に店を閉じてワイナリーに専念してきました。
こちらは「除梗」という作業。網を使って実をつなぐ部分を取り除き、樽の中に実を落としていきます。
稲垣雅洋さん:
「手作りみたいな感じで、量もそんなに多くないので、大手さんみたいに機械でガーという感じではなくて、本当に手作業みたいな感じ。のんびりと、割と時間かかる」
収獲など忙しい時は妻や親族の力を借りますが、ワイン造りはほぼ一人です。
通常、ワインの製造免許の取得には「最低製造量」が決められていますが、塩尻市は地域のブドウを使えば製造量が少なくても取得できるいわゆる「ワイン特区」に認定されています。
稲垣さんのワイナリーは、この制度を市内で初めて活用したケースです。
■立ち上げて7年での快挙
小さく、まだ若い、ワイナリーですが、日本ワインコンクールで初めて「金賞」を受賞。先日、他の事業者と共に副知事の元を訪れ、うれしい報告をしました。
ちなみに県産ワインは、11銘柄が「金賞」となり都道府県別で3年連続・全国1位でした。
「国内改良等品種・赤」の部門で、金賞を受賞した「Fluffy(フラフィー)」。
契約農家から仕入れた「マスカット・ベーリーA」という品種で造られました。
記者:
「おー、すごくいい香りします」
稲垣さん:
「甘い、少し甘やかな香りがしますかね」
記者:
「おいしい、すごく飲みやすいです」
稲垣さん:
「飲みやすいですよね。フルーティーな味わいで、ちょっと後に酸味が来る感じがして、本当にすっきり飲める感じで」
稲垣さん:
「2023年はブドウが非常に良くて、バランスが良くできたのかなと。香り、味わい、果実味みたいなのがよく出ているかなと」
ワイナリーを立ち上げて7年。
稲垣さんは今後もコンクールへのチャレンジを続けながら地元の気候や風土が感じられるワインを造りたいと話しています。
ワイナリー「いにしぇの里 葡萄酒」・稲垣雅洋さん(47):
「北小野地区で作ったピノ・ノワールとか、リースリングなんかも作っているので、北小野という土地の風土みたいなところも感じてもらえばうれしい」
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